日本の年間死亡者数が推計を上回るペースで増加し、「多死社会」への突入が当初の予測よりも早く進行している。都市部を中心に火葬場の不足に伴う「火葬待ち」の長期化や民営火葬場の料金高騰が深刻な問題となるなか、地域ごとの運用の違いやインフラの偏り、住民感情といった多角的な課題について、『ABEMA Prime』で議論が行われた。
■多死社会の加速と都市部で深刻化する「火葬待ち」の現状

厚生労働省の統計データによると、昨年の日本の死亡者数は158万9489人に達し、想定を約7万人上回った。死者数の増加ペースは当初の推計より5年早まっており、これに伴い首都圏を中心に「火葬待ち」が長期化し、横浜市では市営斎場での待機日数が平均5日を超えるなど需給逼迫が懸念されている。東京23区内の現状について、東京都葬祭業協同組合の鳥居充理事長は次のように説明した。
「実は東京23区内で火葬待ちは起きていない。(23区内の)民間会社には火葬炉に等級があり、一般が8万7000円、特別炉が12万3000円、さらに上には16万円と、火葬だけでその費用がかかる。待ちたくなくて、お金を払ってでも希望の日程で火葬したいという方が、高級な炉を使っている状況だ。ただ(23区外の)公営火葬場は全く足りておらず、こちらで火葬待ちが発生している」。
一方、ジャーナリストで僧侶でもある鵜飼秀徳氏は地域による運用の違いを指摘。鵜飼氏が住む京都は、人口に対して火葬場が多いわけではないが「京都市の火葬場で混雑した経験はほとんどない。違うのは運用の仕方。東京は予約制だが、京都は申し込み順。待機時間もなく、どんどん焼く」説明し、その上で東京に関しては、やはり「人口に対して火葬場が極めて少ない。その中ではよくやっている方」とも述べた。
東京23区内においては、9つの火葬場のうち7つが民営で、そのうち6カ所を特定の企業(東京博善)が運営し約7割の火葬を担うという特殊な背景がある。同社が外資系企業グループの傘下に入って以降、火葬料金は5万9000円から9万円へと値上がりした。
この現状に対し、EXIT・兼近大樹は、ビジネス化が進む冠婚葬祭のあり方に疑問を呈した。
「火葬にお金がかかることにずっと納得がいっていない。葬式も同じだ。冠婚葬祭にそこまでスピリチュアルなものをたくさん込める必要があるのか。それにビジネス化もしすぎている。ブライダル関係もすごく高いし、安くすると『ケチっている』と言われたり、周りからの目もある。割と格差が出る社会なので、もう少し全員一律ぐらいにしてくれた方が助かる人がいる」。
こうした費用の負担や運用の逼迫を緩和する選択肢として、鵜飼氏は先に火葬を済ませて遺骨の状態で葬儀を行う「骨葬」の普及を提案。「人が亡くなったら先に火葬をしてしまい、後から葬儀をする。そうすると時間の使い方がすごくフレキシブルになり、火葬の時間が集中しなくなる。今はだいたい午前中に葬儀をして出棺、昼過ぎに火葬が集中している」とも述べた。
■周辺住民の反対と「迷惑施設」視される火葬場新設の壁

火葬場の不足を解消するために新設や増設を進めるべきだという意見もあるが、現実には地域住民の強い反対運動に直面することが多く、容易ではない。鳥居氏は行政が設けている法的ルールの厳しさが新設を阻む最大の障壁になっていると指摘した。
「東京の場合、火葬場は近隣の建物から250メートル離さなければいけないルールがある。ただこれは、火葬すると煙が出て、近隣の方の迷惑になるかもしれないという公衆衛生上の問題だった。ただ今の火葬炉は、煙が全く出ない。こういうルールをなくしていかないと、小規模でも新たな火葬場の整備は難しい」。
ただ鵜飼氏は、墓じまいなどが進み、墓じまいなどでスペースが生まれつつある寺の敷地内に火葬場を設ける案について、檀家らの感情的な抵抗感を指摘。「昔は田舎の方では『火葬寺』といって、ご遺体を焼いていた。それがどんどん火葬場に集約され、大規模化したため、火葬寺が消えた。そのため逆に死に対する忌避感がすごく高まった」と、寺であっても反発が起きる背景を語った。
施設不足だけでなく、現場を支える人材不足も深刻である。鳥居氏は業界のなり手不足について次のように語った。
「残念ながら、子どもが大人になった時になりたい職業のトップテンに『火葬場』が入ることはまずない。我々、葬儀業界や火葬場で働きたい人はどんどん少なくなっている。今後、火葬場で働く人をどれだけ維持できるのか、民間の火葬場が今の稼働率を維持できるのか。また、人件費を確保するために給料を上げようとなると、火葬料金を上げなければいけなくなる」。
また、鵜飼氏は「これから火葬場のパンクに気を付けるべきは大規模災害。首都直下地震、あるいは富士山の噴火。特に富士山の噴火となれば遺体を動かせないため、阿鼻叫喚の世界になる。遺体が搬出できない、火葬場も機能しない。こういう議論がなされていない」と、将来的な大規模災害発生時におけるリスク管理の不備を指摘した。
最後に、これからの社会における弔いの受け皿について、鳥居氏は行政が果たすべき本来の役割を強く訴えた。
「当組合では、身寄りがなくお亡くなりになった方を受け入れられるように納骨堂を設けているが、本来であれば、これは行政がやるべきこと。社会がこういった方を受け入れられる器を作るということは非常に大事」。
一方、鵜飼氏は、形骸化する死後の儀礼よりも、生前の人間関係の本質に向き合うべきであるという見解を示し、議論を締めくくった。
「お坊さんらしいことを言うのであれば、最後のお別れにこだわるのではなく、生きている間にしっかりコミュニケーションを取っておきましょうということ。最後は別に簡素でもいいと思う。生きている間に、生きている人を大事にした方がいい」。 (『ABEMA Prime』より)