社会

サタデーステーション

2026年2月22日 00:53

岩手・大船渡の山火事から1年 黒焦げの“被害木”課題に

岩手・大船渡の山火事から1年 黒焦げの“被害木”課題に
広告
3

岩手県大船渡市で起きた大規模な山火事から、まもなく1年です。課題となっているのが、黒焦げになった無数の“被害木”。放置すると深刻な問題が…。(2月21日OA「サタデーステーション」)

平成以降“最大規模” 現地のいま

山火事からまもなく1年を迎える中、何が変わったのでしょうか。私たちが向かったのは、岩手県大船渡市の綾里崎。

報告・若林奈織(岩手・大船渡市 17日)
「灯台の付近ですが、焼けた木が葉の部分、ほとんど無くなって取り残されています。倒木したものが山の中腹まで落下してきていますね」

この場所は1年前、激しい炎に包まれていました。

報告・上野比呂企(岩手・大船渡市 去年2月)
「はっきりと見えるオレンジ色のラインが炎です。この時間も衰えることなく燃え続けています」

去年2月、大船渡市で起きた山火事。延焼面積は平成以降、国内最大規模となりました。炎はやがて街にも。住宅など200棟以上が被害を受けました。

報告・若林奈織(岩手・大船渡市 15日)
「こちらは当時、多くの家屋の焼け跡が残っていた場所なんですけれども、今は解体されて更地になっています。そして建設途中でしょうか。足場が組まれている場所もあります」
近隣に住む男性
「大船渡(市街地)のほうに家を買ったり、建てるという人もいますし。そこらへんがちょっと寂しいかな」
広告

課題は“被害木”土砂災害懸念も

復興への歩みを進める中、課題となっているのが“被害木”です。出火地点に近い山の中に入ってみると…。

京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授
「非常に大規模な樹冠火が起きたところで、今回の林野火災の最も特徴的な燃え方をしたところになります」 

木の枝や葉全体が燃える「樹冠火」。大規模化した要因の1つとされています。木の幹に近づいてみると…全体が真っ黒に焦げ、葉もすべて無くなっていました。

京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授
「これは焼損度『激』の被災林になります」
焼損度「激」の木

被害の深刻さを示す「焼損度」。木の延焼した規模によって「小」「中」「大」「激」に分類されています。中でも「激」と判定された木は、水を吸い上げる重要な機能が失われて枯れ、将来的に土砂崩れにつながるおそれがあるといいます。

京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授
「(火災から)今ちょうど1年くらいのタイミングですが、これがさらに1年・2年と経過すると、この木がだんだん枯れて腐って、倒木の懸念が出てくる」

今回の山火事では、延焼面積のうち半分以上が焼損度「大」と「激」に判定されています。葉が残り、全体が焼けていない焼損度「大」の木でも、この先注意が必要だといいます。

焼損度の被害区分
延焼範囲における被害状況図
京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授
「木の上の方には、まだ葉っぱがついているのでその木が今どういう状態にあるかって、ちょっと見にくいところがあります」

そこで、木の成長速度をモニタリングし、火傷による影響を見極めるといいます。

京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授
「この焼損が強い方の火災の影響によって構造的には弱い“危険木”にこれからなっていく可能性が高いです」

“被害木”を伐採せずにいると、さらに深刻な問題が。

京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授
「(大船渡と)ほとんど樹種や燃え方、地形条件、非常に共通しておりますので、この大船渡市の8年から9年の将来予測といった位置づけになる」

訪れたのは、およそ8年前に火災が起きた山。半分ほどの再造林が完了しましたが、一部には、長期にわたる負担などからやむなく伐採を見送った場所があります。

京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授
「あちら奥に見えるのが、“掛かり木”と言いまして、この木が倒れている途中で他の木に当たって最後まで落ちずにいるような斜めになっているようなものがあります」

目の前に広がっていたのは、今にも倒れそうな木や白く痩せ細った木々。さらにこの先は人が立ち入れないほど荒れ果てていました。このような状態になると、伐採や植林も難しいといいます。

京都大学防災研究所 峠嘉哉特定准教授
「前の段階にできるだけ伐木して、復興できる森林の領域を増やしていくことが必要」
8年前の山火事現場「大船渡の将来予測」
広告

“被害木”の活用 新たな可能性

大船渡市で、去年10月から始まった伐採作業。4月以降の植林を目指しています。現場には多くの丸太が積み出されていました。その使い道は。

気仙地方森林組合 古内文人代表理事組合長
「これはみなもうバイオマスです」

元々、合板用として育てられたスギ。火災の影響で、バイオマス燃料のチップとして半分ほどの価格で出荷されています。

気仙地方森林組合 古内文人代表理事組合長
「住宅産業に使っていただけるのが一番本来はいいとは思うんです」
大船渡での伐採作業

“被害木”の価値を模索する中、新たな発見がありました。

岩手県林業技術センター 谷内博規研究部長
「これは焼損度『激』とありますけども、焦げが樹皮のところで止まっているように見えていまして」

焼けた外側とは対照的に、内側は普通のスギと変わらない状態だったといいます。

“被害木”の外側と内側

さらに、調査で明らかになったのは…。

Q.今何キロかかっている
「今もうすぐ900キロ近く…今880キロ」

“被害木”の強度。破壊までの過程が山火事被害を受けていない木と同じだといい、その他の試験でも強度にそん色ない結果が出たといいます。ただし、火傷を負った木は日に日に劣化するため、時間との勝負です。

新たに分かった“被害木”の強度
岩手県林業技術センター 谷内博規研究部長
「今後暖かくなってくると、菌の影響や虫の影響、あとは乾燥によって割れたりとかそういうことが起こってくるので、非常に早く使わなければならない」

岩手県では、“被害木”のうち安全性が認められたものを“被災木”として発信し、建築用資材や木工品などへの活用を目指しています。

来場者(住宅の建築関係)
「実際に使えるところが多いんだなというのと、また新しい山を復活させるために植林をしたいということなので、できるだけ協力したい」
岩手県農林水産部 林業振興課 林業・木材担当課長 菊地明子さん
「“被災木”を使っていただくことで、被災地の支援になるということなんですよね。より高い価値のものとして売っていくということでそれで販売を進めていければ」
建築用資材などへの活用目指す
広告