「特別養子縁組」は一般的に、子どもを救うための善意の制度と捉えられがちだが、中には養子として迎えられた家庭が「毒親」化し、過酷な経験を強いられるというケースも生まれている。「ABEMA Prime」には、そんな毒親に悩み若くして一人暮らしをせざるを得なくなった当事者が出演。善意の裏側に潜む危うさと、破綻した際のセーフティネットの欠如について、当事者と専門家の言葉から掘り下げた。
■「お前は介護のために引き取った」突きつけられた残酷な真実

まるさん(25)は、生後まもなく乳児院に預けられ、6歳の時に40代半ばの夫婦に養子として迎えられた。しかし、待ち受けていたのは幸せな家庭とはかけ離れた生活だった。
「(養子で)家庭に入るとなった時から、(養親が)急に怒るようになって人が変わった。頭を叩いたり、包丁を出してきたり。刺したりまではしないけど、脅しとして出してきた」。
さらに残酷だったのは、養親が彼女を迎え入れた目的だった。「怒られた時に怒鳴りながら『お前は介護をするために引き取った』『こんなはずじゃなかった』と言われた」。
子どもを家族として愛するためではなく、自身の将来の“労働力”として確保する。そんな歪んだ動機で始まった縁組は、まるさんが17歳の時に幕を閉じる。養親から家を追い出され、自立を強いられたのだ。17歳の少女が、頼れるあてもないまま一人暮らしを始めた。
家を追い出されたまるさんは、社会の支援からも取り残されていた。周囲からは、元いた施設に戻る選択はあったのかと問われたものの、養親に託された幼少期の記憶で、施設までたどり着くのは難しかった。
「当時まだ学生だったのもあって、施設に戻るという考えもなかった。その時点で施設の方や団体の方と全く連絡を取っていなかったので、そういった手段は全く浮かんでいなかった。家庭内で、養子ということを他人に言うことがダメだと教えられて育っていたので、誰にも頼ることはできなかった」と、学校などにも相談できず、SOSが出せない状況に追い込まれた。
■アメリカにある「社会で育てる」という視点

こうした現状に対し、近畿大学 情報学研究所 所長の夏野剛氏は、日本における親権の強さと、社会的なサポート体制の未熟さを指摘した。
「例えばアメリカとかだと、親の虐待だとわかった瞬間に親権を取り上げる。取り上げる一方で、その子どもが成人するまで社会が育てる制度がセットになっている。日本の場合、親権を剥奪することのハードルがものすごく高い。かつ剥奪した後に社会が育てる仕組みも不十分だ」。
さらに、アメリカでは年間12万件の養子縁組があることを例に出し、日本における「家庭」という縛りの強さが、悲しい状況を招くとも指摘する。
「言い方は悪いが、子どもも家庭を流動してもいいという前提に基づいて設計されている社会で育てるのがいいのでは。日本の場合は実子だろうが養子だろうが、家庭の責任をすごく重視するので、中に起こっている(トラブルなどの)ことにも児童相談所が介入できない。システムとして、もう少し軽くしていかないといけないのではないか」。
特別養子縁組の斡旋団体「ベアホープ」代表のロング朋子氏は、まるさんのケースに心を痛めるとともに、同様のケースを心配する実親たちの心にも気を配る。
「お子さんを託したお母さんたちが、この話を聞いてすごく心配されるという懸念がある。まるさんのような経験は、非常に胸が痛む。そこから我々、斡旋機関や児童相談所の職員が学ぶことは多い。ただ、この過去10年ぐらいで制度的にもかなり整備され、学ぶ場所も増えてきた。つい数カ月前も行政と民間機関の職員が集まって、まるさんの体験を伺い、我々に何ができるだろうかと検討した。制度的にも長期的にフォローを行えるように国も予算を付ける動きになっている。今のお子さんたちは、ある程度守られる環境にはある」。 (『ABEMA Prime』より)