テレビ朝日では『未来をここからプロジェクト』の一環としてSDGs企画をお伝えしています。今回のテーマは「気候変動について具体的な対策を」です。
長野県・諏訪湖はかつて、真冬は凍っているのが当たり前の景色でした。そこに現れるのが“御神渡り”。湖に張った氷がせり上がって、山脈のようにせり上がる現象で、諏訪大社の上社にいる男の神さまが、3キロほど離れた対岸にある下社にいる女の神さまに会うために通った道と伝えられてきました。ですがその御神渡りに近年、大きな変化が起きています。
書き継がれる冬の諏訪湖とは
諏訪湖の側に鎮座する八劔神社。その一角に、特別な時にだけ開かれる扉があります。中にあるのは地域の人々が書き継いできた、ある記録です。宮司の宮坂清さんが託されました。
「天和3年、1683年以降の御渡帳並びに注進録」
『湖上御渡注進録』いわゆる御神渡りの発生を記録したものです。御神渡りとは、湖面の氷がせり上がり、山脈のようにつながる現象です。諏訪大社の上社から下社の方まで伸び、神様が通った跡と伝えられてきました。その記録は1443年、室町時代から583年にわたって続いています。なぜ、これほど大事にされているのでしょうか。
「御神渡りのでき方によって、あるいはできない時など、今色々なことを知らしめてくれる」
御神渡りができると、氷の連なる方角や亀裂から農作物の出来や社会情勢、天気などを占う神事が行われます。記録を続けるのは、過去と同じような場所に御神渡りができた時、コメの出来や天気がどうなるかを記録と照らし合わせて判断するからです。
「これすごいですよ。一尺五寸の氷の厚さ。45センチですよ。今は凍っても25センチくらい」
諏訪湖の氷は厚さ30センチに達することもあり、御神渡りは人の背丈に迫る高さでした。
御神渡りの記録に異変が…
しかし近年、御神渡りに大きな変化が起こっています。50年ごとの出現回数を示したグラフを見ると、1900年代までは、ほぼ毎年、現れていた御神渡りですが、1951年以降は半減。そして2001年以降は7回だけです。宮坂さんが神事で拝み手を務めたのは40年でわずか11回。最後となった2018年は観測史上最強の寒波が来た年です。この年の諏訪湖を人工衛星から見てみると、湖面にうっすらと白い筋が現れました。これが御神渡りとなったのです。
あれから8年。今年1月、この冬“最強・最長”の寒波が、各地に記録的な大雪をもたらしました。地域の人たちは祈るように湖面を見つめます。御神渡りは気温−10℃以下の日が続かなければできません。
「こういう数字を見ると、皆ニヤニヤするのですが、湖がしっかり応えてくれるかどうか」
8年ぶりの御神渡りに期待が高まります。しかし、凍ったのは一部だけでした。衛星画像を2018年と比べると、全体の2割ほどしか凍っていません。今年は寒さが長続きしなかったためです。
冬の諏訪湖は温暖化の象徴
気候変動を研究し、御神渡りの記録を調査した三上教授は、これは地球温暖化の象徴だといいます。冬の諏訪の最低気温をグラフにすると、80年代後半、一気に気温が上がっています。ここに御神渡りが発生した回数を並べていくと、気温が一気に上がったのと同じタイミングで御神渡りも目立って減少しています。
最低気温が一気に上がったため、御神渡りが起こらなくなってしまった。地球温暖化の象徴として諏訪湖の御神渡りができなくなっている」
凍らなくなった湖の悲鳴。その声は世界にも届いています。
「冬が近付くと諏訪湖は気候変動の傷痕を静かに刻む」
「神の不在は自然界からの警告」
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