SNS上で「高市のせいで離婚しそう」というブログ記事が話題を呼んだ。高市政権の発足から半年が経過し、物価高や安全保障といった生活に直結する課題が議論されるなか、家庭内に持ち込まれる「政治観の分断」が夫婦関係を揺るがす事態となっている。「ABEMA Prime」では、この切実な問題について当事者や専門家を交えて考えた。
■政治観の違いで絶えない夫婦喧嘩

小泉さん(40代)は、自身を「リベラル」、夫を「保守」と定義しており、政治の話題になると「週に1、2回は喧嘩になる」と明かした。「大学ではお互い政治の分野を選択し、その頃から話はしていたが、夫の仕事が忙しくなるにつれて価値観がだいぶずれてきた」という。
特に対立が深まったのは最近のことだ。「高市政権になってからは、さすがにヤバいなと思って話し始めた」とし、特に外国人政策や原発、憲法改正などを巡り衝突を繰り返している。「今までは憲法があるので、そんなに簡単に自分たちの人権は揺るがないものだと思っていたが、この憲法を本気で変えようとしているので」と危機感を募らせる。
夫との議論では、根拠の乏しい排外的な主張に憤りを感じることもあるという。「データもないのに『あの事件の犯人は絶対外国人だ』みたいなことを言うので、さすがにもうちょっとデータを見て話をしたらどうかと思う」などと指摘し、「夫には前からそういうところがあったが、高市政権になってから(夫は)右翼側が勢いづいたと思っていて、発言が表に出るようになってきた」と家庭内の変化を分析した。
深刻なケースとして、政治観のすれ違いから30年連れ添った夫と離婚に至った50代のハルさんが証言した。「安倍政権の時も少し温度差はあるなとは思っていた」と振り返るが、決定的なきっかけは高市総理による台湾有事を巡る発言だった。「あの発言で大喧嘩になった」という。
ハルさんは「(高市総理の発言を)私は『とんでもない発言だ』と言っているが、元夫は『よく言った』っていう。真っ向から意見が違った」と述べ、改憲へのスタンスも正反対だった。「9条改正についても、元夫は必要、私は必要ないと思っている。私の考え方は夫からすると『お花畑』だと。私には娘がいて、これから引き継いでいくのに、その日本が戦争できるような国になってしまったら、子どもの安全や安心が脅かされる」と、家族の未来を案じるがゆえの対立であったことを明かした。
さらに、同じ教育を受けてきたはずのかつての伴侶への違和感も吐露した。「元夫は『戦争になってもしょうがない』と言う。歳が近いので、同じように平和教育を受けてきて、原爆資料館にも行ったりしているはず。同じようなものを見て育ってきているのに、なんでこんなには反対の意見になるのか」。
■政治観が「アイデンティティ」となる背景

なぜ政治の話は、これほどまでに関係を壊すのか。政治心理学が専門の秦正樹准教授は、政治に興味を持つとそれが「アイデンティティ」化しやすいと分析する。「(支持政党の)メンバーになると、自分のバックに何万人とか何百万人の味方がいる気持ちになる。さらに、その中の1人であることに誇りを感じたりする」ため、政治的意見への否定が人格否定のように受け取られるのだという。「かなりアイデンティティに近いものになって、心理学でいう『態度』ではなく、自分のプロフィールみたいなものになる。自分のプロフィールを汚されるとなれば、夫婦関係はやっていけないという話になる」。
また、日本特有の「話し合いの不在」も一因だという。「そもそも(日本社会で)話し合いの仕方を、私たち自身も学んできていない」と指摘した。
出演者からは、SNSが家庭内の分断を加速させているとの指摘が相次いだ。研究者・山内萌氏からは「SNSで使われる語彙を用いて、SNS上で起きている分断を家庭内で再現しているように見える」という意見が出た。
またEXIT・兼近大樹は「今の人たちは同じものばかり見ている。会話の中で『こんな政治思想を持っています』という話題が出た時に、何を見ていたかお互いに興味を持って話し合えば(衝突は)緩和されていくはず」と述べた。
相方のりんたろー。からは「政治に関して考えが明らかに違いすぎるから『うちでは政治のことを話すのはやめようね』とはならないのか」と質問が飛んだ。
これに小泉さんは「政治の話をしないことは絶対にない」と断言。「政治の話は生き死にに関わる。本当に死んでしまうかもしれない、殺されそうになっている時に政治の話をしないのは、『殺さないで』と言うのをやめろというようなもの。話すべきだ」と、政治を語ることは生存に関わる権利であると訴えた。
これに対し秦氏は、政治とは本来「妥協することが仕事であり営み。喧嘩すること、論破することが仕事ではない」と説く。「AさんもBさんも意見は違うが、ちょうど平均なのか、A寄りなのかB寄りなのかで、どちらも納得するために話し合うこと」を意識すべきだと述べていた。 (『ABEMA Prime』より)