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2026年2月20日 01:45

“仮免許”→“本免許”への道のりは?世界初『iPS細胞由来』条件付き承認へ

“仮免許”→“本免許”への道のりは?世界初『iPS細胞由来』条件付き承認へ
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山中伸弥教授がノーベル賞を受賞した、iPS細胞。その作製の発表から今年で20年です。今月19日、iPS細胞を使った2つの再生医療製品が世界で初めて、承認への道筋が立ちました。病気に苦しむ患者には大きな希望となります。

万博の目玉『心筋細胞シート』

大阪・関西万博の目玉にもなった『心筋細胞シート』。iPS細胞から作られた心臓を動かす細胞、約3300万個が敷き詰められています。これを患者の心臓に貼り付けると。

大阪大学大学院 澤芳樹特任教授
「血管が生えてくるのが6時間以内と言われている」
虚血性心疾患の患者

対象となるのは、心筋梗塞など心臓の血管が狭くなり、血流不足となる虚血性心疾患の患者です。重症化すれば人工心臓や心臓移植しか選択肢はありませんでしたが、シートを貼ると血管を再生する物質などが分泌され、移植に至る前に回復する可能性があるといいます。

研究期間20年 今後のポイント

長年にわたり、日本の心臓外科をけん引してきた澤教授。しかし、限界を感じていました。

大阪大学大学院 澤芳樹特任教授
「手術で治らない人がたくさんいる。心臓移植はいまだにドナー不足で、この方々を助けるという意味で、20年くらい前から再生医療に取り組んできた」

iPS細胞から心臓の細胞を作り出すことを決意し20年。ついに一歩を踏み出しました。

心筋細胞シート
大阪大学大学院 澤芳樹特任教授
「世界でいくと何百万人。これらの人々に一刻も早く、この治療が普及するように。それにより回復することが大事だと思っています」
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パーキンソン病治療へ大きな前進

そして、もう1つ「了承」されたのが、“パーキンソン病”治療のための製品です。脳にiPS細胞から作った神経のもとになる細胞を移植することで機能の回復を目指します。研究開発にあたった京都大学の高橋淳教授(※「高」=はしごだか)は…。

京都大学iPS細胞研究所 高橋淳教授
「移植された神経によって産生されたドーパミンで、体の動きが良くなるといったことを期待して細胞移植を行っている」
パーキンソン病の症状

国の難病にも指定されているパーキンソン病は、運動機能を調整する脳内のドーパミンが減ることで起こります。

現場の医師は…。

パーキンソン病センター 波田野琢センター長
「今の治療薬は対症療法。薬を入れることで健康な脳に少し戻すことができる。(病状が)進むと、どうしても薬の効果に限界が来てしまう」
細胞を移植した後の患者の脳

高橋教授らの研究チームは、患者7人の脳にiPS細胞から作った神経のもとになる細胞を移植。その結果、細胞は定着し、ドーパミンを生み出していることが確認できました。

今回の結果を受けて、高橋教授は…。

京都大学iPS細胞研究所 高橋淳教授
「承認が得られたとしても、それはゴールではなく、新しい医療の始まりに過ぎません。この治療法が一日も早く、真に信頼される標準的な選択肢となるよう尽力してまいります」
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患者は限定的 本承認へ課題も

今回、どちらの製品も『条件・期限付き承認制度』の審査で了承されました。この条件・期限付き承認制度とはどのようなものか、iPS細胞など再生医療の実用化に詳しい、藤田医科大学・八代嘉美教授に聞きました。

藤田医科大学 八代嘉美教授
藤田医科大学 八代嘉美教授
「この制度は、再生医療等製品をいち早く患者に届けるための制度で、通常より少人数の患者の治験で安全性・効果を確かめ、有効性が推定されれば製造・販売を許可するもの。これで保険制度が適用されることになれば、費用を抑えてiPS細胞を使った再生医療を受けられるようになる。ただ、並行して患者全ての調査を行い、7年以内にさらに有効性を検証。その後、改めて『本承認』を得る必要がある。今回は、いわば“仮免許”のようなもので、本承認という“本免許”が取れれば、条件や期限なく製造・販売できることになる」
今後の使用人数見込み
(Q.これから、どれぐらいの患者が使えるようになりますか?)
パーキンソン病を例にあげます。2023年時点、パーキンソン病の患者は全国に25万人います。治療用の『アムシェプリ』を開発した住友ファーマは、治験では7人の患者に使用しました。今後、厚労省は本承認に向けて、有効性を確認するために7年間で35人のデータを集めることを定めています。そのため、一気に使える人が増えるというわけではありません。

八代教授は今後の課題として、このようなことを挙げています。

藤田医科大学 八代嘉美教授
「実際に製品を投与するのに必要な知見や経験を持つ医師は限られている。また、年齢・重症の度合いなど様々な状況の患者がいるので、有効性に違いが出てくることも考えられる。“本免許”への道のりは簡単ではない」
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