「自分としても初めての経験ですし、保安庁としてもそうないことだと思う」そう語るのは海上保安部・潜水士の田中想汰氏だ。保安庁も前例がないという初めての体験とは。それは先月23日宮古島で起こった。海面から顔を出す黒い生き物。泳いでいたのは牛だ。
目撃したのはフェリーの乗務員。海上保安部に救助の要請が入り、救助に向かったのが田中氏だ。
カメラが捉えたのは岸からおよそ200メートル、懸命に泳ぐ田中氏の姿。その先に、牛が泳いでいる。牛は田中氏から逃げようとしたのかそれとも気が付かなかったのか、田中氏は後方から接触に成功。そして映像は次のシーンに切り替わり、牛も田中氏に身を任せているのかどこか気持ちよさそうでもあった。牛は子牛だった。
関係者によると子牛は島の外へ出荷するため、トラックからコンテナに移しかえる作業中に逃げだしたという。
命がけで救出した潜水士の田中氏に話を聞いた。「自分も聞き間違いだとは最初は思った。ただ、海で困っている命なので大小はないと思い、救助しようというスイッチは入れた」。
水難救助の場合溺れる人がパニックとなり救助する側も危険になることもあり、その対策も講じられているが相手は牛。どういう行動に出るのか想像もつかない。ある意味、ヒト以上に危険な救助だったはずだ。
田中氏は「いつ暴れるかは分からなかったので、暴れることを想定に入れて、牛との安全な距離を保って救助に当たった」と明かす。
子牛の鼻輪にはロープが繋がったままになっていたため、田中氏はロープを引っ張りながら、一緒に泳いで救出することに。最初はかなり興奮気味で、抵抗していた子牛だったが、一緒に泳いでいくうちに徐々に大人しくなっていったという。
「牛さんの方も結構スイスイと泳いでくれたので、自分としては行く道を教えただけ。海で困っている命に大小はないので、救助しなきゃいけない」(田中氏)
田中氏の命がけの救出で救われた子牛の命。子牛は、出荷のため運送会社に戻されたという。
(『ABEMA的ニュースショー』より)