沖縄県の辺野古沖で、高校生らが死亡した事故で、文科省は、安全管理が著しく不適切だったと指摘しました。
学校側の学習プログラムが教育基本法に反するとした文科省の判断については、意見が分かれています。
『平和教育』はどうあるべきか、見ていきます。
■辺野古事故 文科省「安全管理 著しく不適切」学校側に指導
辺野古で起きた事故です。
3月16日、沖縄県名護市辺野古沖で船2隻が転覆。
同志社国際高校の、研修旅行中の生徒、武石知華さんと、金井創船長が死亡しました。
国土交通省は、死亡した船長を刑事告発しています。
他に、生徒ら14人がけがをしています。
5月22日に、文科省が公表した、調査結果です。
辺野古研修の主たる目的は、教員から生徒に送付されたメッセージによると、
『きれいな海を見ること』ではなく、基地建設と、それに反対する人が対峙する『現場』を見ること、という内容でした。
安全管理についてです。
事前の計画では、現地の下見をせず、ライフジャケット着用等の安全指導や教育は行われませんでした。
当日の対応では、引率の教員が乗船せず、気象情報の確認もしませんでした。
「事前の計画や当日の対応、安全管理、教育活動の状況などの面で、著しく不適切だった」と学校側に是正を図るよう指導しました。
「同志社国際高校の安全確保は著しく適切さを欠いていた。学校保健安全法に反している。私学助成金を減額せざるを得ない」として、同校への助成金、年2億円程度の交付について、2026年度分だけではなく、すでに交付した助成金の一部返金を求める可能性があるとしています。
同志社国際高校は、5月22日、ホームページで、
「極めて重大な責任を痛感している」と謝罪。
今後の対応について、外部の専門家による調査や、遺族や被害者への継続的かつ丁寧な支援を行うとしています。
再発防止策については、校外活動の安全を管理する『安全管理室の設置』をするなど、改善措置を速やかに実施するということです。
■辺野古学習『教育基本法』違反 問われる“政治的中立性”
文科省は『政治的中立性』違反を、初めて認定しました。
「政治活動を禁じる教育基本法第14条第2項に違反するものであったと考えている」と指摘しました。
教育基本法第14条第2項では、学校は、特定の政党を支持し、又は、これに反対するための政治教育、その他政治的活動をしてはならない、と定められています。
教育基本法違反とした理由です。
・抗議船による見学のプログラムを組み、実施していた。
・研修旅行、初日の開会礼拝において、牧師が複数年にわたって抗議活動に関する説明を行っていた。
・過去の研修旅行のしおりに、ヘリ基地反対協議会による“座り込み”をお願いする文章を掲載していた。
・生徒の考えが深まるような、さまざまな見解を、十分に提示をしていなかった、
などです。
これらを総合的に勘案し、『政治的中立性』を確保できていなかったとして、教育基本法違反を認定しました。
1947年の教育基本法 制定以降、初めての判断です。
理由に挙げられた、抗議船については、船を運航した『ヘリ基地反対協議会』は市民団体や労働組合のほか、日本共産党などから構成される組織です。
「事務方から学校側に『多様な意見を扱った証拠を出してください』と何度も尋ねたが、学校からは沖縄県のホームページしか出てこなかった」と答えています。
「基地移設の当事者である国が『政治的中立性』を判断するのはどうなのか」と質問すると、
松本文科大臣は、
「政府の立場のみを中立とするものではない」と答えました。
「今回の判断に当たって官邸からの指示は一切ないし、基地問題に関する私自身の認識や政府の立場など、省内の会議で一切発言していない。結論ありきで指示出したこともない」としています。
文科省の今回の判断に“肯定的”な意見です。
「当然だ。特定の結論ありきで、生徒の考えを導くのは明らかに間違っている。教師自らの思想信条を学生に押し付けることもあってはならない」
「これまでが放置しすぎだった。ですから踏み込まねばならない」
一方、“否定的”な意見です。
「辺野古の現場を見るのは、どういう状況で進められているかということと、沖縄における過重な基地負担の現状を照らし合わせて考える機会は、これからも行われて然るべきではないか」
「賛否あることを実地で学び、体感するという教育成果を否定しかねず、現場を萎縮させかねない」
さらに、新聞各社の論調です。
辺野古への移設については、アメリカや日本政府の立場もあるし、住民の意見も一様ではない。特定の主張のみを教えることが適切とは言えまい。ただ、この種の手法が乱用されれば、現場は萎縮し、豊かで個性的な教育は成り立たなくなる。
『文科省の違法認定に残る大きな疑問』と伝えています。
教育内容に足りない点があったことは学校側も認めている。ただ、違法認定に踏み込むのは行き過ぎだ。教育基本法の成り立ちに照らしても腑に落ちない。政治色が極めて濃い判断で、それ自体、中立性を欠いているとの、そしりも免れないだろう。
『政府の見解と告発は重い』としています。
教育の政治的中立性を守らず、杜撰で危険な活動が『平和学習』の名の下に行われていたということだ。調査結果で、『特定の見方・考え方に偏った取り扱いだったと考えられる』と指摘したのは当然だろう。
『平和学習の萎縮を懸念』と伝えています。
学校側は、開校当初から平和学習のため沖縄を訪れている。熱心に取り組んできた平和学習が、教育基本法に反するとは、思いもよらなかったに違いない。沖縄戦など総合的に取り組む同校の平和学習を辺野古の視察をもって、教育基本法に反すると決めつけるのは、乱暴ではないか、としています。
「中立かどうかという判断は、境界が非常にあいまい。教育基本法違反を認定するなら、誰がどう見ても『違反』という基準に限定すべきではないか」
政治的中立が問題になった例は過去にもありました。
2015年6月、山口県の県立高校の、現代社会の授業です。
安保関連法案について、朝日新聞と日本経済新聞の記事を読み比べ、班ごとに議論。
それぞれの班が賛成、反対の立場で議論した内容を発表しました。
その後、安保法案に賛成・反対どちらの発表のほうが、説得力があったかを投票すると、反対の立場で発表したほうの支持が多数になりました。
翌7月の山口県議会のやりとりです。
「特定の記事を教材に投票までしたのは政治的中立性に欠ける」と指摘。
「多様な資料の提供ができておらず、説得力のある意見に投票させることが結果的に賛否を問う形になってしまった。配慮不足だった」と答弁しました。
■ドイツ 政治教育に国の指針“3原則”「意見押し付けない」
教育の『政治的中立』について、基準を設けている国もあります。
コメンテーターのマライ・メントラインさんの出身地、ドイツです。
ドイツでは『政治教育』として、過去の戦争について学びます。
14歳から15歳で、第2次世界大戦や、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)についての、授業を義務付けています。
「歴史の授業で1年かけて第2次大戦について学んだ」ということです。
ドイツの『政治教育』の国の指針とされるのが、『ボイテルスバッハ合意』です。
1976年に、著名な政治教育学者らが政治教育の理念を協議し、3原則を定めました。
1、教師が生徒に自分の意見を押し付けてはならない
2、論争のある事柄は授業でも議論があるものとして扱う
3、生徒に自らの関心・利害に基づいた政治参加能力を獲得させる
これらは現在も、国の教育指針として位置づけられています。
3原則の、合意の背景です。
ドイツは州ごとに憲法や議会などが存在する連邦制です。
1970年代は、西ドイツ、東ドイツに分かれていましたが、西ドイツで各州の大臣が、カリキュラムを自分の所属政党に近づけようとして偏った内容になっていました。
そのため『政治教育3原則』によって教師の立場を中立にし、生徒の議論を活発化させました。
■日本が目指すべき『平和教育』とは?
これからの日本が目指す平和教育についてです。
「センシティブなテーマに触れられない、一方の立場をとってはいけないという風潮にしてはならず、むしろその問題が論争含みだと明記し、論争を生む理由を含め、ディベートできるような教育をしてほしい。形ばかりの中立にとどまらず、両論を踏まえての、活発な議論を」
「理想論的・性善説的な『平和教育』にはいろいろ限界があるため、違う視点とその背景を知る。そして『パワーゲーム的に動いてしまうリアル世界の中でいかに戦争を回避するか・させるか』のダイナミズムを考える『平和戦略教育』が重要になってくるのでは」
「平和教育は当事者の声を聞き、自分自身も当事者になって考えることから始まる。戦争は当事国の間で捉え方が違い、原爆についても、日本とアメリカでは捉え方が違う。核兵器禁止条約も、加盟・非加盟で意見が分かれる。そうした違いを含めて考える必要がある」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年5月28日放送分より)















