社会

ABEMA TIMES

2026年2月15日 12:00

転職50回…“境界知能”の苦悩「なんで覚えられないの?」社会適応のコツは?国内唯一の“専門塾”に聞くと

転職50回…“境界知能”の苦悩「なんで覚えられないの?」社会適応のコツは?国内唯一の“専門塾”に聞くと
広告
1

 人口の約14%、7人に1人が該当するといわれる「境界知能」。SNS上では、他者を攻撃する際のスラングとして悪用される実態もあり、当事者たちの深刻な苦悩を招いている。「ABEMA Prime」では、境界知能の当事者や専門家を交え、知能指数(IQ)という数値に翻弄される人々の実態と、社会に求められる支援のあり方について深掘りした。

【映像】「クズと言われる」境界知能のレッテルに苦しむのぞみさん

■「診断名ではない」ために見過ごされる実態

境界知能

 境界知能とは、IQが70から84の範囲にあり、知的障害ではないものの平均より低い状態を指す専門用語である。青山学院大学教授で小児精神科医の古荘純一氏は、この特性について次のように解説する。

 「単にIQが70から84の人を指す言葉であって、そこにはいろいろ属性が含まれている。診断名でもないので支援にもつながらない。一方で、数字で70から84と(中間値の)100より低いことで、いろいろなことにくくられて見下されやすい問題もある」。

 境界知能の中身は多様であり、言語理解が苦手な者、処理速度が遅い者など、個人によって課題は異なる。しかし、それらが一括りにされ、教育や福祉の現場では「平均的ではない」とされながらも、明確な診断がつかないため公的なサポートから漏れてしまう現状がある。

■50回の転職、浴びせられた「クズ」という言葉

境界知能の特徴

 番組には、境界知能の当事者であるのぞみさんが出演し、これまで歩んできた過酷な経験を語った。のぞみさんは仕事上の失敗が続き、50回ほどの転職を繰り返してきたという。

 「(大変なことは)人と話すのが苦手だったり、集中できなかったりすること。長い話や、同時に複数、指示されると混乱して失敗し、怖くなって仕事を辞めてしまう。(飲食店で)料理を運んでいる時に話しかけられても我慢したり、質問に対してよくわからない答え方をしてしまって『頭、おかしい』と言われたこともあった」。

 職場では「クズ」「なんで一回で覚えられないの?」といった心無い言葉を浴びせられることもあったという。のぞみさんは、SNSでこの言葉が差別的に使われていることに対し、「(批判は)なくなってほしい。境界知能だから自分はできないとか、そういう思い込みで当事者がどんどん苦しくなっていく」と不安を口にした。

 古荘氏は、こうした失敗体験の積み重ねが「二次的な合併症」を引き起こすと指摘する。周囲の理解が足りないことで本人が達成感を得られず、自信を喪失し、自らを責めてしまう悪循環に陥るのだという。

■「消しゴムの使い方」から始める支援の道

境界知能専門の学習塾

 こうした支援の空白地帯に対し、静岡県浜松市で「境界知能専門の学習塾」を運営するのが、『学びのいろは』代表の寺岡勝治氏だ。元夜間高校の教師だった寺岡氏は、生徒たちの「立ち入り禁止の文字が読めない」「引き算ができずお釣りを間違える」といったトラブルに直面し、道徳教育ではなく学習スキルの向上が必要だと確信したという。

 「基本的には学習面のサポート。認知的、能力的なものの弱さがあるので、勉強することで、雑多な情報を整理することができる。国語できちんと教えれば、整理できるようになってくるので、日常的な部分においてもかなり負荷が下がる」。

 塾では、勉強の入り口をスムーズにするため「場所・人・時間」の役割を固定化する工夫や、消しゴムの使い方の指導まで行っている。

 「消しゴムはすごく重視していて、きれいに消せるようになると、失敗を受け入れられるようになる。答案用紙が白紙のケースが多いが、それは自信があるものでないと書こうとしないから。例えば『あいうえお』と書けばいいだけなのに書かない。それは間違えると嫌だから。ただしきれいに消せるようになると、もういっぺん書いてみようと言えば、どんどん書けるようになる。それで自分で成長していく」。

 寺岡氏は、適切なやり方があれば能力は伸びると強調する。実際に、IQ65だった生徒が英語の偏差値を65まで伸ばした事例もあり、学習を通じて自身の長所や短所に気づくことが、将来の就職や離職率の低下、人間関係の改善に繋がると語った。

■支援の「隙間」を埋めるために

境界知能の子どもが学ぶための工夫

 議論を通じ、EXITのりんたろー。は、テクノロジーの発展が知的障害者向けには進む一方で、境界知能への対応が後回しにされている現状に触れ、「正しく寄り添えば救い上げられる気がしている。これは民間だが、こういうところに国の支援がもっと入ってほしい」と、公的なサポートの重要性を指摘した。

 また古荘氏は社会の向き合い方について「支援の狭間だと皆さん共有していただくのと、それから当事者の方も、今までできるだけ被害を受けないように隠してきたが、オープンにした人を『よく言ってくれたね』と社会が認める、それがスタートになるのではないかと思う」と述べていた。 (『ABEMA Prime』より)

広告