社会

ABEMA TIMES

2026年3月22日 10:00

死刑囚の「24時間監視」は人権侵害か、当然の報いか 根底には「6カ月」の期限を超えた“長期拘置”の問題も

死刑囚の「24時間監視」は人権侵害か、当然の報いか 根底には「6カ月」の期限を超えた“長期拘置”の問題も
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 プライバシー権や人格権をめぐり、司法のあり方を問う議論が巻き起こっている。議論の対象となっているのは、死刑判決が確定し収容されている「死刑囚」だ。発端は、大阪拘置所に収容されている女性死刑囚に対し、大阪弁護士会が出した改善勧告。この女性は2002年から20年以上にわたり、排泄や着替えの様子まで常時映し出される「24時間死角のないカメラ」付きの居室に収容され続けてきた。これに対し弁護士会は、監視を必要とする具体的な事情が認められない限り収容を中止すべきだと勧告。このニュースを契機に「ABEMA Prime」では、異なる立場を取る弁護士や論客を交え、死刑囚の人権と日本の司法制度が抱える歪みについて議論が交わされた。

【映像】監視カメラがついている実際の刑務所

■24時間監視の実態と法廷の判断

女性死刑囚 24時間監視に改善勧告

 現在、死刑囚の24時間監視は国際的にも注視されている。国連の自由権規約委員会は2022年に「厳格に必要不可欠な場合に限り」ビデオ監視を行うべきとの所見を出した。また、国内の裁判例でも、東京拘置所で14年間監視された男性死刑囚の訴えに対し、東京地裁が「4年分は違法」と認め、その判決が確定したケースも存在する。しかし、大阪拘置所側は「対応に違法または不当な点は認められなかったものと考えている」との立場を崩していない。

 異なる立場を取る2人の弁護士の意見は、真っ向からぶつかった。監獄人権センター事務局長の大野鉄平弁護士は、死刑囚への過度な制約に警鐘を鳴らす。「死刑囚の処遇・拘置の条件は、拘置がそもそも執行の前段階の手続きならば、執行を確保するための条件であるべき。そういう意味では、それ以上の権利制約を科す根拠はない。ただし今の法律はそういう立場を取らず、未決と同程度ではなく、未決以上の厳しい制限を課している」と述べ、現在の処遇が制度的な矛盾を孕んでいると指摘した。

 これに対し、犯罪被害者支援を行う高橋正人弁護士は、被害者の「権利」という観点から真っ向から反論を展開した。「被害者には、国家に死刑を執行して制裁を代行してもらう権利がある。つまり本当であれば、ご遺族は自分で仇討ちをしたい、仕返しをしたい、復讐をしたい。しかし、そんなことを認めたら社会の秩序が乱れるので近代法はそれを禁止し、国家にその制裁を代行してもらっている。その代行してもらう権利を侵害してるのが、今の6カ月以上も経って執行しない、法務大臣に最大の責任がある」と語り、迅速に執行されないこと自体が被害者への人権侵害であると主張した。

 さらに高橋氏は、死刑囚が受けているとされる不利益についても「そもそも正座していられるだけ幸せ。殺された方は正座もできない。壁に向かって座ることもできない、トイレにも行けない」と述べ、死刑囚が生きていること自体が「恩恵だと思わないと困る」と突き放した。

■放置される「6カ月以内の執行」という法的矛盾

死刑執行 法規定と現状

 議論が深まるにつれ、出演者たちが共通して注目したのは、刑事訴訟法475条が定める「判決確定から6カ月以内の執行」という規定の形骸化だ。現実には死刑確定者の平均収容期間は16年5カ月に達しており、中には55年以上も収容されている者もいる。

 衆議院議員・門ひろこ氏は、運用実態について強い疑問を呈した。「実際に法律が形骸化していることについては、私も変だと思う。運用で裁量の余地があるから現場で揉めてしまう。私は行政官を20年してきたが『かわいそうという気持ちで行政をするな』と言われてきた」と分析した。門氏は、法律に明文規定があるにもかかわらず、運用の「ゆるさ」が生じている現状を危惧している。

 なぜ、法律に定めがありながら執行は進まないのか。大野氏は現場の切実な状況を代弁する。「死刑の執行にも、執行官にもかなり負担がかかる。一定の期間を過ぎたらサクサクと処刑するようなことは、普通の人間ではなかなかできることではない。それに加えて、この事件は本当に冤罪の可能性ないのかと真剣に考え始めた時に、人間の判断は揺らいでいく」と述べ、人の命を奪う判断の重さと、冤罪への懸念が執行を鈍らせている可能性を指摘した。

 議論の終盤においても、両者の主張が重なることはなかった。高橋氏は「その6カ月以上生存している、それを認めることを前提とした議論ですから、もうスタートラインが違っている」と述べ、長期間の収容を前提とした人権議論そのものを否定した。一方で大野氏は「犯罪被害者も死刑囚も全て人権は保障されるべきだ」と述べた。

 門氏は「基本的人権は、いかなる人であってもこれは保障されるべきものではある。どんな罪を犯した人であったとしても、その憎まれるべき人であったとしても、人権は保障されるのが近代国家の原則。ここは切り離して考えなくてはいけない問題だ」と語り、死刑制度の賛否とは別に、不必要な点があれば改善すべきとの見解を示した。 (『ABEMA Prime』より)

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