将棋の第51期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第5局が3月29日、鳥取市の「有隣荘」で指され、藤井聡太棋王(竜王、名人、王位、棋聖、王将、23)が挑戦者の増田康宏八段(28)に77手で勝利し、シリーズ成績3勝2敗でタイトル防衛、4連覇を達成した。直近の王将戦でも絶体絶命のピンチからタイトルを守り抜いており、見事な「ダブル逆転防衛」という偉業を成し遂げた。
運命の最終局は、対局前の振り駒の結果、藤井棋王の先手番で幕を開けた。絶対に負けられない大一番で、後手となった増田八段はとっておきの勝負手として「一手損角換わり」を志向。盤上に緊張感が走ったが、百戦錬磨の藤井棋王は全く動じることはなかった。的確な大局観で早々にペースを握ると、持ち前の圧倒的な勝負強さを見せつけて着実にリードを拡大。挑戦者の渾身の策を堂々と打ち破り、勝利を手にした。
今期の藤井棋王は、まさに“カド番からの帰還”を体現した。本局の直前、3月25・26日に行われた王将戦七番勝負では、1勝3敗と後がない状況から怒涛の3連勝で劇的な逆転防衛を飾ったばかり。そしてこの棋王戦でも、第3局を終えて1勝2敗と増田八段に王手をかけられながらも、第4局、運命の最終第5局と連勝を収め、フルセットの死闘を制した。二つのタイトル戦で同時にカド番に追い込まれる「ダブル失冠危機」から一転、並外れた精神力と終盤力で「ダブル逆転防衛」を達成し、改めて絶対王者としての底力を見せつけた。
4連覇を果たした藤井棋王は「全体としてなかなか主導権を握る展開にできない将棋が多かった。そのあたりに増田八段の強さ感じた。(カド番に)追い込まれてから開き直って指すことができた。大変なシリーズで、途中防衛が難しいかなと感じることもあったが、防衛できたことは素直に嬉しく思う」とシリーズを総括。2025年度の公式戦を終え、「連敗してしまうことが何回かあり、波が出てしまった。内容的に思わしくない将棋も多かった。全体的に内容を引き上げていかないといけないと感じている」と更なる前進を誓っていた。
本局は、藤井棋王にとって2025年度の指し納めとなる対局でもあった。振り返れば、激動の一年だったと言える。八冠奪還を目標に掲げてスタートしたものの、叡王戦ではまさかの予選敗退。さらに王座戦ではタイトルを失冠するなど、苦しい戦いが続く時期もあった。
しかし、若き王者は決して折れることはなかった。最高峰の舞台である竜王戦七番勝負では見事に防衛を果たし、5連覇を達成して「永世竜王」の資格を獲得。それでも年度末の王将戦・棋王戦で同時にカド番へ追い込まれた際には、一部で「不調説」すら囁かれた。 p.p1 {margin: 0.0px 0.0px 0.0px 0.0px; font: 13.0px ’Hiragino Sans’} span.s1 {font: 13.0px ’Helvetica Neue’} だが、そんな周囲の喧騒を一蹴するかのように鮮やかなダブル大逆転劇を演じ、ラストスパートで5連勝。終わってみれば年度成績42勝13敗の勝率.764と最高の結果で今年度を締めくくった。
数々の試練を乗り越え、さらに凄みを増した絶対王者。休む間もなく、4月8日からは新たな年度の幕開けとして、糸谷哲郎八段を挑戦者に迎える第84期名人戦七番勝負が開幕する。2026年度、藤井聡太はどのような盤上の物語を見せてくれるのか。日本中がその一手に注目している。
◆藤井 聡太(ふじい・そうた) 2002年7月19日、愛知県瀬戸市出身。中学2年生時の2016年10月に史上最年少で四段昇段、史上5人目の中学生棋士となる。2020年度の第91期棋聖戦でタイトル初挑戦、17歳11カ月で最年少タイトルホルダーとなった。以降獲得と防衛を重ねて、竜王5期、名人3期、叡王3期、王位6期、王座2期、棋聖6期、棋王4期、王将5期、の通算34期。永世竜王、永世王位、永世棋聖の資格保持者。棋戦優勝は14回。2023年10月には第71期王座戦五番勝負を制し、前人未踏の「八冠独占」を達成した。現在保持しているタイトル数は6冠。通算成績は446勝96敗、勝率は.823。趣味は鉄道、チェス。 (ABEMA/将棋チャンネルより)