社会

ABEMA TIMES

2026年2月11日 07:00

愛娘を2人亡くした母が自傷行為の日々から立ち直った「人生が180度変わった」きっかけは世界唯一の“リストカットの傷跡に特化した形成外科”

愛娘を2人亡くした母が自傷行為の日々から立ち直った「人生が180度変わった」きっかけは世界唯一の“リストカットの傷跡に特化した形成外科”
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 東京・豊洲に「リストカットの傷跡に特化した形成外科」がある。傷跡の皮膚を薄く取り、90度回転させて戻す「戻し植皮」の手術が多く、患者からは「腕が出せるようになった」「人生が変わった」といった声もあるという。

【映像】リスカ跡手術 術前・術後の比較(実際の様子)

 リストカットを含む自傷行為は、中高生の約10人に1人が経験しているとされる。『ABEMA Prime』では、リストカットの偏見に悩む当事者と、その悩みを解消する医師に話を聞いた。

■世界で唯一、リスカ跡を消す形成外科とは

村松英之院長

 リストカットの傷跡に特化した外来を持つ形成外科「きずときずあとのクリニック豊洲院」村松英之院長は、リストカットについて「ストレスを和らげる行為の1つで、死にたいくらいつらい感情や怒り、悲しみ、絶望などが頭の中をめぐった時に切ると、すっと楽になるという理由が一番よく言われる」と解説する。

 自傷行為は「痛みにより、脳内麻薬が出る。最初は“爪をかむ”でも大丈夫かもしれないが、思春期などで家庭や学校のストレスが積み重なると、それだけでは和らげられなくなり、リストカットに行く。1人で隠れて行えて、誰にも迷惑をかけないことが、増えている要因なのでは」と推測する。

 開院した経緯を「形成外科医として20年以上診療してきた中で、傷跡で悩む人が多かった。『何科にかかればいいかわからない』という声も多く、形成外科がマイナーだと気付いた。日本では“形成外科”と“整形外科”の名前が似ているため、形成外科医の自分に『腰が痛い』と言ってくるが、海外では傷跡治療の認識がある。傷跡に悩む人を助けたいと思い、『きずときずあとのクリニック』を開業した」と説明する。

 治療については、「リストカット患者の治療は、あまり経験がなかったが、模索する中で“戻し植皮”を知った。患者に協力してもらいながら施術すると、『人生が変わりました』と言われた。『腕を常に隠して生きてきたが、隠さなくても良くなり、気持ちも楽になった』と言われ、どんどん“戻し植皮”に力を入れるようになった」と振り返った。

 戻し植皮では「ただ縦の傷にするだけでなく、やけどの傷跡に見せる」のだそうだ。「『横の傷はリストカット』という認識があり、目にとまる。ただ、やけどの跡は記憶に残らない。『他人の目をひかない傷跡』となれば、腕を出すようになり、人間関係も良くなる」。

 自身にもリストカットへの偏見があったというが、「今では背景もできるだけ理解するようにしている」という。「精神科医の論文に、自傷行為はストレスを和らげる行為のため、やめてから2年間はたたないといけないと書かれていた」ことから、“2年以上”を手術の条件にしている。

 再発予防については「『将来何になりたい』や『どうして自傷したのか』を自分で理解する必要がある。精神科的な治療がほとんど終わり、傷跡をどうにかしたいと思う人が来るため、精神科との関わりはそこまで強くない」と話す。

 患者の思いは人それぞれで、「自分にとって大事な傷跡の人もいるが、偏見と傷跡のてんびんが崩れ、偏見で社会生活が苦しくなると、傷跡をどうにかしたくなる。ただ残念ながら、当院で手術しても1割程度は『腕が出せない』という人もいる」のだそうだ。

■リスカを繰り返した母、人生が変わった瞬間

カトウさん

 カトウさん(40代)は、30代で2人のわが子を病気で亡くし、5年間にわたり両腕に傷を作り続けていたという。「母親として丈夫に生んであげられなかった。自分を責め続け、1日何回も両腕を切り刻んでいた」。

 そんなカトウさんが手術を決断した理由は、「リスカの跡があるってことは“かまってちゃん”“メンヘラ”と思われる」といった“傷跡への偏見”があった。「苦しさを乗り越えるために切っていた。その他の手段はなく、あの時に自傷していなかったら、この世に自分は多分もういない」。

 傷跡に対する偏見で傷ついた経験もあった。看護師として働く職場では、制服で半袖になった際に、上司から「命を救う仕事なのに自分が死にたいとアピールしているみたいだから何とかして」と求められた。日常会話中に「ただ話しているだけなのに“自分語り”と捉えられ、自分の伝えたいことが伝えられない」こともある。

 手術を受けた経緯を「『傷跡の治療はあるのか』と調べていたところ、YouTubeで村松院長を知り、相談・受診して、トントン拍子で手術になった」と明かす。「傷跡を見るたび娘2人を亡くしたことを思い出していたが、傷跡が変わり楽しかったことを思い出せるようになった。周囲からの目も変わり、これまで人からは触れられなかったが、『どうしたの?』と聞かれて『やけどだよ』と話せるようになった。人生が180度変わったかもしれない」。

 リストカットの傷跡に気付いた時、周りの人々はどのように接すればいいのか。「ある程度の関係性があれば、『どうしたの、その傷』と普通に聞いてもらっていい。もし答えがわからなかったら、2人で探せばいい。助けてもらえるところはある」。

 村松院長は「自傷行為をする人が増え、オーバードーズ(薬物の過剰摂取)やアルコールなどの依存症で苦しんでいる人もいる。このような機会に少しでも理解してもらい、『本当に苦しい思いをしているんだ』と見てもらえるとうれしい」と願った。 (『ABEMA Prime』より)

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