2月22日午後8時15分ごろ、東京スカイツリーの天望デッキに向かうエレベーター4基のうち2基が緊急停止した。
下降中だった1基は地上30メートル付近で停止し、中にいた子ども2人を含む20人が閉じ込められた。閉じ込められてから5時間半後、隣のエレベーターを横付けし、2基の間にステンレス製の橋をかけて救出。当初はカッターなどでエレベーターをこじ開け、脇にある非常用階段に接続して乗客を逃がす方法も検討されたという。
事故の原因について、東京スカイツリー側は、電力や信号を送るケーブルがカゴの下に設置されているローラーに巻き込まれ、ケーブル内の電線が損傷したと発表している。
今回の救助について、元大阪市消防局救助隊員の防災YouTube「レスキューハウス」のタイチョー氏は「僕は5時間半で救助できたのはすごく早かったと思っている」と評価して、「単体のエレベーターだと機械室で手動でブレーキをかけて、安全確認が取れたらエレベーター会社と連携をとって扉を開放する」と、救助の際の手順を説明。
その上でカゴの落下防止など対策を取り、近くの階から降りてもらうというが、スカイツリーは4階の入り口から地上350メートルの天望デッキまで一気に移動する作り。そのため近くの階に移動するのではなく、復旧させた隣のエレベーターを横付けし、2基の間にステンレス製の橋をかけて救出することになったという。
タイチョー氏は「本当に高所というのは2メートルも落下すれば命が奪われる危険性が極めて高い。30メートルというのはビルの高さでいうと9階から10階建て。そこから一気にエレベーターのカゴが落下すると助からない可能性がある。それぐらい危険で過酷な状況だった。『このまま落下してしまうのではないか』という精神的な不安にも繋がると思うので、皆さんが思っている5時間半以上のつらさがあっただろうなと思う」と解説した。
今回の事故をエレベーター業界はどう見ているのか。京都を中心におよそ40年エレベーターを扱ってきた、京都エレベータ株式会社の田中陽一代表取締役は「今回のような件が起きる確率は、(階数が)高ければ高いほど増えていくのではないか」とコメント。
エレベーターに閉じ込められた場合、とにかく救助を待つ以外に方法はないそうだ。「エレベーターが止まった際に自力で脱出する方法はない。エレベーターの天井を開けて外に出るシーンも映画ではあると思うが、まずエレベーターの天井は上から鍵がかかっていて中から開けることはできない」と説明。
ただし、エレベーターの停止の理由によってはできる対策もあるという。「例えばエレベーターが揺れを感じる地震、そういうものを感知した際には、ボタンをできるだけいろいろな階を押して到着して開いた際に外に出てしまう」と解説。さらに扉に物が挟まってしまった際には、閉じる方向に力をかけることも有効だという。
また、田中氏は「エレベーターは少しの故障でも、人を中に閉じ込めておく方向でエレベーターを停止させる、そういう考え方になっている。扉が閉まっていると密閉感が感じられるが、実はエレベーターは至るところに隙間があって、カゴの中に長時間いたとしても酸素がなくなることはない」とも語った。
タイチョー氏は「必ずエレベーターの中で座って、体力温存する形をとっていただきたい。暴れたり不安になると全員の危険度が増すので、安静な姿勢をキープすることが一番大事」とアドバイスした。
今回5時間半に及ぶ閉じ込めで、SNSでは「トイレどうしてたのかな?」「小さい子もいたのに、さすがに5時間半もトイレに行けないのはかなり地獄」といった声も寄せられている。
2008年7月に着工した東京スカイツリーは2012年5月に開業。建設中には東日本大震災を経験した。エレベーターには水や簡易トイレなど非常用の備品があり、今回の事故では実際に水は飲まれていたという。スカイツリーに備え付けられていたタイプは、省スペースで設置できる“キャビネット式”防災用品だ。
キャビネット式も取り扱いつつ、洋式トイレにもなる“エレベーターチェア”を開発した、エィアンドエィティー社に何が入っているのか聞いてみた。マーケティング本部の黒石敏夫課長は「使い方は製品中央にある『非常時押す』、こちらのボタンをぐっと押し込む。そうすると蓋のロックが外れ、これを上に持ち上げて開ける」と使い方を説明。
中身は水やクッキーなどの食料品やLEDランタン、寒さをしのぐアルミブランケットや、熱中症対策として冷却バンダナも。そしてトイレグッズは吸水性ポリマー付きの袋、トイレットペーパー、消臭剤。トイレの使い方はトイレ袋をチェアーに被せ、その上から白い座面をセットする。
これでトイレは完成し、このまま用を足すことができるのだが、同社の製品の特長は「目隠しにもなるアルミブランケット」が使用できること。黒石氏は「ここ数年のトレンドになっている、女性目線での防災というのは結構言われる。女性目線で見ていくと、見られるのも嫌だし、(人が)見えるのも嫌。目隠しがあると最低限だけど『あると一安心だよね』というお声をいただいて」と語った。
国土交通省は防災キャビネットの導入を全エレベーターに推奨しているが、黒石氏によれば全国的に防災キャビネットの普及は進んでいないとして、さらなる普及を目指したいという。「首都直下地震の被害想定見直しがかけられて、最大2万台を超える『閉じ込め』に繋がる停止が起き得る。救助を待てるように検討していただきたい」(黒石氏)
(『ABEMA的ニュースショー』より)