冤罪(えんざい)被害者の救済を図る「再審制度」の見直し議論が進む中、改正案に異論の声が上がっている。何が問題なのか。
“開かずの扉”の現行制度
再審制度を巡っては、おととし9月にいわゆる「袴田事件」で、袴田巌さん(当時88)に再審無罪判決が出ている。ただ、死刑判決から44年、事件発生からは58年もかかったことに、現行制度の問題点が指摘されていた。
そうしたことから、法務大臣の諮問機関である法制審議会は、去年4月に再審制度見直しに向けた議論を開始。今年2月、法務大臣に答申。法改正に向けた動きが進んでいる。
見直しが議論されている再審制度は、冤罪被害者を救済する“最終手段”とも呼ばれている。現行制度で再審判決が出るまでの流れは、次のようになっている。
これを受けて裁判所は、非公開の場で「再審請求審」という裁判をやり直すかどうかの裁判を行う。それが認められると、初めて再審公判、再審判決へと移っていく。
ただ、これまで再審開始決定まで進んだ例は少なく、再審制度自体が“開かずの扉”などと言われている。
なぜ“開かずの扉”なのか。現行制度の課題として、2つの大きなポイントが指摘されている。
まず、証拠を開示させるハードルが高い点だ。再審請求審では、検察に証拠開示を義務付ける明確なルールがなく、仮に被告に有利な証拠を検察が持っていても、検察は提出する必要がない。
そしてもう一つは、再審開始が決定したとしても検察が「待った」をかけられることだ。検察は不服申し立て(抗告)でき、再審を開始するか最高裁まで争うと、「袴田事件」のように裁判のやり直し開始までに膨大な時間がかかることになる。
ではこの2つのポイントについて、どう見直されるのか。法制審議会は2月12日、再審制度見直しに向けた要綱を平口洋法務大臣に答申。今国会に提出される見込みとなっている。
その中身について、「証拠開示」については裁判所の判断で、検察に証拠開示を命じる制度などを新たに設けるとしている。ただし、“再審の請求の理由に関連すると認められる証拠について”という条件付きで、開示範囲が限定的との批判が出ている。
そして、「検察官の不服申し立て」については、禁止すべきとの意見も出ていたが採用されなかった。検察側は「確定判決の法的安定性を害する」と主張。つまり、再審が乱用されると法的秩序が乱されるという考えを示してきた。
自民党内でも議論が紛糾
再審制度の見直しで、証拠の開示とともに大きな焦点となっているのが「検察官の不服申し立て」だ。
先月25日、再審制度見直しを議論する自民党の部会が開かれ、無罪となった袴田巌さんの姉・袴田ひで子さんから意見を聞いた。ひで子さんは部会後の取材に対しこのように話した。
再審開始決定までの長期化の要因になっているとして、検察官の不服申し立ての禁止を特に強く訴えた。
「不十分」との指摘もある再審制度の見直し案だが、今の国会に法案が提出される見込みだ。そのスケジュールを見ていく。
2月に法制審議会が見直し案を答申して以降、法案の国会提出に向けた動きが進んでいる。
先月24日から複数回、自民党の司法制度調査会と法務部会が合同会議を開いたが、見直し案では「検察官の不服申し立て」を禁止しないことなどに党内でも異論の声が上がり、議論が紛糾。通常1時間程度で終わる部会が、2時間半〜3時間を超える事態となった。
再審制度のあり方を検討する超党派議連の会長、自民党・柴山昌彦議員も、先月30日に「拙速に改正手続きを進めてはならない」と述べている。そのため本来であれば、自民党内の手続きと閣議決定を経て、政府は今月7日の法案提出を目指していたが、その見通しが立たない状況になっている。
(2026年4月3日放送分より)




