今、話題となっている、個人向け国債の拡充と優遇。政府は今月に策定する予定の経済財政運営の指針、「骨太方針」に「個人向け国債の魅力向上や国内投資家層の拡大を図る」と明記するという報道が出ている。国債とはそもそも国の借金。これまでその国債を大量に買い入れていた日本銀行が、買い入れ額を段階的に削減、保有層の多様化が求められていた。
政府、与野党の中では先月から活発な議論があり、片山財務大臣は、「国債は安定した投資先であるが余り選ばれていない。その分伸びしろは大きく、個人向け国債の拡充には大きな意味がある」と強調した。自民党内からは、個人向け国債の相続税を減免すべきなど、提案があったという。一方で国民民主党は、国債をNISAに組み込むべきだと主張。
こうした動きにXでは、「リスクが少なく、高齢者や安定志向の人には、魅力的な案では?」「国の借金を国民が背負えと言うの?」「国債だけを優遇すれば、国内企業への投資に悪影響を与えかねない」など賛否様々な声があがっている。
国の借金である国債を国民に広く買ってもらう意義はどこにあるのか。『ABEMA Prime』では、専門家と、個人向け国債の拡充を進める自民党議員とともに考えた。
■「日本人にとってはこれほど安全な資産はない」

自民党・衆議院議員、「資産運用立国」議連メンバーの神田潤一氏は、個人向け国債の拡充を進める議論の背景について「個人資産は2300兆円あるが、そのうち国債を保有している分は20兆円程度と全体の1%以下だ。これはあまりに少ないのではないかというのが大きな問題意識だ」と説明。
投資の原則である「分散」という観点からも、国債をもう少し活用した方が国民の資産形成に資するとし、「個人の皆さんにもう少し持っていただきたいというのが今の議論の起点になっている」と語る。
日銀は国債の買い入れ額を減額していくことを決めていて、“買い支える”プレーヤーがいなくなったという指摘もある。自民党の議員からは、国債市場の安定化も目的のひとつという言及もあったが、これについてはどう考えているのだろうか。神田議員は「完全に否定するわけではないが、最も大きな目的ではなく、目的の中の一つではある」。国債の購入を強力に推し進める意図については「めちゃめちゃ購入してほしいというわけではない」とも付け加え、あくまで分散投資の選択肢としての位置付けを強調した。
一方、SEKAIA株式会社CEO・薄井シンシア氏は、「商品として投資として、こんなに人口が減っている国に投資するのかと逆に思う。選択肢として増やして買いたい人は買えばいいと思うが、個人的には日本の国債は買わない」と率直な考えを示した。これに対し神田氏は「日本の成長性を信じていただけないのは非常に残念だ。これから日本はしっかりとした国であり続けるし、経済成長もしていく。少なくとも今よりももっと皆さんに持っていただいてもいい」と返した。
■「定期預金より利回りは高い。物価上昇率に負けないための選択肢」

個人向け国債の商品としての魅力について、投資教育家の山崎俊輔氏は「メガバンクが3年で0.6%、5年で0.7%、10年で0.9%なのに対し、個人向け国債の利回りは2%に近づいてきている。定期預金に置いておくよりも利回りは高くなる」と解説。
さらに、物価上昇との関係を挙げ、「昨年のCPI(消費者物価指数)が2.6%、直近5月のデータが1.5%。これと比べると今募集されている国債の利回りはなかなかいいところに来ている。物価上昇率に負けないようにするための選択肢として、国債の魅力は語られてもいい」と補足した。
商品の特徴としては、「10年の個人向け国債は変動型で、定期的に利回りを見直してくれる。これから金利がつく時代になった時に3年目・5年目に高い金利に洗い替えされるのは魅力的だ。また、満期まで持っていれば元本割れを気にしなくていいという点は、債券で運用する投資信託やETFが金利上昇時に価格下落するリスクとは異なる」。
購入対象としては「定期預金に何千万も預けているような人は、少し個人向け国債を買ってもいいのではないか」とし、特に高齢世代については「60代・70代でさすがに株式投資信託はと思いつつ、NISAの利息非課税枠があるなら国債を入れてもいいという方には魅力があるかもしれない」と述べた。
■商品設計の見直しと「NISAへの組み入れ」論
神田氏は現在の個人向け国債について、商品設計の改善が必要だとする点について、「10年の変動金利が5年の固定金利よりも低くなっているが、長く持つのだからもう少し金利が欲しいというのが通常の商品性のはずだ。10年の金利の決め方はゼロ金利時代のルールに基づいているため、金利が上がってきた今の環境では見直す必要がある」。
また、現状の最長年限についても、「20年・30年と長く持ちたいというニーズもある。また物価が上がってきている中で、物価連動型の金利設計も求められるのではないか」と語った。
国民民主党が主張するNISAへの国債組み入れについては、「選択肢としてはあり得るが、まずは商品性や長期・物価連動といった点を考えた上で、ニーズが十分集まるのであればNISAへの組み入れや税額控除まで検討すればいい。いきなり進むものではない」との立場を示す。
山崎氏は「リターンだけ見てはいけない。全世界株のインデックスファンドは過去には高い利益が出ているが、全世界的な不況が来れば30〜40%下落する可能性もある。リスクが高いから高いリターンが期待できる商品なわけで、そのリスクとのバランスで考えるべきだ」と主張。
国債を検討してみようと思った人に向け、神田氏は「各証券会社でも取り扱っているが、商品性もこれからもっと魅力的に変えていく。今投資してもいいが、もう少し議論の行方を見てから投資するというのも一つの選択肢だ」と話す。長らく低金利が続いたことで国債も預金もほとんど差がなかった時代が続いたが、今後は金利上昇に伴いニーズも高まっていき、「日本人にとってはこれほど安全な資産はない」との考えを述べた。
(『ABEMA Prime』より)