過去の放送で、馬にまつわる魚を紹介した「アクアマリンふくしま」で、今回は数々の難題を乗り越えたからこそ見られるレア生物たちを紹介します。案内してくれるのは、飼育員の山内信弥さんと森俊彰さんです。
震災乗り越えた“世界唯一”の命
まずは、世界でもここでしか見られない、繁殖が難しい魚たちです。
「こちらの名前がですね、『ナメダンゴ』といいます。小さいんですけども、これでも成魚で、ちょっと魚らしからぬ魚で。あまり泳ぎ回らないんですけども、おなかに吸盤が付いていて、海藻や岩にくっつくことができます」
そんなナメダンゴですが、自然界でも見られることが少なくなりました。そのため…。
「水槽内で卵を産ませたものを育ててまた展示する。自然界に負荷がない展示を維持しています。震災の時も電力ポンプが止まってしまったが、その当時の担当職員が避難先で育てて展示を維持してきたという経緯があります」
東日本大震災に遭い、大きな被害を受けましたが、当時の職員たちの尽力により、およそ4カ月後に営業再開を果たしました。さらに、世界で初めて人工授精を成功させ、増やした魚がこちらです。
「名前を『アバチャン』といいます」
「アバチャン?珍しい名前ですね。」
「うろこがなくて、こんにゃくのような感じ。身がプルプルしていますね。採集する時にちょっとでも網とかで傷付いてしまうと、それが致命的なダメージになってなかなか生かすことが難しくて。私たち飼育員のほうで人工授精をさせまして、生まれた卵から育てて展示しています。これも当館で人工授精させた個体になります」
20年に及ぶ努力…今では常設展示
次は繁殖に成功するまで20年かかった魚です。
「こちらが『スポッテッドラットフィッシュ』というギンザメの仲間を展示している水槽になります」
「サメとはまた違うんですか?」
「そうですね。サメと名前がついていますけど、軟骨魚類の中のサメ、エイ、ギンザメという3つのグループの中のひとつになります。普段は主に水深200メートルより深い所に生息している。繁殖した個体をちゃんと見せられているのは当館だけ」
深海魚なので、地上で繁殖するには水圧など生息環境の違いがあり、とても難しいんです。それが20年に及ぶ努力の結果、今では常設展示できるほどになりました。
「その名前に『ラット』って入っていると思うんですけど」
ネズミとは似ても似つかない見た目ですが…。
「これがギンザメの頭部の骨格標本。歯がネズミのような前歯と下が伸びた歯が出ています。これがラットという名前が付いた所以です」
卓越した繁殖技術を開発し続ける「アクアマリンふくしま」は、単なる水族館ではなく、海洋科学館としての一面も持っています。
展示の裏側では、調査や研究・分析が日常的に行われています。そんなアクアマリンふくしまが誇る技術で、毎年、激減のニュースが報じられる“あの魚”の繁殖にも成功しました。
「泳ぐサンマ」繁殖成功のカギは?
「こちらが『サンマ』を飼育している水槽になります」
「サンマ?たしかに泳いでいるサンマは、なかなか見ない気がします」
「世界でもここだけでしか見られないサンマの生きた姿を見られる水槽です。アクアマリンふくしまでは、サンマを繁殖して育てて展示をしています」
実は、サンマの繁殖はすごく難しいそうです。
「とっても神経質で、ちょっとした刺激で暴れてしまったり、水槽の壁にぶつかったり、また水槽から外に飛び出てしまうこともあるんです。生きた状態で持ってくるのも難しいので、水族館で卵から育てて大きくするという方法をとっています」
サンマの水槽内繁殖に初めて成功。そのカギとなったのは…。
「サンマの産卵床といいまして、これに卵を産ませるようにしたんですね。サンマの卵ってとっても腐りやすくて、新鮮な海水が常に当たっていないと腐っちゃうんですよ」
形や素材を変えて何度も試作を重ねた結果、この円状の形で排水管などに使われる「塩ビ管」という素材を使ったものにたどり着いたのだそうです。この技術を使えば我々はいつでもサンマを食べられるようになるのでは?と、思いきや…。
「ご存じの通り、サンマって100円ぐらいで買えちゃうじゃないですか。とても魚価が安いので、何か付加価値がないと養殖して採算が合う・合わないというのがやっぱり現実的なところだと思います」
どうやって水族館に運ぶ?
そんなサンマのように身近だけど泳いでいる姿は見たことない、というような魚は他にもいます。
「サンマと同じように魚屋さんでは見るんですけど、水族館であんまり見ない『カツオ』と『キハダ』が見られる水槽になります」
「たしかに泳いでいる姿ってなかなか見られないですよね」
「そうですね。皮膚が弱くて、触っちゃうとただれて死んでしまう原因になっちゃうんですよ。回遊魚なので、ずっと泳ぎ続けていまして」
多くの魚は、水を吸い込み、口を閉じてエラを開けることにより、止まっていても呼吸ができますが…。マグロやカツオは、自分でエラを開閉する筋肉がほとんどないため、泳いで水を口からエラへ流し続けることで呼吸ができているのです。
「ずっと泳いでいたら連れてくる時とかって大変じゃないんですか?」
「一番、持ってくるのが大変」
泳ぎ続けていないと酸欠になってしまうため、狭い水槽で運ぶのも至難の業です。
そこで水槽の酸素濃度をあらかじめ濃くして呼吸しやすい環境にしておくことで、魚たちの泳ぐ速度が遅くなり、狭い水槽でも運搬することが可能になりました。
お口をアーン?人間に近い?
こうした技術を活用して、アクアマリンふくしまでは生態が謎に包まれた生き物の展示にもチャレンジしています。
現在研究の真っ最中だというこちらの生き物。みなさんは、何に見えますか。
「キノコのような、クラゲっぽい感じの生き物なんですか?」
「こちらは『オオグチボヤ』といって肉食性のホヤとして知られています」
「ホヤということは、貝ってことですか?」
「これは貝ではなくて、脊索(せきさく)動物という人間に近いグループの生き物になります」
見た目からは想像できませんが、オオグチボヤは子どもの時に背骨の元となる「脊索」を持つことから、人間と同じ脊索動物に分類されているんです。
「いい状態の個体がなかなかいないので、かなり貴重な生き物。本当に何を食べているか分からない。なかなか飼育に苦労します。あまりエサをあげないのが今のところいい。駄目になると溶けちゃうんですよ」
「クラゲみたいな?」
「そんな感じですね。口を開けて笑っているような姿を見ると、『よしよし状態いいな』という感じ」
これまで17種類以上の新種を発表
さらに、こちらは…。
「『ダイオウキジンエビ』という2016年に名前を付けた新種のエビになります」
「アクアマリンふくしまで見つけたエビということですか?」
「そうですね。北海道の知床で漁をされている漁師さんがエビのカゴ網を仕掛けられるんですけども、それにかかってくるエビになります」
他にも「ホカケコオリカジカ」や「モユククサウオ」など、アクアマリンふくしまが見つけてきた新種はこれまで、なんと17種類以上。ここでしか見られない生き物たちの展示にも力を入れているんです。
「飼ったことがない生き物を展示するということで、どういう餌(えさ)を食べるのか、水温とか照明の管理などは全部一から手探りでやって展示を維持している」
(2026年1月28日放送分より)













