社会

ABEMA TIMES

2026年5月3日 07:00

憲法改正は本当に必要か 自衛隊明記で変わる日本の“戦う理由”とは 小林よしのり氏「軍にしないとセーブができない。規制しなければどこまででも行ってしまう」

憲法改正は本当に必要か 自衛隊明記で変わる日本の“戦う理由”とは 小林よしのり氏「軍にしないとセーブができない。規制しなければどこまででも行ってしまう」
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 憲法改正へ意欲を見せる高市早苗総理。自民党大会では「立党から70年、時は来た」と発言し、党員の総力を挙げると宣言した。主な改正案は「憲法9条への自衛隊の明記」など4項目。特に長らく議論されているのが9条の改正だ。野党からの反発もある中、同じく危機感を訴えているのが「ゴーマニズム宣言」でも知られる漫画家・小林よしのり氏だ。「ABEMA Prime」では小林氏、さらに元衆議院議員の山尾志桜里氏とともに、憲法改正の是非、改正案のあり方について考えた。

【映像】憲法改正、世間の関心度は(調査結果)

■「国家権力はライオン、憲法は檻」

憲法改正の論点

 現在の日本国憲法を、どう評価すべきか。山尾氏は「国家権力はライオン、憲法は檻」という表現を用いて説明する。

 「『ライオンと檻』の例えは、弁護士の間でよく使われる。ただ日本の憲法は檻の柵の幅が空いている。世界の憲法の平均と比べて、単語数が4分の1ぐらい。隙間が多い分、解釈でそれぞれ好きなように埋めてしまい、議論の前提が噛み合わなくなっている。もう少し柵の本数を増やしてもいいのではないか」。

 自民党は9条改正に全力を注ぐとするが、警鐘を鳴らすのが小林氏だ。

 「アメリカは憲法を守るために戦う。では、日本は何のために戦うのか。それを高市早苗はわかっているのか。きっと『国民の生命・財産を守るため』と言うのだろう。それならば、アメリカ軍に守ってもらえばいい、ということになる。日米同盟は絶対に必要なわけで、それならばアメリカの51番目の州になり、属国のままで一番強いアメリカに守ってもらえばいいということになる」。

 「そうなると、アメリカにどこまでもついていくしかなくなる。(戦闘している)中東までもついていって、やるしかない。集団的自衛権だからと、日本も自衛隊をどこまでも出すという話になりかねない」。

 山尾氏は、9条に記された「武力の放棄」と実情の矛盾についても触れる。

 「9条には、何のために戦うか書いていないどころか『戦わない』と書いてあり、9条1項に戦争放棄と書いてある。これが世界的に見て、自分を守るためだけに戦うことが普通のことなのか、という問題もある。それなのに自衛隊は国民に必要だと支持されている。このギャップを、みんなが好きな解釈でバラバラに埋めている」。

 小林氏も、親交があった思想家の言葉を引用して説明する。

 「保守である西部邁が言っていた言葉がすごく面白かった。『自衛隊が憲法に違反しているのではなく、憲法が自衛隊に違反している』と。これを聞いて、目から鱗が落ちた。日本のために戦う戦力があるのが常識なのであって、そんなものはなくていいという憲法の方が非常識という考え方だ」。

 これには山尾氏も「新しい国を作る時には、必ず憲法を作るところから始まる。憲法はそれだけ国会に密接に結びついている。西部さんがおっしゃっているのは、自分で自分の国を守ることが書いていない憲法なんて、憲法ではないし、国家でもないということだろう」と同調した。

 今、憲法改正について議論する意味については「9条について、あまりにも解釈の積み上げで『ガラス細工の解釈だから国民には触らせるな』という政府や役所の意識がある。この戦後80年、改憲派も護憲派もすごく共犯者的な状況だった。政権を持つ側は改憲と言いながらファン層を掴みつつ、結局は改憲しないまま解釈で国民と向き合わず、うま味を吸ってきた。護憲派は護憲派で、護憲と言っておけば野党として選挙には受かった。80年が経ち、残念ながら一般の人が自分事として安全保障や国防について感じる機会になった今、現状を話し合って、きっちりとピン留めして不文律を文章にしていく時期だと思う」。

■憲法改正の現在地

改憲4類型

 9条改正への考え方、山尾氏は大きく論点を2つに分けて説明する。

 「1つは戦力を持たないと言いながら自衛隊は持つという、その矛盾を解消するか、それともそのまま置いておくかということ。もう1つは自衛のために戦力を持つと書く場合、日本は自分の国を守るためにだけ戦うが、場合によっては、例えばアメリカが戦争に入っていく時に、それが日本の存立をも揺るがすような事態だったら、日本も出ていくことまでは『やる』と言っている。それを集団的自衛権の一部としてやるかの条件を憲法に書くのか、法律で済ますのか。この2つがすごく大きい」。

 その上で、山尾氏は「自民党案は、自衛隊はあると憲法に書くが、戦力とは認めず、法律に書こうというもの。維新の会案は、『戦力を持たない』という9条2項を削除し、自衛のために戦力を持つことを認め、内容については法律で書くという考え方。さらに他にも、自衛隊を戦力だと認め、さらにこういう場面では自衛隊が出ていくという条件まで憲法に書くものもある」と解説した。

 自民党案は文言だけ見れば、SNS上で言われるような、戦争に突っ込んでいくようなものには感じられないという意見もある。

 「『自衛隊と書くだけ。何も変わらない』というのは、安倍総理の時に自民党が提案したこと。日本はどういう国であろうとしているのか、微妙な均衡の中でこのまま進もうとしているのか。アメリカも、憲法と関係なく日本を見捨てる国になるかもしれない時に、日本はアメリカ以外の国とも、イーブンな同盟関係を結べるような国になっていくのか。自民党案は、そこに何かを問いかけるものではない」。

 ではなぜ改正にこだわるのか。

 「自衛隊と明記することが、自衛官の社会的地位向上とは関係しない。ただし、憲法で無視されてきた自分たちの存在が、憲法に書かれることをうれしいと思う自衛官がいてもおかしくはないが、それ以上でもそれ以下でもない。自衛官の誇りを守るための改憲というよりは、これは私の考えだが、しっかり軍人としての地位を保障できるように、9条で戦力と認め、自衛隊は軍と認める、そういう法体系を憲法の下にぶら下げられるような基盤を作るということに、意味はあると思う」。

 小林氏は、自衛隊が軍でないことの弊害も指摘する。

 「自衛軍にしないと、軍法会議すら作れない。つまりセーブできなくなる。もし万が一アメリカの艦船がやられたら、直ちに自衛隊を派遣すると高市総理は言っている。自衛隊のままでも戦えることになっている。中国の漁船に化けた工作船が、アメリカの艦隊に砲撃して穴を開けたりしたら、自衛隊が出動し、中国と戦うことになる。それは非常に危うい。台湾有事であっても、ホルムズ海峡のことであっても、自衛隊に規制をかけなければどこまでも行ってしまう」。

■いざ改正されたら海外の反応は

解釈でここまで拡大

 もし憲法改正が実現した場合、国外への影響はどんなものが想像されるか。哲学研究者・森脇透青氏は、海外へ伝わるメッセージとして考察すべきと指摘する

 「今、9条を改正するとなると、それは明らかに外向的にすごく強いメッセージとして受け取られる。自分たちで自衛するとなれば、何らかの具体的な影響を及ぼすのではないかと懸念する」。

 これに山尾氏は「昔は『瓶の蓋論』と言って、日本が憲法を変えて自衛隊を正面から認めて行く改正が、日本が軍国主義に戻るようでアジアの国は反対するという状況もあったが、それも変わってきた。フィリピンの大臣も、日本の9条を変えて、ちゃんと自衛隊として活動するようにし、みんなでアジアを守る状況を作ってほしいと言うような時代にもなった。地位協定にしても、もしかしたら相互に守り合う関係ではないから、地位協定が変えられないのかもしれない」と持論を述べた。

 また小林氏は、改正時の中国の反応を予想した。

 「中国は、日本が今の憲法を変えることを絶対に嫌う。とにかく日本を今の憲法の中に押し込めておきたい。万が一、アメリカと一緒に中国と戦うようなことになったら、大変なことになると思っているからだ。日本には米軍基地があちこちにある。だから中国のミサイルも最初にここを狙うし、また沖縄が犠牲になる。岩国だって、横須賀だって、米軍基地があるところに、中国は既にミサイルの照準を定めている。そもそも日米同盟のために、日本は非常に危険で、リスクを背負っている」。 (『ABEMA Prime』より)

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