男性化粧品市場はここ5年でおよそ2倍に成長し、30代から50代男性への調査では6割以上が「美肌になりたい」と回答するなど、メンズ美容ブームが加速している。しかしその一方で、美容を「当然のもの」とする風潮に生きづらさを感じる男性や、男性の外見に向けられるルッキズムを問題視する声も上がっている。中年男性がパーカーやハーフパンツを着ることで、ネット上で批判の声が飛び交ったことも話題になった。『ABEMA Prime』では、男性美容ブームにつきまとうルッキズムと、美容をめぐる男性たちの本音について考えた。
■成長する男性美容、するべき?しなくてもいい?

約4〜5年前から美容に取り組み始めたという爪切男さんは、そのきっかけをこう振り返る。「体重が125キロぐらいあって、ありのままに生きているからいいじゃないかというつもりで、近所の公園でコーラをガブ飲みしていたら、下校中の小学生が笑っていた。耳を澄ましたら『この公園でゴブリンがコーラを飲んでるね』と言っていた」。傷ついたわけではなく、発想を転換したと語る。「じゃあ、ゴブリンと呼んだおじさんがある日ちょっと綺麗になっていったら、君たちはどう思うんだろうと思って、美容をやってみようかなと思いました」。
美容を始めて変わったことを聞かれると、「おじさんは何もしていなかったので、肌の質は伸びしろしかなく、翌日から効果が出た。でも一番変わるのはマインドだと思う。当時恋人だった今の妻に素直に『美容ってどうやったらいいの』と聞けて、そのことが人との関係性も良くしていった」と語る。現在は洗顔、シートマスク、化粧水、保湿を基本としており、「入り口はオールインワン1本でいい。僕でもできるんだからやってほしい」と呼びかける。
一方、メンズ美容ブームに生きづらさを感じているという49歳のナベさんは、「ネットを中心に展開されていることが刺さるというか、強要されている感じがする」と話す。「自分の世代はいろいろなことにアップデートしなきゃいけない、適応していかなきゃいけない変化の時代を生きてきた。ネットもなかったけどある時代になっていった。おじさんは疲れている」と率直に述べる。
かつては男性が美容に興味を持つと揶揄されたり馬鹿にされたりする時代があり、30代のころは男性だらけの職場で女性と接する機会もなく、無頓着になってしまったという。今は学校行事で若い父親たちの肌の手入れに気づき、「やらなきゃいけないのかな」と感じつつも「無理にする必要はないよな」という葛藤があると話す。
実際に美容を始めようとしたこともある。「EXITのりんたろー。さんがテレビで美容への興味を発信されているのを見て、そういうのを発信できる時代になったと感じた。自分は美容に興味があるというか、美容に興味がある人に興味がある」。妻から「お金かけないんだったら始めていいよ」と言われているといい、一歩踏み出す可能性もにじませた。
また番組の取材に応じた43歳の鈴木さんは、成長する男性美容について「結構プレッシャー。息苦しさを感じる」とも語る。
メンズ美容が当たり前のように語られる昨今、「何か肌が荒れている人を見た時に、『この人は自己管理ができてない』と捉えられる。仕事の同僚、周囲への配慮にも欠けている人なのではと、単に肌の状態一つで、何か審査されているようなことに繋がりかねない」と警戒する。さらには「やらない自由というのも本来あったはず。今はやらないと減点される空気がある。半ば義務としてスキンケアをやらないといけない、それで男性の息苦しさが増える原因になっているかもしれない」と語った。
コラムニスト・小原ブラスさんは、男性美容のあり方について「女性の美容をそのまま男性に乗っけるのではなく、男ならではの美容を開発していかないといけない。化粧品メーカーがビジネスでどんどん売りまくって、それに乗っかっている様はどうなんだ」と疑問を呈する。すね毛の脱毛についても「脱毛メーカーが押し売りしている。歳を取ると血管が見えてきたり乾燥が目立ったりする。それだったらまだすね毛がある状態の方がよく見える、という現象もある」と語る。
■女性から見た男性美容「寝る前に5分、スマホを見るなら美容を」

中年男性が美容をしない理由がわからないと語る女性・やむさんは、「できればやった方がいい。寝る前の5分、スマホを見るくらいだったらオールインワンを塗ればいい。美容は加点式」と主張する。やむさんが美容をすすめる背景には、清潔感の基準が時代とともに上がったという実感がある。「変化の時代だと思う。ガラケーからスマホになったのと一緒なんじゃないか」と述べる。
男性の外見への視線についても、「街で歩いていたり、店で接客で何か聞きたいことがあるとき、汚らしいおじさんに聞くよりも、清潔感があって整っている方に聞いた方がちゃんとした情報が来るんじゃないかという思いはある」と率直に語る。また、SNSでよく見かける「イオンおじさん」といった話題について、「ユニクロやGUのマネキンコーデもあり、おしゃれな中高年男性のコーディネートもSNSに載っている中で、わざわざ女性から見て『うーん』となるものを選ぶのはなぜなんだろうというところから嫌悪感につながっていく気はする」と分析した。
一方、小原ブラスさんはこの議論に異を唱える。「みんながいいものを選ぶようになっても、女性はどうせ新たにキモい、これは良くないというところを見つけ出して叩くだけ。イタチごっこだ。自分より美容や見た目に関して下に見ておいた方が女性としての自分の価値も高まるわけだから、基準はどんどん上がっていくだけだと思う」と述べる。
これを受けてナベさんは、「SNSが普及してシェアの文化があるんだから、情報を押し付けるのではなくて人と人の間にそっと置く、『選択は自由ですよ』というコミュニケーションの取り方ができる社会だったら、美容に詳しい人が発信してくれてそれを見て興味を持って自分で選ぶ、というところでいいのでは」と語った。 (『ABEMA Prime』より)