社会

ABEMA TIMES

2026年3月14日 11:15

「最後の希望だった」代理出産で2人の娘を授かった母 「すごく幸せ」国内では事実上禁止 …問われる倫理観と求められる法整備

「最後の希望だった」代理出産で2人の娘を授かった母 「すごく幸せ」国内では事実上禁止 …問われる倫理観と求められる法整備
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 子宮や卵巣の病気など、何らかの理由で自ら妊娠・出産できない場合に、第三者の女性に子どもを産んでもらう「代理出産」。日本国内では法律による明確な禁止規定はないものの、日本産科婦人科学会が指針で認めておらず、事実上の禁止状態が続いている。こうした中、「ABEMA Prime」では、実際に海外での代理出産を経て親になった当事者、アメリカで仲介を担う専門家、そして規制を提言する産婦人科医を招き、繊細なテーマについて議論が行われた。

【映像】代理出産で生まれた2人の女の子(実際の様子)

■「すがる最後の希望だった」当事者が語る葛藤と決断

代理出産

 番組に出演した吉田さんは、2025年に東ヨーロッパのジョージアで、代理出産により2人の娘を授かった。4年にわたる不妊治療の末、腎臓の病気が発覚し、医師から「(自分に受精卵を戻せば)透析になる可能性がかなり高く、死産してしまう可能性も高い」と告げられたことがきっかけだった。

 吉田さんは「自分が(子どもが)欲しいと考えた時の最終手段として、代理出産を選んだ。すがる最後の希望だった」と振り返る。ジョージアを選択した理由は、アメリカに比べ費用が3分の1程度で済むという経済的な側面に加え、「結婚している夫婦からでしか代理出産を認めていない」という現地の法律が倫理的に整っていると感じたためだという。

 実際のプロセスでは、日本で冷凍保存していた受精卵をジョージアへ送り、マッチングした2人の代理母によって、1カ月半違いで2人の娘が誕生した。吉田さんは、出産時に病院には来たものの、代理母とは顔を合わせることはせず、生まれて1時間後には我が子を受け取った。

 現在、1歳を迎える子どもたちを育てる吉田さんは、「正直に言ってすごく幸せ。不妊治療で苦労されて子どもができたお母さんと、気持ちは何も変わらない」と語る一方で、「日本できちんとした法律なり規律がないので、個人の倫理観に全てを任せる形になってしまっていて、余計にややこしくなっている」と、法整備の遅れを指摘した。

 それでも代理出産によって、子どもを授かることができたことは素直に喜んでいる。「私のような立場の、病気で(出産を)諦めざるを得ない人間にとって、1つの希望であることは確か」とも述べた。

■拡大する市場と「搾取」を防ぐためのルール

吉田さん家族

 アメリカ・ロサンゼルスで20年以上にわたり代理出産の仲介を行うLABabyの代表・岡垣穣二氏によれば、相談件数は明らかに増えているという。以前は夫婦での相談が主だったが、最近では「男性1人の場合だと、自分の精子と卵子提供と代理出産という感じ」といったシングルからの相談も増えているのが実態だ。

 代理出産を巡っては、経済的な格差を利用した搾取に繋がるという懸念が常に付きまとう。国連や欧州議会でも、女性の体を搾取する行為として廃止や禁止を呼びかける動きがある。これに対し、岡垣氏は「搾取にならないために法律やルールがある」と主張する。

 特に論点となるのが代理母への謝礼金だ。岡垣氏は「この謝礼金は少なすぎてもダメ。その代理母にも生活がある。でも、多すぎても」と述べる。金額が高すぎると、代理母側が契約のために自身の健康状態や環境について嘘をつくリスクが高まるため、学会の監査に基づいた「ちょうどいい具合」の金額設定が必要なのだという。依頼者が支払う額は、国や地域で異なり、アメリカでは2000万円前後。ウクライナ、ジョージア、イギリスなどでは600〜1000万円ほどで、依頼できる条件についても「夫婦のみ」「金銭の授受は禁止」など、様々なパターンがある。

■専門家が指摘する「子どもの福祉」と倫理的障壁

代理出産が認められている主な国

 一方で、日本学術会議の検討メンバーとして「原則禁止」を提言した産婦人科医の久具宏司氏は、懸念すべきリスクを冷静に指摘する。その最大の理由は、生まれた子どもが十分な医療や保護を受けられない事態への危惧だ。

 「本来、依頼した夫婦は、健康な子どもを生んでもらうつもりだったのに、そうではない子どもが生まれることがある。それは『きっとあの女性が代理母になったせいだろう』と、責任を押し付けることも起こりうる」と久具氏は述べ、実際にアメリカやタイで起きた、障害を持った子どもの引き取り拒否問題を例に挙げた。

 また、欧州諸国で禁止が目立つ理由として、「女性を10カ月間(出産のために)縛り付けるのは『これは女性を搾取していることになる』という、倫理的に許せないという論調がある」と説明する。男性が提供する「精子」とは異なり、女性の「子宮」を介する出産は、身体的・時間的拘束があまりにも大きく、それが道義的な搾取にあたるという考え方だ。

 また別のケースとしては、代理母が出産後に「自分の子どもだから渡したくない」と受け渡しを拒否するトラブルも発生していることに触れた。これに対し、情報キュレーター・佐々木俊尚氏は「制度をきちんと作ってビジネス化させないようにする。引き取りの問題が起きないようにシステム化した方が、変に裏に回って闇取引などが起きないようになる」と、国内での法整備の必要性を訴えた。 (『ABEMA Prime』より)

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