初夏の訪れを告げる長良川の鵜飼(うかい)が11日夜に始まった。満を持してお披露目されたのが、デザインなどにかけられた費用はおよそ2800万円の最高級観覧船だ。
岐阜・長良川の鵜飼始まる
夏の風物詩「長良川鵜飼」が11日、岐阜県長良川で開幕した。
鵜飼は、かがり火で川面を照らしながら、魚を丸のみする習性がある鵜を使い川魚をとる伝統漁法で、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。
鵜飼で狙うのは“香魚”とも呼ばれるアユだ。長良川の清流で育つアユは香りが良く質が高いとされていて、皇室にも献上されている。
その歴史は古く、長良川では1300年以上続いていて、朝廷や時の権力者たちにも愛されてきた。中でも、織田信長は客人への“おもてなし”として活用したと言われている。以降、長良川鵜飼は“おもてなし”の象徴として岐阜観光の主力になっている。
最高級観覧船が誕生
岐阜観光の目玉になっている長良川鵜飼。ここ数年は“本物の日本文化”を体験したいという国内外の観光客も多く、間近で見られる観覧船が人気だ。
そんな中、誕生したのが、最高級の観覧船「鵜一」。今年夏ごろの運航を予定しているという。
「鵜一」のデザインなどにかけられた費用はおよそ2800万円で、担当したのは豪華寝台列車「ななつ星in九州」などで知られる工業デザイナーの水戸岡鋭治さん(78)だ。
コンセプトは、織田信長の“おもてなし”。鵜飼文化を国内外にアピールできるようにと考えられている。
船体は、岐阜県産の高級木材「高野槙」を使用。特注の障子戸を取り入れ、和モダンな空間に仕上げた。
船内は鵜飼観覧に適した椅子とテーブルが置かれ、食事用と観覧用で配置を変えられるという。
「鵜飼は日本の伝統的な素晴らしい文化、歴史。豊かな時間と空間とシーンを提供できるように設計した。ぜひ使ってほしい」
「鵜一」には専任のコンシェルジュがいて、特別な鵜飼体験を楽しめる。
価格は貸し切りで40万円。これまでの一番高い観覧船に比べ、2倍以上となる。
天然アユや岐阜県産の野菜を使った特別料理を楽しめるプランも検討しているという。
1300年続く長良川の鵜飼。なぜ今、高級路線へとかじを切ったのか。
観光の底上げに期待
およそ2800万円かけて造られた新たな観覧船だが、岐阜市全体の観光の底上げにも期待が寄せられている。
世界遺産「合掌造り集落」で有名な白川郷などの観光地がある岐阜県全体では、去年、ホテルなどに宿泊したインバウンドはおよそ200万人で、これは県全体の観光客の24.6%にあたる。都道府県別で8番目に高い数字となる。
一方、岐阜市は2025年度に宿泊に占めるインバウンドの割合はおよそ12.7%にとどまっている。
そんな岐阜市だが、長良川の鵜飼はインバウンドの人気が特に高いという。岐阜市に番組で取材したところ、去年、長良川鵜飼の観光船の乗客のうち外国人の割合が過去最高を記録したという。
インバウンドの増加傾向が続いていることから、今シーズンの目標乗客数は去年より1500人多い、8万7000人を掲げているということだ。
その追い風の一つになっているというのが、高級観覧船。10日にお披露目された「鵜一」に先駆けて、2022年、3隻の高級観覧船を導入した。
和をモチーフにした豪華な空間が人気を呼んでいるだけではなく、椅子とテーブルを設けたことがインバウンドに好評だという。
ちなみに、今回お披露目された鵜一については検討中とのことだが、鵜一には12人まで乗ることができ、船内では岐阜県産のアユと野菜などを使った料理を楽しむことができるプランを検討しているという。
ユネスコ無形文化遺産へ
高級な観覧船を導入する背景は、インバウンドなどの集客にとどまらないという。あることへの登録を目指しているということだ。
それが、ユネスコの無形文化遺産への登録。長良川の鵜飼は、海女さんによる漁とともに「伝統的漁労文化」として登録を目指しているという。
その登録に向けて岐阜市は「持続可能な体制の構築が不可欠」としていて、鵜匠の技術を次の世代に受け継ぐだけでなく、観覧船事業の安定的な運営も重要だという。
岐阜市・鵜飼観覧船事務所の高井智所長は番組の取材に「岐阜市運営の長良川の鵜飼は、来年で100周年を迎える。豪華な観覧船の導入は、収益の面だけでなく、鵜飼観覧船事業そのものの価値を高めていくことが重要。ユネスコ無形文化遺産登録への一つのステップになれば」と話した。
(2026年5月12日放送分より)













