社会

ABEMA TIMES

2026年3月17日 12:00

「万博EVバスの墓場」補助金40億円投入も放置…なぜ採用?「中国では販売できない安全性」「バスの形をして走ればいいレベル」ジャーナリストが解説

「万博EVバスの墓場」補助金40億円投入も放置…なぜ採用?「中国では販売できない安全性」「バスの形をして走ればいいレベル」ジャーナリストが解説
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 万博会場となった夢洲から約17キロ離れた、大阪市中央区にある森ノ宮に「万博の墓場」と言われる光景がある。

【映像】EVバス、ハンドル操作不能→激突の瞬間(実際の様子)

 目の前に広がるのは、万博で来場者を運んでいたEVバス。万博後は、市内を走るモビリティーバスとして期待されていたが、それも実現されることなく、120台以上が置かれている。一体何があったのか。

 これらのEVバスは、万博開催を機に、大阪メトロが導入し、その後も運用する計画だった。大阪メトロの担当者は取材に対し、「万博閉幕後に国土交通省がEVモーターズ・ジャパンの立入検査を実施したこと等を受け、同社のEVバスの安全性に対する不安が発生したことから、当社では路線バス等への転用を行わず、お客さまの安全・安心を最優先にするため、これらのバスを走行させないことといたしました」とコメントした。

 EVモーターズ・ジャパンとは2019年に設立され、福岡県北九州市に本社を置くメーカー。大阪メトロのバスもすべて、この会社から導入したものだ。

 しかし、ハンドル操作のトラブルやブレーキ系統の不具合などが相次ぎ、2025年10月、国交省の立ち入り検査を受けている。2026年2月には創業者である佐藤裕之社長が引責辞任する事態に発展したが、EVバスはその間も動かず、ずっと駐車場に置かれたままだ。

 この問題を追及する杉田忠裕大阪市議(公明党)は、「1月からまず150台の中で6台分を点検に出しているという。3月になってもまだその6台の点検が終わってない。6台で3カ月だから、4年ぐらいかかる。ずっと置きっぱなしだ」と語る。

 杉田議員は、EVバスをめぐるこの問題は、車体の不具合だけに収まらず、不透明な部分も多いと指摘する。「なぜ、このバスをEVモーターズ・ジャパンから買ったのか。どういう契約を交わして、どういう経緯でこの会社に頼んだのか。市民にとってマイナスだ。見て見ぬふりはできない」。

 EVバスの購入費用は、総額75億1500万円。うち国から38億7000万円、大阪府・市から4億8000万円の補助金が出ており、つまり半分以上、税金が投入されていることとなる。

 大阪市の経済委員会で、杉田議員が担当職員に確認すると、「特別点検の結果により安全性が確保できないと判定されたバスについては、EVモーターズ・ジャパンに返品するとともに、購入代金の返還を求めていくことを検討していると、大阪メトロから聞いている」とのことだった。

 なぜこのような事態になったのか。自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は、製造面・安全面がともに追いつかない状況で、EVバス導入ありきで進められた結果だと指摘する。「電動自動車の分野において日本は、アメリカと中国に後れをとっているのが実情だ。しかもパワーが必要な電動バスとなると、日本の大手メーカーですら、まだまだの状況だった。万博ビジネスの公算が大きい」。

 EVモーターズ・ジャパンは2019年、大手メーカーや投資ファンドなどの出資で設立。設立3年目の2022年には、那覇バス(沖縄)と伊予鉄(愛媛)に計3台のEVバスを納車した。そして万博開催の2年前となる2023年5月、万博での運行のため100台を大阪メトロに納車することを発表。最終的にEVモーターズ・ジャパンは、万博で使用した150台をあわせ、2年間で300台以上のセールスを記録した。

 加藤氏によれば当時、国内には万博用に100台以上のEVバスを短期間で供給できるメーカーが存在しなかったそうだ。

 しかし当時の西村康稔経産大臣は、国産にこだわったという。西村氏も2023年2月時点で試乗を行なっている。西村氏は当時を「大阪のバス会社が中国製EVバスの導入を進めていたことに危機感を持ち、日本企業製のバスの導入を奨励しました」と振り返っていた(2025年4月のX投稿より)。

 こうして選ばれたのがEVモーターズ・ジャパンだった。同社は電気自動車の販売やレンタル、メンテナンスなどを手がけ、中国のEVメーカーに車両の製造を委託し輸入販売。さらには車体部分を輸入し、日本で完成させる取り組みも始めていた。

 一部ネットなどでは「中国製で国産ではない」と問題視されたが、通常、車体部品は中国でも、国内で組み立てられた車は「国産車」として登録される。

 問題は、その中身だ。「EV業界では日本の先をゆく中国。“中国製品だから悪い”とはならないが、輸入元であるウィズダムという中国メーカーは、EVモーターズ・ジャパンが設立してすぐに設立された新興企業だ。製品に問題があったのは否めない」(加藤氏)

 2025年4月、福岡県筑後市でスクールバスとして導入されたEVマイクロバス4台に、交差点で突然止まる、ブレーキが利かないなど、重大事故につながりかねない不具合が発生。2週間後には安全の確保から使用停止された。さらに万博開催中も、走行中停止、ドア不具合、ブレーキ系トラブルなどの報告が相次いだ。そして9月1日、大阪市を走る車両が中央分離帯に接触した。

 万博でEVバスを運転していたドライバーAさんは「『この(ブレーキ)ホース出ていていいのとか、こんな剥き出しでいいの』という部分は、日本メーカーのバスではあまりないことかとは思うんですけど…。石が回転で跳ねて当たり、切れることは起こると思う」と話す。

 Aさんによると、車体の設計よりも、EVと一般的なディーゼルエンジンのバスの違いがあまりにも大きいという。「EVは加速がとりあえずいい。トルクが強いので。アクセルを踏みすぎると、車内でお客様が転倒してしまうぐらいの勢いの力はある。もう全然加速が違う。アクセル・ブレーキは本当に機敏。ブレーキは、私たちが『こうしたら減速するであろう』というのと、コンピューターが減速していこうとするのと、ちょっとした相違が起こってくる。感覚的にここまでで良い具合に止めようと思っても、なかなかその通りにいかない。そういう癖があるのも事実だ」。

 しかし、EV車ならソフトウェアで挙動を調整できるはずだが、現実はそうではなかった。「メンテナンスの方も日本語があまり無理な方が多かった。だから私もスマホ翻訳を使って、『ちょっとここおかしいんだけど』と直接言うこともあった。『ここ直しておいて』と言って『わかった』が、その意味のわかったなのか何なのか。中国語が話せないながらのコミュニケーションをしているつもりでも、うまくできない部分もあった」。

 問題はまだある。加藤氏は言う。「大手のBYDでさえ500台売るのに10年かかったのに、2年で300台を売り上げるには、それなりのわけがある」。

 万博を前に、EVモーターズ・ジャパンからEVバスを購入する際、国や地方行政の補助金が、1台につき最大3000万円以上設けられていた。つまり、導入する側にとっては導入しやすく、売る側にとっても絶好のチャンスだったと言える。

 補助金と今回の問題は関係があるのだろうか。一連の問題を受け、EVモーターズ・ジャパンは中間報告として声明を発表。ブレーキホースの不具合に対する改善措置や、今後の「完全な国内生産」体制の展望などが記載されている。しかしこのリリースに対し、加藤氏は「国内生産への展望?今更?」とXに投稿した。

 一連の問題について、EVモーターズ・ジャパンに取材を打診したところ、「継続的に社内で検討し、随時、お客様と連携を取りながら、進めさせていただいております。お客様とのやり取りの有無や内容については公表しておりませんので、回答致しかねます」との返答を得た。

 万博が終わったあと、Aさんは止まったEVバスを見に行ったという。「あの時は大阪駅近くの今いっぱい走っているバスが、あのバスになるんだと夢を見ていた。万博の成功を、私たちが携わっていたバスで“あかんかったやん”になってほしくもない。あれだけの量を止めてしまうと。結果こうなったことがね…非常に残念だなというところだ」。

 加藤氏は“墓場”にあるEVバスの現状について、「全部で150台だが、取材時は135台程度あった。残りは、自動運転の実証実験に使えるかどうかの最終点検と、5000キロや2万キロのテストをしている。今先行して6台が点検中だが、その間にもいろいろな欠陥が見つかっている」と説明する。

 具体的には「自動運転の実証実験で使う予定のウィズダムの小型で、2月半ばにテストコースで試乗している時、ラテラルロッドという重要な部品が折れた。普通は折れるようなテストコースでも、折れやすい部品でもなく、結構大変なリコールレベルの不具合だ。同じ型の部品を使っているバスは全国で20台あるが、対象となるバス会社に対してだけ“緊急点検のお願い”という通達を出している。とにかく不具合がたくさんあるので、絶対に使ってはいけない」という。

 加藤氏によると、「遅くとも2020年11月にはウィズダムのバスを万博に入れると決まっていたという情報もある」として、「なぜそこになったのかには不思議なところがたくさんあるが、博覧会協会としても、万博なので日本の最新のEV技術を世界にアピールしたい思いがあり、国産にしたかったのだろう」と推測する。

 競合と比較して「BYDという日本でも非常に人気があるEVがあるが、2015年から日本の路線バスへの導入実績があり、信頼もある世界トップメーカーだ。ここのバスで決まっていたが、大阪シティバスがBYDに決定して、親会社である大阪メトロに『BYDで大阪万博をやりたい』と稟議を出すと却下され、EVモーターズ・ジャパンのEVバスも検討して欲しいと言われた。そこからBYDを使う話は一切なくなり、もうEVモーターズ・ジャパンに決まってしまった」と内実を明かす。

 選定理由としては「日本で組み立てるということが一番だ。全然日本製じゃない、国産でも何でもない。今まで1台も日本の工場では組み立てられていない。国産、国産と言いながら、言い方は悪いがウソをついて、大臣も国交省も大阪メトロもみんな騙されたと言ってもいいのではないか。国産だというので西村大臣も積極的に導入を進めたと自ら書かれているから。そういう経緯があってこのバスに決まった」とする。

 どのような会社なのか。「北九州市若松区にある新しい会社で、非常に立派な100億円かけた工場や本社がある。実際は国産ではなく中国の3つの会社に製造を委託していた。これがまだ安ければいいが、決して安いバスではない。しかし非常に安いコストで作らせて、“ギリギリバスの形をして走れればいい”というレベルだ」。

 こうして製造されたバスは「中国では販売ができない。中国で販売するためのCCC認証という安全認証も取っていない。中国当局から輸出用だったら製造していいと許可が出ている。だから輸出用しか認められない。そういうバスが日本に入ってきて、高い値段で売られている。なぜ高いかというと、値段を高くすると補助金が高くなるから。本当にめちゃくちゃだ。ギリギリのコストで作らせて、日本では補助金目当てで高い値段で売る、そして、わずか2年間で300台という異常な数になった」という。

 その結果、「ありとあらゆる考えられないトラブルがたくさん出ている。例えば走行中にブレーキチャンバーというブレーキの部品が一式組み立ったものがあるが、それが脱落するとか那覇バスや伊予鉄で実際にあった。原因は溶接不足で、この溶接も中国の工場でやっている。そう言った部品や、モーターフランジ、サスペンションナックルなど、人間で言うと足首の骨が折れるような、そういう大事な部品が走行中に破断して落ちる。それからインバーターから出火する。ブレーキホースもたくさんトラブルが出ている。あとは電気自動車特有の回生ブレーキというものがあり、ガソリン車で言うとエンジンブレーキのようなものだが、これも調子が悪いものがたくさんある。これをオフにしているとフットブレーキが効かなくなり、暴走するトラブルもたくさん出ている。これは絶対に危ない。大阪メトロは使わない決断、考え方としてはそちらに行っていると思うが、大阪府民を守る、安全を第一に考えていると思う。こんな危険なバスは絶対に使ってはダメだ」と忠告する。

 また、「実は東京都内で人身事故が起こっていた」とも明かす。「しかも全然報道されていない。先日の東京都議会でも質疑があったが、都内のコミュニティバスで、ブレーキが効かずに暴走してしまった。必死で止めて、車に衝突する寸前に何とか止まったが、急ブレーキの衝撃で乗客が座席から投げ出されて、3カ月の重傷を負ってしまった。国交省に確認すると、把握して調査中だとのことだった」。

 今後については「この会社は、3月27日に定時株主総会を予定していたが、開けなくなっている。会社自体の存続が危うい状況で、一体300台以上のバスをどう保証するのか。まだ現在も新たに導入を検討している自治体もある。信じられないが、それがなぜかという理由もだんだんわかってきてはいる。不具合が非常に多く、しかもそれを隠そうとしているような会社だ。監督するところは国交省なのだろうが、人命第一で。公共交通で乗る人はバスを選べない。EVモーターズ・ジャパンのバスだから乗らないというわけにはいかない。とにかく全部使用停止にして、本当に重要な部分を点検してほしい」と願う。

 車検はどうなのか。「日本の保安基準を満たして、ナンバーが付く。その審査は国交省の自動車整備課かNALTEC(自動車技術総合機構)が行うが、非常に厳しいと言われていた審査だが、当時の安全認証をやった方々にたくさん取材をしているが、一言で言うとかなり適当にやっている。国交省にも取材したが、全部並行輸入で入っている。そもそも公共交通のバスが並行輸入で、しかも一台一台の審査で300台以上が入ってくるというところがちょっと不思議。UN Rという国連が認証したテストレポートが必要だが、これにも安全性を満たしていない項目もある。それをなぜか国交省が認めたのは、当時万博バスとして内定していたからだ」。

 このような背景から、「万博で採用されるバスだから審査が間に合わなければ大変なことになるという空気や、国交省も経産省も日本で組み立てるバスだという認識があったので、浮かれていたというと変だが、今は中国から輸入しているがやがて国産になる、そういうムードの中で審査が緩くなったのではないか」と予想する。

 純粋な「日本製」のEVバスは難しいのだろうか。「いすゞが2024年5月に『エルガEV』という電気バスを発売した。当初はいすゞや日野自動車に『万博に出せないか』と打診もあったが、いすゞは『100台以上出すのは無理』と断った。何とか間に合って万博では29台使われ、期待はされていたが、とても真面目にしっかり作ってはいるものの実用面で使い勝手があまり良くないという評判で、航続距離も非常に短い。今改良されていると聞いているので、これから期待したい」。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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