“ETC専用道路”が話題になっている。東海環状自動車道は2026年4月、日本初となる「現金もクレジットカードも一切使えない高速道路」になった。インターチェンジやスマートインターのすべてが、ETCでしか通行できない。
料金所でのETC利用率は現在、95%を超えている。国土交通省が公表しているロードマップでは、首都圏、中京圏、近畿圏など都市部から順次整備し、2030年度ごろには全国全ての料金所をETC専用にするとしている。
確かに、いつの間にか 「ETC専用」と「一般車」の区別ではなくなり、 現金の場合は「サポート」と書かれた入口を 利用することとなっている。利用率95%を超えているとなれば「ETC搭載車」こそが一般車ということなのか。
自動車生活ジャーナリストの加藤久美子氏は、導入当時を「やっとだな。21世紀を感じた」と振り返る。「1996年だったか、当時ヨーロッパとか行った時に、もう全部このETCみたいなもので、自動でどんどん、しかも結構速いスピードでみんな抜けていく。日本は導入したのが遅いと思う」。
しかし、ETCの普及に伴って、新たな問題もできているという。「今は外国人でレンタカーを借りる観光客が年間で400万人ぐらいいる。例えば首都高で料金を払わずに突破する。意図的なのか、たまたまやってしまったのかわからないが、結局その請求はレンタカー会社に来る。レンタカー会社に請求が来る頃には、もう彼らは、自分たちの国に帰っている。そうすると、非常に料金を回収するのが難しくなる」。
そもそも、ETCの始まりは25年前にさかのぼる。2001年4月、小泉純一郎政権が発足。
国内では聖域なき構造改革が叫ばれ、行財政改革の目玉として郵政改革よりも先んじて打ち出されたのが、道路公団の民営化議論だった。また翌年の2002年には日韓ワールドカップを控え、新たなインフラ整備の必要性も騒がれていた時だった。
ETC導入化を促進させた理由の1つが渋滞。一般道も含めた渋滞による経済的損失は、年間12兆円とも試算されている。2001年3月、千葉と沖縄の一部高速道路で、日本のETCの試験運用が開始。しかし、2002年当初の利用率は、わずか1.6%にとどまっていた。
それでもここからETCは、少しずつ日本の道路網に浸透する。大きな転機は2008年、リーマンショック後の景気対策として、自民党の麻生内閣で打ち出された「休日上限1000円」政策。ETC車載器を付ければ、どこまで走っても土日は1000円。車載器に国の補助金もつき、各家庭が次々とETCを取り付けた。
すでにこのサービスは廃止されているが、現在も「休日割引」「平日朝夕割引」「全日深夜割引」「障がい者割引」「大口・多頻度割引」と、さまざまな割引サービスが実施されている。
普及には、さらにもう一つの要因があったと、加藤氏は指摘する。「ETC2.0という新しいタイプのカードができた。これの一つのいいところは、例えば一回降りて給油して入っても、一回降りて道の駅を利用して、また帰っても、加算されたりとかはなく、そのままの料金でいける」。
このような料金サービスを続けた結果、2010年ごろを境にETCは一気に普及。国土交通省のデータによると、利用率は2002年の1.6%から、「休日上限1000円」を経た2010年には83.7%へ上昇。2026年には95.8%に達している。業務用のトラック・バスは、ほぼ100%。現金で乗り入れる人は、いまや少数派だ。
しかし、その“進化”を逆手に取るような行為が後を絶たない。大型トラックにピタリとくっつき、ETCゲートを料金未払いで通過する「カルガモ走行」などだ。「料金所にカメラはすごくある。気づいていなくても、前もあるし、斜め前もあるし、後ろもある。何カ所もカメラで撮られているので、そういう悪事というか犯罪ですからね。それが見逃されることはないと思った方がいい」(加藤氏)。
ただ、突破するのは、全員が悪意ある運転手とは限らない。故意ではなく、減速が足りずゲートを押し除け、通過してしまった場合はどうしたら良いのか。加藤氏は「正しい対処法としては、まずバックは絶対しないこと。NEXCOなどの料金未払い窓口に、ちゃんと車を止めて、安全なところから電話をする。その日でなく、後日でもいいので、必ず電話する。もしETCのカード番号がわかっていれば、それを伝えれば、通常の料金と一緒に引き落とされる。一番重要なことは結局、その場で止まらない、交通の流れを止めない、バックを絶対にしない。そんなに慌てなくて大丈夫」とアドバイスする。
一方で、対応が周知されていないためか、ゲートで停止している前の車に、追突してしまう事故も起きている。交通事故防止コンサルタントの上西一美氏は、「後ろから行く車は結局、前が止まる前提で運転していない。止まらないという思い込みで、十分な減速をしない。すごく大きな事故になるため、気を付けてほしい」と訴える。
さらに、ETCレーンから、慌てて進路変更しようとして、追突するケースもある。「結局はカードの入れ忘れ、これが一番多い。これはもう慌てているため、基本的に後ろは見ていない。そのまま進路変更して、車の前に割り込むパターンだ」(上西氏)。
NEXCO各社や首都高などでは、ナンバー読み取りカメラの精度向上や、不正検知から閉鎖までの時間短縮を可能にした新型ETCゲートの導入、「サポートレーン」の拡充でうっかりミスと故意の突破を分離する対策などを行なっている。
上西氏が、あまり知られていないポイントを教える。「ETCレーンの手前に、路面標示がある。いわゆる“への字”みたいな標示で、実は『減速路面標示』と言う。過去に事故が多い場所や、事故で危ない、リスクが高い場所。この表示を見たら、『ここは過去に事故が多い』という認識を持ち、車間距離を開けたり、速度を抑えたりしてもらえるといい」。
2001年、料金所の渋滞を解消するために生まれたETC。25年の歳月をかけて、利用率は95.8%となり、料金所がなくなろうとしている。気になるのは残り5%の人たちの声だ。
ネットでは、「ETCはクレジットカードに紐付けされてるから、クレジットカード作れない人は高速乗るなってこと?」「パーソナルカードもあるけどデポジット必要じゃん!」「たまにしか車に乗らないのに、お金かけてつけなきゃダメなの?」「現金派は高速に乗るなという拒否姿勢か!?法定通貨の意義はどうした!」などの意見が見られる。
「公共性」と「効率」、「公平」と「便利」。ETC全面化はその問いを投げかけている。
(『ABEMA的ニュースショー』より)