日本が資源大国になれるかもしれません。使用済み電池からリチウムを90%以上、さらに他のレアメタルも回収する世界最高水準を誇るリサイクルの現場を取材しました。
希少金属と最先端リサイクル工場へ
エメラルドグリーンや深紅、真っ白な結晶……普段は見ることのない“電池の中身”の姿をたどると、日本の資源戦略の最前線が見えてきます。
日本がそのほとんどを輸入に頼る、これらの希少金属(レアメタル)を非常に高い回収率でリチウムイオン電池から安全に取り出すことに成功した企業を直撃します。
世界トップクラスの先端材料メーカー「JX金属」。そのグループ会社の工場がある北陸へ向かいました。
「こちらに希少な金属を取り出せる世界最先端の技術があると、うかがったんですけれども?」
木村駿さん
「はい、ございます。さっそくご案内しますので、ご覧ください」
リチウムイオン電池からのリチウム回収は技術的に難しく、従来の回収率は30%ほどでした。
JX金属では回収率90%と、世界でもトップクラスの回収率を誇っています。
さらに他にも、様々なリサイクル原料から、これまでにも金、銀、銅を始め20種類の金属を取り出してきました。
熱処理で発火を未然に防ぐ工夫もあります。
「たくさん入っているこちらは何ですか?」
「こちらが使用済みのリチウムイオンバッテリーになります」
「このすべてがリチウムイオンバッテリーなんですか?」
「はい、そうですね」
「この水が張られているのは、意味があるんですか?」
「中に可燃性物質が入っていて、火災・発熱の可能性がございます。ですので水を張って、それを予防している」
スマートフォンや自動車に使われているリチウムイオン電池は、リチウムやニッケルを混ぜたプラス極と、鉛筆の芯と同じ黒鉛でできたマイナス極が何層にも重なった構造です。この間に電解液という燃えやすい液体があります。
発火のリスクを未然に防ぎながら進めるリサイクルの続きを見ていきます。
どう安全に…90%の電池を回収?
危険を伴う電池を、どうやって“資源のかたまり”に変えていくのか。工場の中で、そのプロセスを追います。
ここにも発火を未然に防ぐ技術があります。
炉の中で加熱することで発火を阻止し、燃えやすい電解液を取り除きます。
「この棒みたいなものは何なんですか?」
「これが、もう中身ですね。外側の樹脂部は燃えカスとなり、飛んでいってしまいますので。中に残るのは金属系だけが焼き残る形になっています」
熱処理が終わると「粉砕」し、鉄や銅アルミなどを取り除いていき、希少金属を分別します。
「さきほど熱処理したリチウムイオンバッテリーを粉砕・分別をして分けていく設備が、こちらになります」
「この大きな機械でやられているんですか?」
「そうです」
粉砕と分別で、残るのは目的の希少金属と黒鉛のみとなります。ここからが大変です。
「今、設備が稼働中ですのでサンプルをお持ちしました」
「これができたものですか?」
「こちらがこの設備から出てきた『ブラックマス』と呼ばれるものになります」
「かなりサラッサラなきれいな砂ですね。ここまで小さくなるんですか?大きかったものが」
「リチウム以外にコバルト、ニッケルなどが中に入っています」
このブラックマスから、電極に利用されていた黒鉛を分離します。まずは、分離させやすくするために、ブラックマスに下処理を行っていきます。
「中に入ったらどうされるんですか?」
後藤大貴さん
「ブラックマスを水に溶かすという工程になります。粉のままだと難しいので、水に一度溶かしてから、分離をする形になります」
この次の工程は、通常は企業秘密のベールに包まれた「心臓部」。今回、特別に許可を得てカメラが入ります。
希少金属の取り出し 特別な油
「ここからリチウム、コバルト、ニッケルを分離していく工程。それがすべて混ざった液体がここに入っているんですけど。まだドス黒い、ちょっと赤みがかった、くすんだ色のような液になっています」
「ちょっと、茶色っぽい、赤っぽい、ワイン色みたいな」
「ここから次、コバルトを特殊な油と薬剤を入れてですね、コバルトだけを油に吸着させるという工程になります」
この特殊な油を使って、なんと目的の金属だけを狙い撃ちにして回収するプロセスを開発したのです。
「いつも皆さん、海見た時に『コバルトブルーの色だ!』みたいな感じだと思うんですけど、それがコバルトの由来になっているんですけど、この上側に青いのがいるんですけど、これがコバルトが油に乗っかっているっていう証拠に」
「コバルトブルーは、こんなに鮮やかな青色になるんですか?」
「そうなんです」
「さっきまで茶色だったのに」
「こちらの赤色が硫酸コバルトになります。油につけたものを、もう一度液体につけてあげたものです。油につけると青いですけど、液体(硫酸)につけると赤色になる。金属って面白いですよね」
溶液では青かったコバルトですが、扱いやすい結晶として取り出すと深紅の結晶に変化します。
「最初は真っ黒だった物が、こんな鮮やかな色になっていくんですね」
コバルトは電池を長持ちさせたり、電池の容量を大きくしたりするために重要な鉱物です。
世界のコバルト鉱石のおよそ7割はコンゴ民主共和国で採掘されていますが、多くは中国へ運ばれ精製されるため中国が影響力を持っています。
このJX金属の技術確立は、日本にコバルト鉱山ができたのと同じことです。そして、この過程でニッケルの分離にも成功しています。
「下がちょっと若干青いのがいるんですけど、緑色をしていているんですけど。これが液のほうにニッケルが残っている、という証拠になっています。ちょうどここでコバルトとニッケルが分離できている形に。こちらの緑色が硫酸ニッケルになります」
「今までからは想像つかない鮮やかさですね」
「そうですね。ここまできれいになります」
ニッケルは結晶で取り出す際には、見事なエメラルドグリーンになります。
「宝石みたいな鮮やかさ。エメラルドグリーンみたいで、きれいな海の色をしていますね」
電池のパワーとスタミナを上げるニッケルは、オーストラリアやマダガスカルなどから輸入しています。
そんなニッケルも、リサイクル技術でニッケルも回収できるのだといいます。
コバルトやニッケルを取り出したあとの油を除去すると、最後に出てくるのが「白い石油」ともいわれ電気を運ぶ役割を持つリチウムです。
「これが最終製品の炭酸リチウムになります」
「リチウムって、真っ白で、こんな砂のような感じだったんですか!」
「真っ白なんです。サラサラしています」
「本当だ!きれいですね!」
“通行許可証”となるワケ
高い回収率で希少金属をよみがえらせる技術は、国際的な資源争奪のなかで、日本企業の“生き残り戦略”にも直結しています。
「最近ニュースで資源獲得というワードをよく聞くんですけど。そういったことにもつながってくるんですか?」
中川直副社長
「最近は、国際情勢もかなり不安定な様子も増えてきて、国の方針によって金額が高騰し、集めにくくなっている。当社はこれまで培ってきたリサイクルの技術を活用して、そういったことにも対応できるような形でやっていきたいと思っています」
ブラックマス製造から希少金属の取り出しまでを行うことができるのは日本ではJX金属のみだといい、リチウムの回収率は90%を誇ります。
この回収率90%という数字が非常に大事なんです。
EU(欧州連合)では「2031年末までに、リチウムの回収率を80%以上」にしなくてはいけないルールがあります。つまり、この基準をクリアできない電池は、将来ヨーロッパで販売できなくなる可能性があるのです。
JX金属の「90%回収」という技術は、日本企業が世界で戦うための「通行許可証」になるというわけです。
(2026年2月4日放送分より)

















