新潟県内にある限界集落の一つに、海外や日本各地の観光客が集まっています。旅の目的は、この村に暮らすたった一組の高齢夫婦と会うこと。そして、村の生活をまるごと体験できる“一村貸し”です。
高齢夫婦1世帯の村
新潟県の最西端に位置する糸魚川市。雄大な自然の中で、人々は暮らしを紡いできました。
市野々集落で生活する、齊藤義昭さん(85)です。自宅近くの畑を耕し自給自足で食料を調達するなど、いまだ老いとは無縁な齊藤さん。
豪雪地帯にあって避けられない「雪かき」も自ら行っています。
「冬はちょっと、除雪機で雪かきしているだけじゃ散歩にならんから」
この土地に住んでおよそ80年。山間で生きる知識も豊富です。
自然豊かで魅力あふれる糸魚川市ですが、人口減少が進んでいます。齊藤さんが住む市野々集落も、荒れた家屋が目立ちます。
ピーク時には40世帯が暮らしていた集落は、1975年ごろを境に人が姿を消していきました。
「(Q.取り壊した?)そうそう。住む人いなくなって」
市野々集落は現在、齊藤さんと妻のセイ子さん(84)の1世帯のみが生活する「限界集落」です。
「月に1回集まるとか、家内(やうち)同士でやる時はみんな寄る(集まる)とか。全員でやる行事もあった」
冬は雪に閉ざされる市野々集落。病院や商店はなく、市内へも車で30分かかりますが、齊藤さんはここから離れたくないと話します。
齊藤さんが“見守り続けたい”場所・市野々。この集落にほれ込み、文化や景色を残していこうと立ち上がった若者がいます。
築200年古民家を宿に
3年前に、地域おこし協力隊として糸魚川市に移住した永田伊吹さん(30)です。
永田さんは、使われていなかった築200年の古民家を活用した宿屋をオープンしました。
「(まずは)知っていただく、関わってくださる方を増やしたいというので、外から人を呼び込める場所を開きたいと思い、古民家の空き家をお借りして宿を開いた」
高く抜けたかやぶき屋根、都会で見ることのできない囲炉裏などかつての面影は残したまま。
テーマは、村の生活を丸ごと体験できる、一棟貸しならぬ“一村貸し”です。
滞在中は山菜採りや火おこし、湧き水をくみに行くなどの、市野々の暮らしを宿泊客が味わえる体験を提供します。
「これとか食べれられる」
「(Q.食べられますか)これ採ってもらっても、きょう食べられるので」
先月30日に宿を利用したのは、県外から訪れた30代の男性客たち。山菜の採り方を伝授され…。
「これがそうですか?違います?」
「そうです」
見事、食べられる山菜を見分けることができました。宿泊客は次のように話します。
「齊藤さんからいろいろ聞いて、それを僕らが伝承人として新しくここに来た方に伝えていくことがすごい大事だと思っている」
ふれあいが“力”に
オープンから4カ月。これまで20人ほどの客が来ました。1日、集落にやってきたのは、アイルランドから来た外国人観光客です。
ひとしきり宿を見学した後に向かったのは齊藤さんの自宅です。実は、齊藤さんと話すことも、市野々を訪れた理由の一つでした。
かつてホームステイとして受け入れた日本人から齊藤さんのことを聞き、話をしてみたいと訪れたのだと言います。
「We also grow onion and garlic」
「タマネギとかニンニクとかも…」
「初めて言葉の中で“オニオン”、玉ねぎが分かった」
市野々に訪れる人たちとのふれあいが、齊藤さん夫婦に力を与えてくれるといいます。
「大勢私たちの所に来てくれます」
「日本語が通じない人も来る。いろんな話でこっちも喜ぶし、向こうも珍しい山の中の民家。喜んでくれる。そうやってくれるので今があるのかな」
(2026年5月2日放送分より)













