施政方針演説で、高市総理が言及した裁量労働制の見直し。そもそも裁量労働制とは、実際に働いた時間ではなく、あらかじめ決められた労働時間を働いたとみなし、賃金を支払う制度のこと。
【映像】連合前会長「胡散臭い」“裁量労働制の見直し”を全否定する様子(実際の映像)
裁量労働制の見直しに対し、連合前会長の神津里季生氏が「100害あって1利なしだ」と『ABEMA Prime』で強い懸念を示した。
■「1%しか使われていない」制度拡大への疑問

神津氏は「裁量は本来、労働者の裁量だ。しかし世の中全体では、経営者の裁量で決まるものだと誤解されている節がある。もし本当に働く人の裁量で決まっているのなら、労働側から拡大の要望が出てもおかしくない。ところが実際は経団連が拡大を求めている。この逆転現象こそが、制度の胡散臭さを物語っている」と指摘。
現行制度の普及率の低さにも言及し、「専門業務型はシステム開発や金融商品の開発など、今でも広い範囲を含んでいる。しかし、適用されているのは1〜2%程度だ。良い制度だと思われているならもっと使われているはず。普及していないものをどう拡大しようするか、極めて疑問だ」と語った。
また、制度運用の実態については、「政府の調査によれば、自分で労働時間を決めている適用者は4割しかいない。残りの人は会社や上司が決めている。これでは本来の趣旨から外れている。過労死や過労自殺が今も年間約200件起きている日本では、そうした問題を解決してから議論を始めるべきだ」と主張した。
■「日本経済が自分の首を絞めた30年間」

日本の生産性や賃金停滞について、神津氏は「諸外国と比べて賃金が大きく開いてしまったのは、非正規雇用を増やしすぎたからだ。1995年に当時の日経連が打ち出した方針により、非正規雇用が2〜4割に急増した。低処遇で細切れの雇用では、企業は人材投資を怠るようになる。日本経済は自ら首を絞めてきたのだ」と分析した。
さらに、労働者の権利とセーフティーネットの重要性について、「日本は雇用に関するセーフティーネットが非常に脆弱だ。今の深刻な人手不足なら仕事は見つかるかもしれないが、一度景気が悪くなれば簡単に放り出されてしまう。ブラック企業に入っても、生活のために我慢せざるを得ない労働者が圧倒的に多いのが実情だ」との危惧を示した。
理想的な労働環境のあり方として、「労働移動はもっと自由であっていい。今の会社や仕事が合わないと思えば、転職して収入を上げられるだけのスキルを身につけられる仕組みを、国が制度として位置づけるべきだ。ヨーロッパのようにセーフティーネットが機能していれば、短い労働時間でも高い生産性を維持できるはずだ」とした。
(『ABEMA Prime』より)