イラン攻撃や関税措置などトランプ大統領の行動が世界の混乱を招く中、アメリカでは今、共和党、民主党に続く第三党として“ある党”が台頭している。さらに アルゼンチンでも、同じ思想を持つ大統領が誕生し、大きな話題となった。それが「リバタリアン」だ。
彼らが掲げるのは、徹底した自由至上主義。一体、どういう考えを持つ人たちなのか。日本におけるリバタリアン研究の第一人者で、経済学者の蔵研也氏は「出来るだけ小さな政府を求めている。医療や福祉など全てを民営化して 政府の干渉は出来るだけ少なくするという自由が大事。それがリバタリアンだ」と語る。
政府が担うのは外交、国防、治安のみ。それ以外、社会保障、教育などのサービスは民間に任せれば、税金も年金もゼロ。自分に必要なサービスを自分で選べ、もっと自由になる。この思想にネットでは「福祉や社会保障のサービスはどうなるの?」「民間任せで競争や原理主義が加速しない?」「逆に格差が広がるのでは?」など疑問の声が続出している。
『ABEMA Prime』では、リバタリアンの当事者に話を聞いた。
■リバタリアンの視点

リバタリアンの思想を日本に広めるべく活動している蔵氏は、「例えば財務省のホームページを見ると、国民負担率は現在大体50%程度だ。500万円稼いだら250万円は国が税金として取り、一部は再分配するが多くは公務員の給料になる制度だ。自分のお金が取られているだけではなく、さらに自分が望まないところにまで勝手に投入されている。兵器の場合、人殺しのために使われている」との考えを語る。
また、民主主義の手続きに従っていることは認めつつも、「そういうことをする必要はないのではないか。余計なことなのではないかと考え直してみる。例えば社会保障制度は、人はいつか年を取るのだから自分で用意すればいい。なぜ若い人からお金を取って、それを今の高齢者にばらまくのか。今の若い人には責任がないにもかかわらず強制的に取られている。これはあまりにも理不尽ではないか」と主張した。
蔵氏の教え子で、政治関係への道を模索している田中氏は、「我々若者に重くのしかかってくる税金や規制の多さ、現役世代に過度の負担を強いている社会保険料の高さに対して、やはり疑問に思っている」とコメントした。
■なぜリバタリアンは選挙で勝てないのか
前参議院議員の音喜多駿氏は、リバタリアンについて、「私は小さな政府主義者で、できる限り政府の機能は小さい方がいいと思っている。年金などはほぼ自己責任で積み立てていって、最悪の場合は生活保護があるのだから。取って配り直すぐらいなら最初から取らないでほしいと思っている人は一定数いる。ただ、日本ではまだまだマイノリティーで、選挙をやったらやはり勝てない。アメリカですら国家の予算は膨らみ続け、機能は拡張している。だが、やりすぎではないかという人が一定数いないと歯止めがかからなくなるため、非常に重要な思想の1つだ」と話す。
リバタリアンの主張が通りにくい理由について、蔵氏は「1つの問題は我々の人口構成にある。戦後の団塊の世代は280万人生まれているが、昨年は65万人程度だ。どうしても有権者は高齢者が圧倒的になってしまい、収めてきた権利として年金を欲しがる。今さら『自民党は60年間嘘をつき続けてきました』とは言えないし、70歳の人に『明日からは0円で生きてください』と言うのは社会契約として成り立たない。現実的な有権者の選択としては、現状の大きな政府、福祉国家を維持せざるを得ない」との見方を示した。
参議院議員で元明石市長の泉房穂氏は、「本来、国家というものは最低限からスタートして、夜警国家的に国の安全を守るあたりがベースであったが、どんどん肥大化してきた。この20、30年で3割程度の負担が今や5割だ。だが、負担に見合うサービスが政府から来ているかというと落差が激しい。私は小さな政府か大きな政府かよりも、納得できる政府、すなわち負担している部分が有効に使われているという納得があれば、小さかろうが大きかろうが納得し得られるのではないか。お金の使い道を見つめ直す必要があるという点では一致する」と述べた。
■「突拍子もないことを言う常識のない奴だと思われてしまう」
規制の問題について、蔵氏はウーバー(Uber)が日本で使えない現状を挙げ、「あらゆる官僚規制が行き渡っているせいで、田舎の交通弱者が困っている。こうした規制が、先進国では考えられないような長い停滞を招いている。我々自身が自分たちの首を絞めて窒息させてしまっている」と指摘。
元官僚の武井亜樹氏は「官僚の中から自発的に何かを変えるのはめちゃくちゃ難しい。変革がめちゃくちゃ難しい中で、リバタリアンの話を聞くと、個々人の能力は必ずしも高いわけではないから必ずあぶれる人が出てくる。そこで政府がいらないというのは違うのではないか」との疑問を呈した。
リバタリアンが「極端な思想」と誤解される現状について、蔵氏は「突拍子もないことを言う常識のない奴だと思われてしまう。だが、社会保障料を引き下げるところから始めようということだ。我々の社会はある程度縮む必要があることを直視し、一つひとつの事業を見直すべきだ。役人は予算があれば消化しなければならないというロジックで動いているが、それが我々の生活を苦しめている。私が主催している団体は『自由主義研究所』という。リバタリアンと言うと、この人おかしいのではないかという感じになってしまうからだ」とした。
(『ABEMA Prime』より)