社会

ABEMA TIMES

2026年3月1日 10:15

年8万人が“失踪”する日本…妻を捜し続ける夫の想い「ずっと一緒に、もっと大事にするから。帰ってきてほしい」

年8万人が“失踪”する日本…妻を捜し続ける夫の想い「ずっと一緒に、もっと大事にするから。帰ってきてほしい」
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 日本では1年間で、8万2563人が行方不明・失踪している。その裏で、同じ分だけ「帰りを待っている人」も存在する。群馬県に住むヒロシさん(60代)も、その1人だ。「なんとか無事に帰ってくれれば。ずっと一緒に、もっと大事にするから。帰ってきてほしい気持ちが強い。それが一番だ」。

【映像】失踪したヒロシさんの妻(実際の映像)

 2025年8月、40年以上連れ添った妻が失踪。異変に気がついたのは、彼女が姿を消したと思われる10分後だった。「2人で生活していると、なんとなく気配を感じる。片方がどこかに出かけると、ふっと目覚める。6時10分くらいに目が覚めて、そこに書き置きがしてあった」と明かす。

 残された手がかりは、机に置かれた6枚の手紙だった。「これまでいっしょにくらしてくれてありがとう。だれよりも大好きだった気持ちにうそはないです。迷惑かけて本当に申しわけないです。ごめんなさい」。

 ヒロシさんはすぐに警察へ通報。数日後、山で車を見つけたと連絡が入るも、車内に妻の姿はなかった。その後、山の中などを半年間かけて調べるも、いまだ彼女の足取りは分かっていない。現在の心境を「自分でできることは精いっぱいやる。本当に後悔したくない」と語る。

 ただ個人でできることには限界もあり、探偵を頼った。実は失踪者を捜してほしいと探偵を頼る人は多い。RCL探偵事務所の宗万恵行代表によると、「警察は捜してくれない。小さな子どもがいなくなるとすぐに動くが、成人が自分の意思で出て行くと、家族などが届け出ても率先して捜してくれない」という。

 事件性がない場合、警察も捜査を行わない。それでも探偵であれば、人が立ち入れない場所を捜すドローンや、持ち物などの匂いを頼りに捜す警察犬を使用し、捜索を続けてくれる。ヒロシさんは「見つかる、見つけるという気持ちで、最後まで諦めないことが大事だ」と話す。

 “失踪大国”とも言われる日本だが、捜索には「本人は捜されたくないのでは」といった声もある。『ABEMA Prime』では、失踪者捜しの実情と是非を考えた。

■会話の後に妻が失踪

ヒロシさん

 失踪前後の状況について、ヒロシさんは「前日は妻が孫の面倒を見ていて、その後、暑かったため深夜2時ごろ、2人でシャワーを浴びた。妻が『スッキリした』と言っていたため、安心してそのまま寝てしまったが、6時に妻が家を出て、その気配を感じて6時10分に私も目が覚めた」と振り返る。「悩んでいたことがあり、気にしていたが、まさか家を出るとは思わずビックリした。書き置きを読んで、すぐに警察へ電話した」。

 その“悩み”とは何だったのか。「妻の友人が、入れ墨の男性の写真を送ってきた。妻はビックリして、その写真を一生懸命スマホから消そうとしたが、『SNSで拡散してしまったのではないか』と思い込んでしまった。家族も友人も『そんなことない』と言ったが、本人には通じず悩んでいた。それが一番の原因だろう」。

■警察の捜索打ち切りと失踪者の心理

警察の捜索

 通報により警察が動いたが、「家を出た2日半後に、警察から『車が見つかった』と連絡が来た。その翌日に20人体制で山を捜索したが、妻は結局見つからなかった。車の指紋などの資料が一通り集められ、基本的にはその日で捜索は打ち切られた。課長からは『バッグなどが出てくれば、また捜索する』と言われた」という。

 失踪と社会の関係性を研究する立教大学社会デザイン研究科の中森弘樹准教授は、「失踪前後の人間関係や、日常の言動、既往歴などから、犯罪事件に巻き込まれたかどうかを“合理的”に判断している。その“合理的”がマジックワードになっていて、その時点で警察のできることをしても、これ以上進展がないと判断されると、捜査が打ち切られる」と説明する。

 置き手紙の存在については、「実は大きな要素だ。失踪する人向けのマニュアルでも、置き手紙は捜されないための手段の1つと言われている。これにより『自分の意思でいなくなった』と明示され、拉致などの犯罪に巻き込まれてはいないという手がかりになる」とした。

■「失踪には“いなくなる側”と“残される側”が必ず存在する」

中森弘樹准教授

 失踪者の捜索をめぐっては、「捜される側の権利」を尊重すべきだとの意見もある。中森氏は「失踪には“いなくなる側”と“残される側”が必ず存在する。どこかに1人で移動しても、それはただの移動だ。『いなくなった』と認識する人がいて、初めて失踪は成立する。20年弱にわたって両方の話を聞いたが、両方のことを考える必要がある。そこにはプライベートな問題も絡むが、残された側にできる数少ない行動は『捜すこと』のため、そちらに寄り添う以上は、尊重されてしかるべきだ」とした。

 話を聞いた経験から「よく失踪者は『こわい』と言う。今の時代はSNSも普及しており、失踪後に連絡を取ろうと思えば取れる。しかし、それでも連絡が付かないのは、連絡を返せなかった状況があるからだ。その理由は『こわかった』『怒られる』といった気持ちの強さがあると言う」と語る。「届出があり、警察が行方をつかんだ場合でも、逃げている側からDVやストーカーの被害届が出ている場合、あえて行方を知らせないパターンもある」。

 また、年間8万件というのは「あくまで届出ベースで、表に出ていないが、失踪とみなされる事案はたくさんある」といい、「最悪のケースは自殺で、失踪直前から2〜3日までと言われている。日頃の生活などから、そうしたことが想定できるなら、可及的速やかに警察に届け出て、前後の経緯を詳細に説明することが重要だ」とアドバイスする。

 ヒロシさんは妻の帰りを待っている。「生きているなら、自発的に帰ってきてほしい。それが一番の気持ちだ。カギを持って出て行っているため、入口に『おかえり』と書き置きをしてある。毎日仕事を終えて、家に帰ってくるたび、帰ってきてくれるといいなと思っている」。

(『ABEMA Prime』より)

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