社会

ABEMA TIMES

2026年2月28日 11:00

衛星 VS 衛星 妨害はまさかの“スプレー攻撃”現代の宇宙戦争が意外だった

衛星 VS 衛星 妨害はまさかの“スプレー攻撃”現代の宇宙戦争が意外だった
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 日本政府が2025年7月、「宇宙領域防衛指針」を発表した。宇宙空間から目標情報をリアルタイムで探知・追尾することにより、事態の兆候や戦況をいち早く、かつ的確に把握することなどが盛り込まれている。宇宙空間における脅威とリスクが拡大するなか、相手方の指揮統制・情報通信等を妨げる能力をさらに強化する目的もある。

【映像】宇宙空間で衛星同士はこう戦う!

 日本では2027年度までに、航空自衛隊の「航空宇宙自衛隊」への改称を目指している。世界各国で衛星同士による“宇宙戦争”が迫る中、『ABEMA Prime』では意外な攻撃方法と、今後の展望を識者に聞いた。

◆衛星 VS 衛星 妨害手段はスプレー?

宇宙領域防衛指針

 脅威となる衛星としては、さまざまな手法で他国の衛星に攻撃・妨害を行い無力化する「キラー衛星」があり、そのキラー衛星の進路を阻むように動いて自国衛星を守るものとして「ボディーガード衛星」がある。

 「ESA 宇宙環境報告2025」によると、地球を周回する「稼働中の人工衛星」は約1万1700基(2025年5月時点)で、その中で「スペースX」が提供する衛星通信サービス「スターリンク」の衛星は約8000基を占める。またスペースデブリ(宇宙ゴミ)は5万個以上(10cm以上のもの)が存在している。

 スペースXは2月1日、ロシア軍が不正に利用していたスターリンクのアクセスを遮断した。AFP通信やBBCによると、ロシア軍に混乱が起き、ウクライナ軍が約200平方キロメートルの領土を奪還。ウクライナ軍のドローン操縦兵士は「ロシア軍は攻勢能力の50%を失った」とした。

 こうした状況下で出たのが「宇宙領域防衛指針」だ。防衛省戦略企画参事官の高橋杉雄氏は「2024年夏に宇宙担当のポストに就いたが、知らないことも多く、『安全保障の専門家である私でも知らないなら、世間では知られていない』と思い、戦略文書を出そうと決めた」と経緯を語る。

 指針の意義としては、「ロケットや衛星を作る民間企業に対して、防衛省・自衛隊が何を重視しているか伝えることで、先回りで研究開発をしてもらう思惑があった。アメリカとの協力関係でも大きな柱になるため、とにかくシンプルに伝えるようにした」という。

 歴史を振り返り、「湾岸戦争の1991年ごろから、軍事と宇宙は切り離せない存在だ。一方で、まだガンダムのような宇宙戦争の世界ではない。宇宙は地上のサポート役であり、『どう宇宙を相手に使わせないか』『使わせないようにされる時、どう守るか』がポイントになっている」と説明する。

 衛星の動きについては、「実はよくわからない。夜空で動く“星”は、だいたい人工衛星だが、地上から見ても、どの衛星が何をしているかわからない」のが現状だ。「電波のパターンを観測したり、宇宙にある望遠鏡で直接観測したりして、“やばい衛星”を識別する必要がある。これを始めるために『航空宇宙自衛隊』へ名前を変えるが、そこまでしないと、安全保障的な宇宙利用や、その妨害への対処は難しい」。

 衛星を狙い、打ち落とすことは可能なのか。「中国とロシアは実験をして、アメリカも落下した衛星を撃ったことがあるため、できなくはない。ただ、中国が2008年ごろに行った時、膨大なデブリを出して、批判が集まった。それ以後、中国はやっておらず、モラル的にもやりにくい」。

 コラムニストの河崎環氏は「衛星はすべて登録制で打ち上げられていると思っていて、謎の衛星もあるとは知らなかった」としつつ、「衛星への攻撃に化学スプレーを使うと聞いて、面白いなと感じた」と話す。高橋氏によると、「カメラで地上を撮影する衛星に対して、レンズを汚すためにスプレーを噴射する」のだそうだ。

◆日本が宇宙事業で世界と戦えるのか

想定される“宇宙戦争”とは?

 そもそも宇宙における防衛力として、日本はどの位置にいるのだろう。高橋氏は「西側諸国はアメリカという『巨人』がいて、その他は『村人B』だった。自衛隊は2008年以降に宇宙能力の整備を解禁され、15年ちょっとで大きな進歩をした。あと5年、10年すれば、“名前の付くキャラ”になり、アメリカに次いで、フランス、日本の位置づけになるだろう」と見通す。

 技術力については「独自の打ち上げ能力があり、独自の衛星を作れるのは大きなメリットだ。民間ロケット『カイロス』もあれば、主力ロケット『H3』も打ち上げ失敗の原因究明で大きな進展があったとのレポートが出た」と評価する。「民間のポテンシャルは非常に高い。アストロスケールという会社は、衛星に衛星を近づけるスペシャリストで、デブリの除去もできる。米国法人はアメリカの衛星に燃料を補給する契約もしていて、世界トップクラスの技術を持っている」。

 投資規模の差もあるが、「アメリカは巨人で、追いつくのは難しいが、『村人B』であり続けるのも難しい。スターリンクをロシアとウクライナの両方が使っていた時期もあるが、いまは、ロシアは接続が遮断され、ウクライナでも使える場所が限られている。そう考えると、自前で持つことも、ある程度必要だ」と話す。

 近畿大学 情報学研究所 所長の夏野剛氏は「日本の防衛産業と宇宙産業は似ている。宇宙産業には大手が4社あるが、宇宙技術での売り上げは数%。わかっている役員も1人しかおらず、重点的な投資など決まらない」との実情に触れる。

 そして、「ロケットは2社、衛星は2社が手がけているが、顧客はJAXA(宇宙航空研究開発機構)と自衛隊しかいないのだから、各社の宇宙部門を切り出して、『ジャパンスペース』にすればいい。宇宙産業は2000億円規模で、だいたい畳産業と一緒だ。客が2社しかいないのだから成長しない」とアドバイスした。

 これに高橋氏は「民間の宇宙利用が爆発的に増えることで、政府は数兆円規模の市場にしていく目標を掲げている。だからこそ、民間にトライアルの機会が与えられている」と返す。「最近では、水田の生育状況を宇宙から観測する研究があるが、こうした日本のニーズに合ったものを作るとなると、スペースXに頼みきれるのかとなる」。

 夏野氏は「分散しているのがもったいない。日本のロケット打ち上げは成功率が高い。ここにちゃんと資金を集められないか。衛星を上げたくて、スペースXに並んで待っている国は多く、市場はある。マネジメントがもったいない」と指摘。高橋氏は「国内衛星をせっかく作るのなら、その打ち上げ費用を海外に払うのはもったいない。国内でなんとか頑張ってほしい、という考えはある」と反応した。 (『ABEMA Prime』より)

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