いま、音に特化した動画ジャンル「ASMR」が世界的ブームとなっており、YouTubeで新たなジャンルを構築したとも言われている。なかでも山口理容店4代目店主、山口太郎氏の奏でるシャンプーの音は再生回数300万超えの大人気で、ネットでは「見ているだけで寝落ちしそう」「永遠に見てられます」「クセになる新たな環境音楽」と絶賛の声が上がっている。
【映像】90分3万円・世界一の“シャンプー技”(実際の映像)
相模湾に面した神奈川県葉山町は、御用邸もあるなど閑静な別荘地としても知られており、その一角に極上の音を奏でる山口理容店がある。創業は大正9年(1920年)で、100年以上の歴史を誇る。
「け」ののれんが目印で、店内は趣のあるレトロな佇まい。昭和の時代から続く木の温もりが優しく出迎えてくれる。太郎氏は現在32歳で、100年以上続くこの理容店の4代目として手腕を振るっている。
太郎氏は「カットだけってお店、もちろんそれはそれでいいと思う」としながらも「僕は町の床屋さんとして、カット・シャンプー・顔そり、全部時間かけてお客さんに喜んでもらいたいというのが、最近減ってきちゃったかなあ……とは正直思う」と自身の想いを語った。
料金は1回90分で3万円。それでも予約はぎっしりと埋まりおよそ3カ月待ちで、海外からもこれを目当てにくる外国人観光客もいるほどだ。
太郎氏の曽祖父が葉山の地に根を張り106年となる山口理容店。関東大震災、太平洋戦争とさまざまな困難を乗り越え地元で愛され続けてきた。特に3代目となる父・昌男氏は美容師免許と理容師免許両方の資格を持つ技巧派。男性も女性も立ち寄れる理容店を目指し、のれんを掲げた。
そんな父の背中を追うように太郎氏もいつしか理容師の道へ。店では昌男氏の腕に惚れ込む固定ファンも多かった。そこで横須賀・米軍基地内の理容店で3年間修業したのち、店に戻った。昼の部を3代目の昌男氏、夜の部を4代目太郎氏が担当し、朝9時から夜11時まで営業。これが地元で話題となった。
近年、美容店は増加傾向にあるのに対し、理容店の数は減少の一途。後継者不足も大きな原因となっている。自身も後継者である太郎氏は「日本の誇る理容店の技術をもっと伝えたい、もっと理容店の良さを知ってもらいたい」と考えたという。そこで気付いたのが、自らの仕事で流れる「音」だったそう。
スタンドシャンプーASMR動画がバズっているのはなぜなのか。太郎氏は「一般の方からすると、座ったままのシャンプーって新鮮だと思う。あとは耳元での心地のいいシャカシャカっていう音がもう夢の世界というか。本当、音を意識した」と語る。
太郎氏はさらなる挑戦に出た。世界の凄腕のマッサージ職人たちが集い、世界一の技術を競う大会「MASSAGE CHAMPIONSHIP WORLD TOUR 2025」に理容業界から唯一参加し、見事優勝を成し遂げた。それは確かな技術に裏付けされたものだったが、太郎氏は「めっちゃうまい方ばかりだったんですけど僕だけシャンプーしてたんで、優勝するかビリかなと思っていた」と振り返った。
ASMRという新しいジャンルで未来を切り開こうとする息子を昭和、平成を腕一本の技術で駆け抜けた先代の父はどう思っているのか。「お父様から見て太郎さんは理容業界にとってどうですか?」と問いかけると、昌男氏は「どうですかって別に、ごくごく普通で。特別変わったことはやってないよ。自慢してもしょうがない」。その言葉に太郎氏は頷いていた。
実際に太郎氏のシャンプーを安倍晋三元総理のモノマネでおなじみの芸人・ビスケッティ佐竹が体験した。耳にASMR専用のマイクを装着し、まずは座ったままの状態でシャンプー。心地いいシャンプーのシャカシャカ音が響く中、佐竹はただただ恍惚の表情を見せる。続いての洗髪にもこだわりがあるそうで「3秒後ぐらいに冷たいの(水)いきますね」と、洗髪の途中で温水から冷水に切り替える。温かいお湯で流したあと、冷水をかけることで頭皮が引き締まるのだとか。「爽快感が非常に素晴らしい」(佐竹)
体験が終わったあとの佐竹は「すごい……」と呆然とした様子で「すごいですね、世界一堪能しました。めちゃくちゃ気持ちいいです。もう目がバキバキになるような、音以上に体感はもっとすごい」と絶賛。スタッフに「モノマネ忘れてるよね?」とツッコまれると、「そうですね…もう全部が溶けますね。はぁ…気持ちよかった!」と満足感を噛み締めた。
(『ABEMA的ニュースショー』より)