スキーリゾートとして人気の長野県の白馬村。こちらで外国人の駆け込み寺となっているクリニックがあります。独自の民間救急車も活用して急な病気やけがの診療にあたっています。
観光客、5年で約2倍に増加
「ハクバ イズ ザ・ベスト」
ロシアからの観光客
「とても美しいわ」
「白馬はまるでダイアモンドだね」
人口1万人にも満たない村に、年間300万人もの観光客が押し寄せている長野県白馬村。
今、白馬を訪れる外国人の間で人気なのが、山の頂上に作られた絶景ブランコ。北アルプスの雄大な景色を眺めながら楽しめるとあって、大人気アトラクションとなっています。
「TikTokで見てきました」
「最近白馬について投稿するインフルエンサーや口コミが増えている」
インバウンドの増加とともに、グリーンシーズンの観光客も急増。2020年には70万人台だった観光客は、5年で約2倍に。その白馬で、けがや病気を抱えた外国人の“駆け込み寺”となっているのが…。骨折、発熱、打撲などで、次々とクリニックを訪れる外国人。最も忙しい冬の時期は5分に1組、1カ月で1000人を超える患者が押し寄せます。
中には重篤な症状を訴える患者も。
「救急車呼ぼう!腹腔(ふくくう)内出血あり!!」
「脾臓(ひぞう)が破裂している可能性があります」
リフトの支柱に激突
3年前、長野県白馬村に開院した「白馬インターナショナルクリニック」。医師やスタッフは全員が英語を話せるため、病気やけがを抱えた外国人観光客がこのクリニックに殺到しています。
抱えられながらクリニックを訪れたオーストラリア人男性。足元もおぼつかない様子です。
「気を失いそうだから早くお願い」
「少し前に気を失って吐いたの」
診察室で横たわってからも苦しむ男性。この男性、滑走中にリフトの支柱に激突、ホテルで休んでいたものの、午後になって急に容態が悪化したといいます。
「血圧だけこまめに測って」
触診で腹部が異常に膨らんでいることに気づいた医師が、音波検査を試みると…。
「別の病院へ移送します。内臓で出血が起きています。脾臓が破裂している可能性があります」
医師は緊急の外科手術が必要と判断し、救急対応が可能な総合病院に受け入れを要請しました。
「長野赤十字受け入れOK。救急呼ぼう」
数分後、白馬を管轄する救急隊が到着。涙ぐむ友人に医師が優しく声をかけます。
オーストラリア人男性はその後、長野市内の総合病院へと運ばれました。
白馬で働く外国人も
白馬インターナショナルクリニックでは3人の医師が曜日ごとに交代で患者を診察しています。三上医師は東京の聖路加病院で救急救命の経験を積み、海外の病院でも勤務した後、この病院の開設に関わりました。白馬村に開院した理由は?
今では外国人観光客だけではなく、白馬で働いている外国人も大勢やってきます。
「ロンドンからワーキングホリデービザで来ています。横に足を動かすとひどく痛いの」
白馬のホテルでアルバイトをしているイギリス出身の女性。休日にスキーをしていた際に足をひねって、動けなくなったといいます。
「リラックスして」
「ほら、ひざにたまってた水」
「3月末まで働くつもりだったけど、もう働けないわ。でもいい勉強になった」
午後になると一層混みだしたクリニック。効率よく診察するために、看護師らがチームワークで問診や準備を進めます。問診や患者の容態を見て、診察の優先度合いを決めるのは看護師リーダーの仕事。
1人の医師で大勢の患者をいかに効率的に診察するか。看護師の判断が患者の待ち時間軽減にもつながっています。
「日本代表のつもりで」
さらに、急増する外国人患者に対応するため、今シーズンから始めたのが、スキー場と提携した民間救急のサービスです。
白馬村には130万人を超える観光客が訪れるにもかかわらず、地元消防の救急車は2台しかありません。
「救急車で来なきゃいけない人で、待たされる人がめちゃくちゃいた。ゲレンデで数時間待たないといけなかったり、救急車の代わりに(患者を)運べる車があればとクラウドファンディングで資金を集めた」
白馬のさまざまな企業から寄付金を集めて入手した中古の救急車。スポンサーのステッカーで、車体は埋め尽くされています。
スキー場のパトロール隊から直接クリニックに患者搬送の要請が来ると、看護師が同乗し、現場に急行。
看護師はけがの様子を現場で判断。患者の容態次第では近隣の大きな病院へ運ぶ場合もあるといいます。
「鎮痛剤をすぐに打ってもらえませんか」
「今はこれを打ちますが、後でもっと強い鎮痛剤を投与します」
患者をクリニックへ搬送中も、早くも次の救急搬送の要請が。この日、民間救急車の出動は6回を数えました。
「腕を上げることができません。肩が変な場所にあるような」
「肩が下がってますね。でも鎖骨は大丈夫そうですね」
スキーで滑走中に転んで2回も肩が外れたというイギリス人男性。クリニックに運ばれて脱臼の治療を始めるも…。あまりの痛みに、シャツを噛んでこらえる男性。
「痛い?OK、少し休みましょう」
「ハマらなかったので鎮静かけます」
痛みを考慮して、全身麻酔をかけて、脱臼した肩を戻します。
二度目のトライで外れた肩を直した三上医師。
「ありがとう。素晴らしい治療だったよ。来年またスキーできるかな?」
「また楽しめますよ」
一刻を争う、けがや病気の治療。このクリニックは大きな役割を果たしています。
(2026年5月8日放送分より)











