ドラマやフィクションの世界で描かれることが多い「隠し子」。実際に、この境遇に置かれて育った人々は、確かに存在する。母と2人、沖縄で育った晴(はる)さんも隠し子で、父とは数えるほどしか会ったことはない。
【映像】“隠し子”晴さんが父と過ごした幼少期の貴重な時(実際の様子)
「ABEMA Prime」に出演した晴さんは、21歳の時に自身が隠し子であることを知ったが、幼少期から現在に至るまでの様々な葛藤、また自身と同じような境遇にいる人々への思いを語った。
◆自慢の父、その裏側にあった違和感

沖縄で生まれ育った晴さんは幼少期、父親のことを「大学の先生をしているから忙しくてお家に帰れない…自慢の父だな」と思っていた。しかし、成長とともにその認識には綻びが生じ始める。
「私が小学校に上がって、普通ならお父さん・お母さんが学芸会や運動会という学校行事に来て応援してくれる。入学式、卒業式、必ずその節目には来てくれるはずの親が来ない。毎回毎回、毎年毎年。それが1年経ち、2年経ち、それがつらかった」。
学校行事における父親の不在は、物理的な寂しさだけでなく、精神的な孤独も深めていった。運動会の昼食時、周囲が家族で賑わう中で「母と2人だけで食べないといけない寂しさ」を感じていた晴さんは、小学校5年生で久しぶりに再会した父に対し、さらに違和感を強めることになる。
「中学生ぐらいの時に『やっぱりおかしいよね』と。誕生日に電話の1本もない。おめでとうの一言もないというのは、やっぱりこれは普通じゃないなと」。
晴さんが当時最も苦しんだのは、家庭の事情を誰にも話せず、また母親に真実を問いただすこともできないという閉塞感だった。「母に聞きたくても聞けない。聞いたらきっと悲しむだろうなと感じていた」。
日常生活の至るところに「父」の影が潜んでおり、そのたびに彼女の心は揺れ動いた。「テレビで父親が出るようなテレビドラマがあったら、なるべくチャンネルを変えたりした。親戚同士が集まった時に、父親の話になりかけた時に、なんか気まずい感覚がいつもあって、常に内側がざわざわしていた」。
◆21歳で突きつけられた「認知」という現実

晴さんが自身の出生の全容を知ったのは、成人してからのことだった。母親から「これから父親に会うから(晴さんから)認知の話をしなさい」と告げられ、初めて自分が法的に「認知されていない」存在であることを知る。
「その日の夜に父と会ったが、不思議なことにその時にどういう話をしたか記憶がすっぽり抜けている。父親からの返答は日記に記載があって、その当時『忙しいから、もうちょっと返答は後にしてくれ』と言って、結局それから音沙汰もなかった。母はその時からもう諦めモードになっていた」。
母の他界後、遺されたノートには、父との出会いや葛藤の記録とともに、晴さんの身ごもりが判明した時の苦悩が綴られていた。それを読んだ晴さんは、さらなるショックを受ける。
「このノートをもらった時は『私が望まれない子だったんだ』というところに、すごくショックが大きかった。父親に認知されていないショックはそこまで大きくなかった。それよりも母が不憫だった」。
母の死後、晴さんは連絡先を辿って、父が別の家族と住む東京の自宅まで行ったことがある。いきなり訪ねることもできたが、晴さんは別の家族もいることに配慮し、代わりに友人に呼び鈴を押してもらい、話をしてもらった。ただ、その呼びかけに誰も対応はしてもらえず、父とはそれからも連絡は取れていない。
◆癒えない傷と社会への眼差し

隠し子として生きてきた経験は、晴さんの人格形成にも深い影を落とした。彼女は長く男性不信を抱えていたという。「担任の先生が男性の時に、すごく毛嫌いしている自分に気づいた。中学校の時に告白してくれる子もいたが、何をされたわけでもないのに、気持ち悪いと思ってしまった」。
弁護士の伊藤弘好氏は、法的な観点から「認知されている場合とされていない場合で、法律上の権利が変わる。認知をされていないと、法律上の権利が発生しない」と、養育費や相続における格差を指摘した。
また、自身も複雑な家庭環境で育ったEXIT・兼近大樹氏は、当事者を社会がどう捉えるべきかについて持論を展開した。
「あんまり大事(おおごと)にしすぎるというか、これはダメなこととしすぎると、より当事者がダメなものとされてしまう。悪いこととしていくのは大事だが、それは現実に起こり得ること。無闇やたらに産んではダメと言ってしまうと、では生まれて今生きている人たちはどうなるのかと思ってしまう。潔癖になる必要はない」。
また、フリーアナウンサーの柴田阿弥氏は、個人の感情論に留まらない制度上の責任を強調した。
「社会の制度として整えなければいけない。『隠し子』というと、センセーショナルに聞こえるかもしれないが『婚外子』という目線で見れば、日本にもいる。婚外子に限らず、離婚後の養育費の問題もそうだが、子どもの出生や生活が守られるような法整備が必要だ」。
晴さんは現在パートナーとの間に子どもがいる。子どもには自身が隠し子だったことは伝えていないが、今回の番組出演をきっかけに、それが知られたとしても構わないし、むしろ隠すつもりもないという。
「知られたとしても、それはそれでいい。この問題はデリケートではあるけれど、すごくいけないことと扱われるものでもない。子どもが、自分のおじいちゃんにあたる人が悪いことをしているという変な偏見を持ってしまっても困る。子どもに思いは大切にしたいし、聞かれたら正直に答える。法整備ももちろん大切だが、一番大事なのは生まれてくる子に対してみんなで支え合う気持ち。それが変わらない限り、どんなに法が整備されても、その子の生きづらさは変わらない」。 (『ABEMA Prime』より)