名字シリーズ第5弾です。今回は『やまざき』『やまさき』のように、「濁る」「濁らない」の読み方の違いに注目。他にも、身近な名字に隠された由来や歴史を紹介します。
自然との距離が見える由来
このコーナーでは、過去4回にわたって、日本の名字ランキング20位までのルーツや歴史を紹介してきました。まだまだある身近な名字。今回はランキング30位までの、そのルーツを紹介します。
日本人最多名字「佐藤」原点の武将は? 2位「鈴木」和歌山発祥【グッド!いちおし】
日本人の名字のヒミツ大解剖 天皇家に名字がない理由&佐藤・鈴木がツートップになった理由は?
山田さんが全国にいる理由は? 日本人の名字ルーツ&ナゾ追跡【グッド!いちおし】
難読名字「奴留湯」「寿松木」読める? 由来は? 名字企画第4弾【グッド!いちおし】
「30位まではやはり、おなじみの名字が多いですね」
「日本人の名字って10万以上ありますから、その中での20位台は本当のトップクラスなので、皆さんが知っている名字が並んでいると思います」
「21位の山崎さんというのは、どういった由来なんですか?」
「地形に由来している名字になります。『崎』は大きな地形の尖っている部分という意味なので、山の稜線(りょうせん)の尖っている部分を山崎“ヤマサキ”と言います。ですから、その辺に住んでいた方が名乗ったのが山崎“ヤマサキ”さんになります。実はこの名字、東と西で読み方が違うので有名です」
「そうなんですか!」
「大体、東海北陸より東・北はほとんどの方が“ヤマザキ”さんと言います。関西だとヤマザキとヤマサキが混じっていて、中国、四国、九州だと“ヤマサキ”って清音で呼ぶことが多いです」
「どうしてその間で、分かれてしまったんですか?」
「これは方言のようなものなので、別にルーツが違うとか、由来が違うということではなくて。日本の方言でよく東と西で違うじゃないですか。それと同じように、東で“ヤマザキ”、西で“ヤマサキ”と読む」
続いて22位の森さん。前回、ランキング19位の林さんを紹介する際、里山のように人の手が入ったのが林、整備されていないのが森だとお伝えました。
「19位の林さんの方が多いんですね」
「昔の人は山をいろんな所で使いますよね。たき木を取りに行ったりとか、木の実を取りに行ったり。人里に近い山はきちんと整備している所が多いんです。ですから、林さんの方が多いんだと思います」
古代豪族から全国分布まで
23位の阿部さんの由来は?
「色んな漢字があるじゃないですか、阿部さんって。実は阿部さんはルーツがものすごく古いんです。奈良県桜井市に阿部という所があって、そこに昔から住んでいる古代豪族がいるんです。そこの阿部氏は日本に漢字が伝わってくる前からいる一族で、後から漢字を当てている。その度にいろんな漢字を後から当てている」
「その中でも、一番多い『こざとへん』の阿部との違いはなんですか?」
「一番古い時代は『こざとへん』の『阿』なんですけど、べが『倍』って書くんですね。この阿倍さんが一番古いあべさん。その後、有名な安倍晴明、あれは『安い』という字に『倍』ですよね。この後、安倍の方が増えてきます」
ですが、この安倍晴明と同じ字の安倍一族は勢力が衰え、近世になると、徳川家康に仕えた阿部氏が栄えたことで、現代でもランキング23位の阿部さんが1番多いそう。
「続いて池田さん」
「12位の山田と並んで、北海道から沖縄まで全国に分布している名字。日本は昔はとにかく田んぼが大事だったので、田んぼを作るには水がいりますから、池がないと困るので、池も作ります。池があって田んぼがあるというのは、日本の原風景。そういうところから、池田さんは北海道から沖縄まで、きれいに分布していると思います」
お次は25位の橋本さんです。
「これは3位の高橋さんの時でもありましたが、橋は今どこでもありますけど、昔はそんなになかったんですね。川は船で渡るか歩いて渡るのが普通でしたので、そういう意味で橋はランドマーク。皆、歩いて渡れる橋を渡りたいので、橋のたもとの橋本っていうのは人が集まっている一等地なんです。そこに住まわれた方が橋本さん」
続いて26位の山下さんは、文字通り地形が由来で、山のふもとに住んでいた人が名乗った名字だといわれています。
「そして27位石川さん、これ石川県と関係あるんですか?」
「皆さんそう言うんですよ。石川って聞くと、みんな石川県を思いつくので、石川県ですかって言うんですけど。実はルーツの地名って県単位のことはまずないんです。もっと小さな地名、自分がどこどこに住んでいるよ、というところで名乗るわけですから。大字・小字という小さい地名を名乗ることが多いです」
「石川という一族は、有名な古代豪族、蘇我氏・蘇我馬子。乙巳の変で滅ぶんですけれども、生き残った一族がいて、蘇我から石川に変えているんですよ」
「ルーツは蘇我なんですか?」
「という石川さんもいます」
続いて、28位です。
「28位の“ナカシマ”さん?“ナカジマ”さん?」
「中島“ナカシマ”って珍しいと思うんですけど…」
「私の同期に中島“ナカシマ”がいて、これどっちで読むのかなって今ちょっと戸惑ってしまったんですけれども」
「これも地域差があって、やっぱり東と西で違うんです。さっきの山崎“ヤマサキ”とは違って、もっと境目が西によっているんですね。関西も“ナカジマ”ですし、中国、四国もほぼ“ナカジマ”で濁ります」
「九州から山口にかけてが“ナカシマ”と濁らないんです。ですから中島“ナカシマ”さんの場合、九州あるいは山口の方が多いと思います」
「じゃあ、その子は東京生まれなんですけど、もしかして、ルーツは九州かもよって伝えてみます」
「ただ面白いのは、今はなくなったんですけど、愛知県に中島“ナカシマ”郡という地名があったんです。なぜか愛知県なのに濁らないんです」
「何でなんですか?」
「分からないんですよ、そこは。なので、愛知県はほとんどが“ナカジマ”なんですけど、愛知県の旧中島郡の周囲だけ“ナカシマ”って濁らないんです」
「えー!不思議ですね」
「地名が濁らないとやっぱり名字も濁らないんですね」
そんな中島さんの由来は次の通りです。
「島が3つあったら、真ん中が中島“ナカジマ”なんですけど、島っていうと海に浮かんでいる島を思い浮かべますよね?それにしては多いと思いません?」
「確かに中島“ナカジマ”さん多いです!」
「そんなに島にたくさん住んでいると思えないですよね。実は島ってもっと広い意味があって、平地の中でちょっと小高い所を島って言うんですよ」
「あれ、島なんですか?」
「平地を海に見立てて盛り上がっている所が島なんですね。そういう所、たくさんありますよね。山が1個もない平地ってめったになくて、その真ん中が中島で、その周囲に住んでいた方が中島さんになります」
お次は、29位・前田さんの由来です。
「方位に由来する。手前の前って意味で、田んぼが広がっていた場合に、手前の田んぼという意味が一つ。もう一つは、その地域で一番偉い人、そういう人たちの立派な屋敷の真ん前にあった田んぼを前田というんです。その田んぼを所有していた人が前田さん。ですから、これも各地に由来がありますので、全国に広がっている名字になります。前田さんの反対が、奥にある田んぼで奥田さんになります」
「前の反対は後ろ、後田じゃないんですか?」
「実はこういう名字って、偉い人から見た立場で決まることが多いですね。ですから、領主の人から見て、家の前の田んぼが前田。その反対側は屋敷の後ろになりますので、後田さんは、屋敷の裏側の田んぼになると思います」
「視点が違うんですね」
意外な読み方の世界
そして、30位が藤田さんです。
「これ藤が付くってことは、佐藤と同じ藤原氏が由来ですか?」
「いや、それが実は違うんです。佐藤さん・伊藤さん・加藤さんってみんな『とう』って読みますよね。実は藤原氏のことは藤家“トウケ”って昔言われていたので、佐藤とか伊藤のように『とう』って読むと、藤家の子孫だなって分かるんです。ですから、藤“フジ”と読むと藤家の子孫じゃないので、これはむしろ、藤と田んぼの地形に由来する名字になります」
「じゃあ藤って何?ということになるんですけど、今皆さんは藤って言うと、きれいな藤の花を思い浮かべますけど、あのきれいな藤の花は、実は近代以降なんです。新しく開発されたノダフジという藤なんですね。古い意味は藤は山に生えているようなつる植物。あれを全部藤って言うんです。つる植物が生えているような場所にある田んぼが藤田になります」
また、一般的に濁点のつかない旧仮名づかいの「フチタ」が水田の縁と同じ意味で、これに良い漢字をあてたものや、地名が由来とのいわれもあります。
と、ここで難読名字クイズです。「水流」と書く名字は何と読むでしょう。
「水に流れる?水流“スイリュウ”さん?」
「それじゃあクイズにならないので、ヒントとしては、これ実は読んでも2文字です。ひらがな2文字になります。ちなみに後は『る』と読みます」
「するさん?」
「正解は『つる』です。実はこれは九州の方言で、細い川の流れで折れ曲がっているようなものを『つる』と言うんだそうです。そこに住んだ方が『つる』さんで、やっぱり後から漢字を当てるんですけど、その時にその『つる』って言葉に対して意味を当てているんですね。水が流れている所だから、水流れると書いて水流って読みます」
(2026年4月27日放送分より)












