ここ30年で「家庭内暴力」の認知件数が7倍になり、ネット上では子どもから暴力を受ける親の声があふれている。
中学生の息子を育てる高橋さん(仮名)は悩んだ末に、親へ暴力を振るう子ども達を預かり、共同生活を送るフリースクールに息子を託すことにした。当事者たちは何に苦しみ、また助けようとする人々は何を考えているのか。『ABEMA Prime』で話を聞いた。
◆小学生のころから息子が暴力、3年間悩んだ母の決断

高橋さんは40代女性で、息子のたかしくん(仮名)と2人暮らしだ。しかし小学校4年生の時から暴力行為が始まり、ゲームやテレビの時間を制限し、とがめると暴れるようになった。警察沙汰となり、児童相談所で保護されるも、保護期間が終わり家に戻ると、再度暴力をふるうようになった。
3年ほど前から始まった暴力は「『早く寝なさい』や『ゲームの課金をさせろ、させない』でキレる。家の中で暴れて(私を)殴る蹴る。夏もアザがすごくて半袖を着られない状態だった」という。その行為は日々エスカレートし、「タオルで首を絞めようとしたり、包丁を抜いて『殺してやる』などの暴言もあったりした。不安で(息子と一緒に)死んで楽になりたい気持ちもあった」のだそうだ。
暴力行為があった期間は「最初から1〜2年ほどたち、通報されて警察沙汰になった。フリースクールに入るまでは3年近い」という。「だんだんエスカレートした。小学3〜4年生の頃は、私の方が力も強かったが、だんだん力が逆転して、『自分はもっと強くなれる』となったのではないか」。
悩みを抱える一方で、「スクールカウンセラーに相談したが、話を聞く以上のことは、学校もできない。寝ていたら枕元に立ち、『殺してやるぞ』と言ってきた時もあった。この子がどうなるか不安すぎて、だったらいっそ(死を選ぶ)という方向にしか行かなくなった。家庭内なら大丈夫だが、外に包丁を持ち出せば、傷害罪や殺人になりかねない。世間様に顔向けできない気持ちだった」と語る。
日常生活においては「基本はおとなしく、小さい子にも手を差し伸べられる。家でも落ち着いている時には『お母さん』と甘えてきたが、一度スイッチが入ると暴れてしまう」状態だった。「フリースクールの前に、児童精神科にもかかったが、薬が合わずに暴れがひどくなった。ADHDとASDを併発していると言われた」。
たかしくん自身は、寮生活によって「(他人との生活は)大変で辛い事もあるが、(親以外の)人とあまり話してこなかったため、いろいろな人に関わる機会が増えた」と明かす。また、1年たって「イラつく気持ちを抑えるなど、気持ちのコントロールが少しうまくなった。冷静に考えると、本当にクソみたいな事をしていたと思えるようになった」のだそうだ。
◆親と引き離した子、その後の行動は

たかしくんが生活するフリースクールを運営する安村俊毅氏は、「僕自身も兄弟から家庭内暴力を振るわれた。25年以上前の暴力で、前歯がずれて鼻血も出たが、警察は『身内だ』と聞くと帰ってしまう。これは認知件数に入らない。だが、子どもへの虐待は法が介入すべきで、『夫婦間でも暴力は当然許されない』という社会常識の変化により、『子どもからの暴力も許されない』となり、認知件数が上がったのではないか」と考えている。
安村氏が「親子のカプセル化」と呼ぶ現象がある。親族や友人、警察など、誰にも相談しない・できない状態になると、1つ目のパターンとして「無理して向き合う(過干渉)」となる。自分一人で暴力を止めようと子どもに接近しすぎた結果、さらに親子の衝突が激化し子どもは反発。暴力が過激化する。
もう1つのパターンとして、「諦めて奴隷化する(無干渉)」があり、子どもの暴力に屈して、諦めてすべてを受け入れてしまった結果、親をねじ伏せた成功体験が暴力をさらに増長するそうだ。
そこまでになっても、なぜ警察に言わない人がいるのだろう。「1つには、自分の子どもを犯罪者にしたくない心理がある。警察に止めてほしいが、逮捕すれば前歴が付いてしまうからと我慢するケースが多い」。
そこで安村氏は「物理的に親子間を別れさせる」手段をとっている。その理由を「距離を置かないと、どうしても暴力が出るため、冷静に見つめ合える距離感づくりを重視している。親も『一緒にいたいが、いると暴力が出る』と分かっている場合がある。たかしくんも暴力を振るうことに後悔の念がある子だったため、『ぶつかるなら距離を取った方がいい』と理解してくれた」と話す。
子どもの傾向として「『暴力を振るう意味がない』と理解すると、行使しなくなる子が多い。暴力自体を楽しんでいる子も、かなりの数いる。不登校で相談を受けた子が、『母親を殴ることは悪くない。だって、あんなの人間じゃないから』と言って、初めて家庭内暴力があったと知ることもある」と説明する。
そうした状況を「裁判傍聴に行き、『人を傷つければ、当然罪に問われる』と知る」ことなどで改善していく。「僕は必ずしも“母の愛”への信仰はない。『法は誰に対しても守るもので、相手が他人でも親でも関係ない』という枠組みをメインに据えている」。
悩む親には「1回でも手が出た時点で、すぐ相談して」とアドバイスする。「家庭内暴力があると、僕たちは深夜でも必ずその日に行く。暴力があった直後に『ダメだ』と伝えに行かないと、話を聞けない」。 (『ABEMA Prime』より)