15年前、震源から遠く離れた都心などでは、高層ビルを大きく揺らす「長周期地震動」が起きました。南海トラフ地震でもその脅威が指摘される中、備える動きが広がっています。揺れを半減させる最新の技術に迫ります。
「長周期地震動」とは?
東日本大震災の発生時、宮城県仙台市内は最大震度6強を記録。31階建てのタワーマンションも大きな被害を受けました。
「もうぐちゃぐちゃになっていました」
「食器棚も全部倒れて、ガラスが割れました」
マンションは耐震構造でしたが、部屋の窓ガラスが割れ、エレベーターホールの壁には亀裂が…。
震源からおよそ170キロの仙台市内を襲ったのは、小刻みに早く揺れる「短周期地震動」。マンション全体が複雑にゆがんだことでエネルギーが中層階に集中し、被害が出ました。
一方で、震源からおよそ400キロ離れた東京都心でも巨大な揺れが襲っていました。高層ビルが左右に大きく揺れているのが分かります。
その時、発生していたのは「長周期地震動」です。
この「長周期地震動」は、地震で生じる周期の長いゆっくりとした大きな揺れのこと。仙台で観測された揺れとは異なり、高層階が大きく長く揺れ、震源から遠く離れていても伝わります。
「東日本大震災の東京だと、一般的には震度5弱。上の階に行くと5強・6弱まで増幅される」
この「長周期地震動」、気象庁は4つの階級に分類。最大レベルとなる「階級4」では「立っていることができない」といいます。
1月の島根県東部を震源とする地震をはじめ、2年前の能登半島地震など、これまでに7回観測。
「長周期地震動」全体でみると2013年以降、157回観測されています。
どうなる?「長周期地震動」発生時
では「長周期地震動」発生時、室内はどのような危険があるのでしょうか。世界最大規模の防災実験施設「E−ディフェンス」。今回、特別に取材が許可されました。
高さ40メートルの実験棟があり、振動台を使ってあらゆる地震の揺れを再現できます。
この日は、実物大の病院を再現して「長周期地震動」による低層階と高層階の揺れの違いを検証します。
今回は、震度5強の揺れを加えて実験。まずは低層階です。
マネキンが小刻みに揺れているように見えます。1階ということもあり、部屋の中の大きな乱れは確認できません。
しかし、これが高層階になると、かなり乱れています。大きな音を立てて、ロッカーも崩れてしまいました。
1階の揺れとは明らかに異なり、キャスターをロックしていなかったベッドは勢いとともに外へ飛び出してしまいました。
キッチンがあった空間は倒壊して、中に入れない状況です。医療器具も倒れてしまっていて、奥にある本棚の本は出てしまっています。
「1階の揺れとしては震度5強。(高層階は)震度換算すると震度7クラスの揺れで増幅されている。(高層階は)被害が大きく出る。危険性が高いと明らかになった」
長周期地震動の“揺れ”を体感
この「長周期地震動」による高層階の揺れを実際に井澤健太朗アナウンサーが体験します。
あらゆる揺れを精密に再現できるシミュレーター。今回は、タワーマンション30階にいる想定です。
「お…おぉ!かなり揺れの幅が大きくなってきました。右に行ったり左に行ったり、前にも後ろにも、かなり身体も揺れます。これ、立つのは絶対無理ですね。これが長周期地震動ですか」
低層階の揺れ幅とは明らかに異なり、一度にくる揺れ幅が大きく高層階の室内では危険が高まります。
「汗もかいてきました。心拍数が一気に上がるようなパニックに陥るような揺れ方」
「(Q.重いものが倒れるリスクは?)倒れやすいですし、重たいものを上に置いていると、落ちるより飛んでくることも」
高層ビルの揺れが“半減”される?
15年前の震災では東京でも「長周期地震動」が観測され、地上53階建ての「新宿野村ビル」も大きく揺れました。
あの時の大きな揺れを教訓に、今では驚きの方法で対策が行われています。
建て替えは困難とされる中で、一体どのような秘密があるのでしょうか?案内されたのは屋上です。
「(屋上に)2カ所、制振装置を設置しました」
「屋上に制振装置があるんですか」
2016年、後付けで700トンの制振装置2基を設置。高層ビルの長周期地震動対策において、当時では画期的な制振装置でした。
「建物が揺れ始めると揺れた方向と逆側に重りが動き始めて、その抵抗で建物の揺れを抑える」
まさに「重り」の役割。これまで制振装置がない高層ビルは地震が起きると大きく揺れていましたが、屋上に制振装置を置くことで揺れが生じると逆の方向に700トンの重りが動き出すので、揺れが軽減される仕組みです。
「(Q.下のビル部分は揺れていない?)揺れは約25%低減。地震が終わった後、揺れが収まるまでの時間を約50%短縮」
最新の高層ビルには“画期的な技術”
さらに、最先端の高層ビルでは揺れを「半減」させる“ある画期的な技術”が導入されています。
去年9月に開業した、地上43階建ての「BLUEFRONT SHIBAURA TOWERS」。
「建物そのものが制振装置となっています」
「上層階の揺れを半減することができています」
案内されたのは、34階部分。中に入ってみました。
「(Q.どんな空間?)上層階と下層階を構造的に独立させて、免振積層ゴムなどでつないでいる」
「(Q.一つの建物だけど分かれている?)上と下が互いに揺れを打ち消し合うように動く」
上層階と下層階を構造的に独立させ、積層ゴムとオイルダンパーで連結。それぞれ打ち消し合うように揺れることで、揺れを半分以下に抑えることができます。まさに、建物自体が制振装置なのです。
「今一番心配されているのは、南海トラフの巨大地震。長周期地震動は必ず来る。そのための準備が重要になってくる」
(2026年3月11日放送分より)
















