大阪・天王寺動物園に今春、新たなアジアゾウ3頭が仲間入りした。マレーシアで保護されたこの3頭は、マレーシアの動物園と結んだ保護プログラムに基づいて受け入れられ、4月から一般公開されている。
しかし現地では「彼らには故郷に戻り、森で幸せに暮らす権利がある」との声が上がり、返還を求めるオンライン署名が17万3000筆以上に達した。
動物園をめぐっては、種の保存・教育・研究などの役割があるが、「人間の娯楽のために動物の自由や権利を奪っている」との批判も根強い。『ABEMA Prime』では、天王寺動物園のアジアゾウ受け入れ問題を入口に、動物園の必要性について考えた。
■「ゾウからしたら狭い」vs「基準の10倍以上の広さがある」

国際動物権利団体「PETAアジア」の広報担当・今井レイラ氏は、天王寺のゾウを返すべきだと発信している。その理由として「ゾウ本来の生態が抑圧されてしまう」と語る。「世界には『サンクチュアリ』と呼ばれる広大な保護区が存在しており、そういったものがあれば、ゾウらしく生きられる環境だと思う」。
同じく「PETAアジア」のボランティアメンバー・すみれ氏も「ゾウは1日に何十キロも移動する。どれだけ福祉が整っていても、本来動物が生きるべき場所ではない」と主張する。
一方、体験型動物園「iZoo」園長・白輪剛史氏は、天王寺動物園の飼育環境について「日本の動物園の中でもトップクラスに広い」と評価する。「国際的な基準があり、その10倍ぐらいの広さがあると思う。十分飼育と動物の福祉に関わることが担保できると認められた広さより、もっと広いのがこの施設だ」。
これに対し今井氏は「人間からしたら広くても、ゾウからしたらこれじゃ足りない」と反論する。ゾウは足の裏で何キロも離れた個体とコミュニケーションを取れるという習性にも触れ、「自由に旅することができない状況だし、コミュニケーションも取れない」。また、PETAアジアのスタッフが撮影に赴いた際、「隅っこで、壁の前に頭を向けてずっと動かなかった状態があった」とも明かす。
天王寺動物園のゾウ舎の広さは0.66ヘクタール。今井氏が理想として挙げたタイのサンクチュアリ「ブンロッツ」は243ヘクタールほどとされており、「かなりの違いがある」と指摘する。白輪氏は「動物園はあくまでも飼育する専門の施設であって野生とは切り離している。野生ではこうだからという話を動物園に持ち込んでも、この話は成り立たない」と応じた。
■「動物園不要」論の背景と、受け入れ先問題の現実

今井氏は動物園そのものについても「見せ物にして人間の娯楽のために動物を利用しており、それは搾取だ」と明言し、「展示自体は良くない」との立場を示している。女性がショーケースに入って見られている状態に重ね、「本人が望んだことなら問題ないが、動物には聞けない。相手の自由を奪って私たちは楽しんでいる。それは相手からしたら暴力だと思う」と語る。
白輪氏はこれを「100か0かの話ではない」と受け止め、「実際に動物を見ることで、画面ではわからない匂いや大きさの迫力も学べる。飼育していく中でわかってくる生態も多く、その知見なしに自然の保全はできない」と動物園の意義を主張する。また、「野生個体を捕まえて連れてくるのはワシントン条約の問題もあってほぼ不可能。共同保護計画という国際的な取り決めに基づいて連れてくるのであり、見せ物にしたいから連れてくるという話ではない」と強調する。
■「動物は私たちと同じように、誰かだ」
今井氏は「保護施設として本当に機能しているなら」と前置きしつつも、「サンクチュアリは見せ物にしない。触れ合いもさせない、ツアーも組まない。本当に動物本位に作っている」と動物園との違いを説明する。また「檻の中に閉じ込められている動物を見せることは、動物を監禁していいんだという教育になってしまう」と主張した。
また、宇都宮動物園で50年間ひとりで飼育されているゾウ「ミヤコ」を引き合いに出し、「ゾウは群れで暮らす動物なのに、一頭で50年生きさせられている。その姿を動物はこうなんだよと子どもたちに見せるのは教育として間違っている」と語り、動物園の在り方を改めて問い直した。
(『ABEMA Prime』より)