オランウータンのぬいぐるみを連れて歩く子ザルの姿がSNSで話題となり、千葉県の動植物園には連日、多くの人が訪れている。
生後6カ月の愛くるしい姿
市川市動植物園の猿山の中に、SNSで話題になっているサルがいる。
56頭のニホンザルがいる猿山。その中にいたのが…。
「あの子が生後6カ月ぐらいの小ザルのパンチ」
オランウータンのぬいぐるみを抱えている生後6カ月のオス、パンチ。それにしても一体なぜ、ぬいぐるみを?
「基本的に子ザルは生まれたら、お母さんに抱きつく習性がある。抱きつく中で筋力を鍛えたりする。お母さん代わり」
お母さんの代わりだというぬいぐるみ。実は、パンチは生後間もなく母親から育児放棄され、人工哺育されることになった。
生まれたばかりのニホンザルは母親にしがみついて筋力を鍛えたり、安心感を得たりする。母親代わりに筒状にしたタオルなどを与えてみたが、パンチが特に気に入ったのが、オランウータンのぬいぐるみだったという。
人間の手で育てられてきたパンチだが、先月19日、群れに戻す試みが始まった。しかし、群れのサルに警戒されているのか、なかなか受け入れてもらえないという。
「市川市動植物園の公式Xがある。ハッシュタグ『がんばれパンチ』ということで、我々の方で応援の声をパンチに届けて下さいという呼びかけをした。非常に多くの反響をいただきまして」
群れに戻る…多くの人応援
SNSでパンチの応援投稿を呼びかけたところ、その愛らしさと境遇から応援コメントが殺到した。
「パンチくん、かわいい!がんばれ!」「パンチ、けなげすぎる…」など、SNSでパンチ人気は急上昇。その結果…。
「2月15日の日曜日、この時期の日曜日の2倍以上の5400人くらいの来場があった」
投稿呼びかけからわずか9日で、来場者が例年の2倍以上に増えたという。
その応援が届いたのか、パンチに変化があった。大好きなぬいぐるみを手放し、群れのサルに近づこうとする様子も見られた。
「最初はパンチ自身も緊張していたのか、ぬいぐるみにずっとべったりだった。日を増すごとにぬいぐるみから離れていくことが多くなって、他のサルにいろいろ行く。メンタルはすごく強いサル」
群れに溶け込むまであと一歩。頑張れ、パンチ!
母親代わり大切なぬくもり
パンチはぬいぐるみと過ごして育ってきたが、ぬくもりというのは、赤ちゃんザルにとっても重要なことのようだ。
かつての研究では、赤ちゃんザルが母親に愛着を抱くのは、母乳を与えてくれるからだと認識されてきた。
20世紀前半の心理学者・ハーロウは生まれたばかりの子ザルに、人工的に作った母親の模型を与える実験を行った。
一つは、針金作った母ザルに哺乳瓶が付けられている模型。もう一つは、保温された布やスポンジで作られた母ザルの模型。同じ空間で生活させ、どちらの母親の模型を好むのか観察を行った。
その結果、子ザルは餌(えさ)の時以外のほとんどの時間を布などで作られた母ザルと一緒に過ごしたという。
この実験でハーロウは、サルの初期段階の発達において最も重要なのは、食料の提供ではなく物理的な接触、つまりぬくもりであると結論付けたのだ。
ぬいぐるみを母親代わりにしているパンチの姿が注目されているが、人工哺育に携わってきた飼育員の宮腰さんは「ゴールはパンチが“親離れ”して、群れの中で仲間と餌を食べ、一見どのサルがパンチか分からないようになること。どうしても親のような気持ちになってしまうが、入れ込み過ぎないよう見守っている」と話していた。
(2026年2月17日放送分より)







