社会

ABEMA TIMES

2026年3月15日 12:45

国立博物館&美術館に収入目標はアリ?経済学者「自己収入の拡大チャンス」「工夫の余地があるのは素人でもわかる」

国立博物館&美術館に収入目標はアリ?経済学者「自己収入の拡大チャンス」「工夫の余地があるのは素人でもわかる」
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 先日、Xであるハッシュタグが話題に。「#文化庁による博物館美術館潰しに反対します」。そんな抗議の声が、拡散した。

【映像】国立科学博物館の収支(詳細)

 博物館、美術館潰しとはどういうことなのか。発端は、文化庁を所管する文部科学省が、先月末に発表したある方針だった。文科省は、入場料やミュージアムショップの売り上げなどを増やして、展示事業に関わる費用の65%は、自力で稼いでほしい、という数値目標を設定。また、その自己収入額の割合が40%を下回るなど、「社会的に求められる役割を十分果たせていない」と考えられる場合は、再編の対象とする方針を示した。

 「再編」とは何を指すのか。松本文部科学大臣は、目標未達成でも、廃止・統合するという趣旨ではないとし、文化庁も取材に対し、「閉館という言葉はどこにも書いていない」と回答。しかし、財務省からは「閉館の可能性はないわけではない」との声も。『ABEMA Prime』では、今回の文化庁の収入目標の設定の是非について考えた。

■ 収益目標の是非

土居丈朗氏

 収益目標も必要だと考える、財政学専門の慶応大学教授、土居丈朗氏は「博物館や美術館を今後もサステナブルにするために自己収入を増やしましょうという話がそもそもの発端だ。財務省から『日本の博物館はもっと自己収入を拡大できるチャンスがあるのに、それをしていないのではないか?』と問題提起があった」と経緯を説明した。

 また、ルーブル美術館が入場料収入で運営費の半分を賄っている例を挙げ、「潰そうと言っているわけではない」と強調した。

 これに対し、収益目標に反対の美術ジャーナリスト、新川隆氏は「似たような施設として国立劇場があるが、2023年秋に休館し、建て替えの入札がうまくいかず計画が大幅に遅れている。もし国立の美術館や博物館が閉館した際、このような長期の休館を強いられてしまうのではないか」。

 さらに「金儲けが第一の目的であれば民間のエンタメ産業に任せておけば済む話だ」と、文化を守る施設のあり方に疑問を呈した。

■ 入場料の引き上げと「二重価格」の議論

新川隆氏

 現在、国立科学博物館の展示費用は約9億円に対し、入場料等の収入が7.1億円で自己収入比率は78パーセントに達している。一方で、地方の施設や常設展の収益性は課題となっている。

 土居氏は「日本の入館料、特に常設展は安い。また、これまでは報道機関などの主催者に場所を貸す企画展に依存し、場所代を十分に稼げていなかった。企画展と常設展を一体化した入場料設定などの工夫の余地はある」と指摘。

 さらに、文化庁も提案している「二重価格」についても言及し、「国民は税金を払っているが、外国人は払っていない。その分を入館料で支払っていただく形だ」との考えを示した。

 新川氏は価格設定の難しさを説く。「値段を上げることによって今賑わっている状態が維持できるのか。値上げしすぎてお客さんが来なくなってしまうのが一番都合が悪い」。二重価格の根拠が翻訳費用などにあるとする点については「バリアフリーに費用がかかるから障害者の料金を倍にするのかと言えば、誰も納得しない」と主張した。

■ 「文化の維持」か「経営の改善」か

 土居氏は、経営側の努力不足について、「東京国立博物館の館長は歴代、文部科学事務次官の経験者だ。きっちりとその手腕を発揮していただきたい。工夫の余地があるのは素人目に見てもわかるのだから、ちゃんと頑張ってほしい」と語った。

 新川氏も、収益化への工夫自体は否定していない。「これまでは公金に依存しすぎていた。グッズ販売などの工夫の余地はたくさんある」としながらも、「目標設定が収益化ばかりになってしまうのが怖い。結局はバランスだ」。

 土居氏は、自己収入を増やすメリットとして「先行投資」を挙げた。「自己収入があれば、収蔵庫の修繕や新たなコレクションの購入のために先行投資ができる。将来の価値を伝えていくためにも、この目標を達成していただくことはできる」と、文化振興と収益確保の両立に期待を寄せた。

(『ABEMA Prime』より)

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