ヨーロッパを中心に「粉ミルクの毒素混入」が問題になっている。
ロイター通信によると、ネスレやダノンなどの大手メーカーが販売していた乳児用の粉ミルクに、吐き気や腹痛を引き起こす毒素「セレウリド」が混入。メーカー側は、毒素が混入した可能性のある粉ミルクを数十カ国で自主回収しているという。
フランスでは、因果関係は不明ながら、回収対象のミルクを飲んだとみられる乳児3人が死亡したとの報道もあり、保健当局がセレウリドの許容基準を厳格化する事態に。一方、日本では先月、厚生労働省がヨーロッパで自主回収されている製品の輸入は確認されていないと発表した。
ただ、ネットでは「赤ちゃんだと影響が大きそう」「『母乳が一番!』に戻りそう」のように、粉ミルクのリスクを心配する声や母乳信仰が強くなってしまうのではないかという懸念も見られる。
赤ちゃんの食の安全を守るためには、どんな対策が必要なのか。『ABEMA Prime』では、世界に広がる粉ミルクの毒素混入問題を深掘りした。
■セレウリドとは

新生児科医で小児科医の「ふらいと先生」こと今西洋介氏によると、「セレウリドは、セレウス菌の一部の株が産生する毒素だ。赤ちゃんだと症状が激しく出る。摂取後30分〜6時間程度で、吐き気や腹痛を訴え、救急外来に運ばれるケースがある。かなり少量でも症状が出る。大人でも症状は出るが、体が小さい子どもは、少しの毒素でも激烈に症状が出る」のだという。
加工食品業界で長年仕事し、食品の安全管理などに詳しいコンサルタントの川本浩二氏は、「粉ミルクの栄養成分に、アラキドン酸という油の一種が入っている。ヨーロッパではDHAの粉ミルクへの添加が必須と定められているが、DHAだけでは油脂のバランスが悪いため、アラキドン酸を入れている。しかし、その製造工程に不備があり、今回セレウリドの毒素が産生されてしまったと報道されている」と説明した。
国による基準は、「日本ではDHAとアラキドン酸は、任意で入れる栄養素だが、ヨーロッパではDHAが必須だ」と話す。「DHAとアラキドン酸を2対1などで調整して入れた方がいいと、ヨーロッパの小児科学会では言われている」。
■「母乳に近い」を目指す取り組みとリスク

そもそも母乳と粉ミルクには、どのような違いがあるのか。今西医師は「昔と比べると、粉ミルクも改良されていて、母乳に近い成分になっている。ただ母乳には、赤ちゃんを守る免疫物質や、善玉菌がよく作用するエサも含まれている。生きている菌を届ける意味では、まだ人工乳は母乳にたどり着いていない」と語る。
その歴史については、「明治以前は、母乳が必要な赤ちゃんが多くいても、人工乳がないことによる乳児死亡率が上がっていた。戦後に人工乳が量産されるようになり、乳児死亡率が下がった経緯がある。やはりあくまで母乳が基本で、人工乳は代替品のコンセプトで作られている」とした。
タレントでソフトウェアエンジニアの池澤あやかは、「夫と育児を分担しようとすると、男性は母乳が出ないため、粉ミルクを使わざるを得ない。使うことでのメリットもあり、分担意識を育むことで、育児に貢献しようという意欲が高まる側面もある」と指摘する。
■「メーカーも企業努力をして、栄養素も母乳に近づいている」
日本国内への影響はどうか。今西医師は「そこまで心配することはない。国産の粉ミルクもあるため、今回については問題ない」と言う。
こうした出来事によって、むしろ「母乳でないとダメだ」という論調も強まる可能性があるが、「医療者は母乳のメリットを強調しがちだが、個人的には総合的なバランスだと思っている。エビデンス的には母乳が一番いいが、お母さんのメンタルヘルスを壊してしまうと意味がない。母乳を出したくても出せないお母さんもいる。人工乳をサポートしつつ、やがて母乳に戻り、親も子も健やかに育児をしてほしい」と願う。
一方で、医療現場では「赤ちゃんの集中治療室(NICU)で働いている時も、国産粉ミルクを安心して使っていた。粉ミルクメーカーもすごく企業努力をしていて、20〜30年前と比べると、かなり栄養素も母乳に近づいている」と太鼓判を押した。
(『ABEMA Prime』より)