リニア中央新幹線の静岡工区について、静岡県の鈴木知事は着工を容認することを表明しました。
静岡工区が着工となり、開業へ大きく前進しますが、停滞した約9年間で工事費は倍増しています。
採算性を含め、今後の課題を見ていきます。
■静岡がリニア着工容認 開業いつ?移動時間は大幅短縮に
7月7日、静岡県の鈴木知事は自然環境に与える影響への懸念などから、リニア中央新幹線の品川から名古屋間で唯一未着工だった静岡工区の着工容認を表明しました。
「静岡工区の重大な課題にメドがつき、リニア事業は大きな節目を迎えた」としています。
リニアのこれまでの変遷です。
1962年に研究がスタートし、1972年、初めて有人での浮上走行に成功、2014年にリニア中央新幹線が着工しました。
当初は2027年の開業を目指していましたが、延期となっています。
静岡工区の工事期間は10年と想定されているため、仮に2026年中に着工した場合、開業は2036年以降となる見込みです。
リニア中央新幹線は車両と、ガイドウェイとよばれるリニアが走るためのU字型の線路の間の磁力によって、約10センチ浮上させ走行します。
『自動運転システム』による無人運転で、速さは、新幹線で世界最速となる時速500kmです。
移動時間はどうなるのでしょうか。
リニア中央新幹線は品川から名古屋間の86%がトンネルです。
東海道新幹線で約1時間30分ですが、最速40分になります。
品川から新大阪間は、東海道新幹線で約2時間20分ですが、最速67分になります。
名古屋から大阪間はルートや駅は未定ということで、まだ着工には至っていません。
料金です。
当初は、品川から名古屋間の料金を、新幹線『のぞみ』の料金にプラス700円と想定していましたが、現時点では未定です。
開業時期の経済情勢などを踏まえて、開業が近づいた時点で決定します。
座席数や運行ダイヤについて、東海道新幹線と同様の16両編成を予定していますが、運行ダイヤや座席数など含めて検討段階だということです。
実際に乗ってみるとどうなのでしょうか。
鉄道に詳しい経済ジャーナリスト大坂直樹さんは、2025年10月にリニアに試乗しました。
大阪さんによると、発車直後は、現行の新幹線同様に車輪走行ですが、約1分後、「タイヤでの走行から浮上走行に移ります」というアナウンスが流れ、時速150kmに到達すると、車輪の走行音が消えて浮上走行に。
発車から約3分後には、時速500kmに到達したということです。
「ほぼトンネルで景色は見えないが、車内の天井がスクリーンになっていて、走行位置や速度などを投影」
「座席は軽量化のため薄型でリクライニング機能はないが、座り心地は新幹線と大差ないレベル」だということです。
■リニアなぜ必要?品川〜大阪67分 巨大経済圏に
リニアを建設する意義について、JR東海の主張です。
1つ目は、日本の大動脈を2系統にすることで、大規模災害が発生した際、東海道新幹線だけではない交通機関の抜本的な備えになるといいます。
また、現行の東海道新幹線の利用者が、一部リニア中央新幹線にシフトすることで、東海道新幹線の輸送力に余力が生まれ、人々の流動が増加するとしています。
2つ目は、関東圏・中京圏・近畿圏の3大都市圏の約6600万人の移動が簡単になり、1つの巨大都市圏になるとしていて、移動時間短縮に伴い、経済の活性化や多様な生活を実現できるとしています。
■工事費“倍増”人口減で採算とれる?経済効果は?
物価高などにより、リニア工事費の試算が増加しています。
品川から名古屋間の工事費の試算は、2018年は5兆5200億円でした。
その後、2021年に7兆400億円に増加し、さらに、2025年の試算では11兆円となりました。
資材費高騰などで、工事費の試算は7年で2倍となっています。
リニアの工事費は政府から3兆円の融資(財政投融資)を受けてはいますが、JR東海は後に全額返済するとしていて自己負担となっています。
工事の増加分の費用は、鉄道収入を軸に、収益拡大とコスト削減を進め、不足分は社債や借り入れで調達するとしていて、財政投融資の追加はしないとしています。
JR東海の経常利益は、2026年3月期で、7809億円となっていますが、JR東海が出した、リニア開業翌年度の試算は、650億円となっています。
リニアの工事費などが負担になり、経常利益が、現在の10分の1以下になるという試算です。
ただ別の試算もあります。
青山学院大学の福井義高教授が出した試算では、工事費の試算を今よりも5兆円高い16兆円とし、輸送量が20%減ると見込んでいます。
この前提での試算だと、リニア開業翌年度、2900億円の赤字を計上する可能性があるとしています。
「今後のさらなる物価高と人口減少を考えると、JR東海の想定が甘い可能性がある」と話します。
工事費の試算についてJR東海のコメントです。
「今後の物価や労務費の上昇などのリスクを正確に見通すことは難しいが、当時の経済環境を前提に、将来の更なる工事費高騰リスク(1兆円)を見込み、全体工事費11兆円と見込んだ」としています。
リニア開業後の経済効果についてです。
2013年に出された、シンクタンクの経済効果の試算では、開業年を2025年として、50年間の効果を算定していて、少なくとも10兆7000億円の経済効果があるとしています。
現状の工事費試算は11兆円なので、工事費を上回る経済効果となるのは、開業50年後以降ということになります。
「中間駅が置かれる地方は、既に人口減が深刻。開業時期が遅れるほど、その地域での経済活動の担い手が減り、リニア開業で見込んでいた事業が実現できなくなる可能性が高まり、想定した経済効果が見込めない恐れがある」と話します。
■大地震への備えは?「ほぼトンネル」地下からどう避難?
地震についての懸念です。
南海トラフ地震について、M8〜9、最大震度7クラスが、今後30年以内に発生する確率は『60〜90%程度以上』と想定されています。
地震によるトンネル内への影響について、JR東海によると、一般的に地震の揺れは地下深くなるほど小さくなる傾向があるといいます。
また、リニアは阪神淡路大震災を機に見直された耐震基準に従って設計・建設され、この基準に従って建設された構造物は東日本大震災においても深刻な被害は受けておらず、今後も最新の耐震基準に従って設計・建設するとしています。
「磁力により車両を常に上下左右の中心に位置させようと力が働くため、脱線することはない」ということです。
避難方法について、異常事態の際には、原則として次の駅またはトンネルの外まで走行しますが、トンネル内で停車し、車両から降りて避難せざるを得ない場合は、対向線路に救済用の列車を運行させる、もしくは、避難通路を通りエレベーターまたは階段で地上へ避難させるとしています。
非常口は5キロごとに配置されます。
「南海トラフ地震で考えた場合、東海道新幹線と比べて被害を受けにくいが、地震の規模や震源域によっては被害が出ないとは言い切れない。86%がトンネルの中なので、地上に出られないときのオペレーションや、備蓄の確保などは非常に重要になってくる」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年7月8日放送分より)















