近年、発達障害への認知は急速に広がり、早期発見や早期支援の体制も着実に整備されてきた。しかし、身近なテーマになった一方で、正しい理解が追いついていないという問題が浮上している。それは「発達障害のカジュアル化」。名前だけが一人歩きし、深刻な当事者の困難が過小評価されてしまうケースも生じている。
【映像】4週間出していないゴミ、賞味期限切れの牛乳…ADHD当事者の部屋(実際の映像)
実際にXでも「大した障害じゃない」「努力をしない言い訳だ」「配慮を求めるばかりで傲慢だ」などの声があがっている。
『ABEMA Prime』では、発達障害のカジュアル化が進む社会において、どう理解を深め、当事者とどう向き合うべきかを考えた。
■「軽い人がいるということは、重い人がいないことではない」

発達診断を行う小児科医のともひろさんはADHD当事者だ。「片付けられない、忘れ物が多い、役所の書類で抜けが生じる、物事を順序立てて進めることが難しい」といった困難を日常的に抱えている。また、今年だけで傘を20回以上置き忘れ、自宅では3〜4週間分のゴミが玄関に積まれたままになることもあり、「散らかっていると言われたら、散らかっているなとは思うが、生活してて目に入ってこない」と語る。
こうした困難に対処するため、活用しているのが生成AIだ。散らかった部屋をカメラで撮影してAIに投げ、片付けの手順を一つ一つ提示してもらうことで、何から手をつければよいか分からないという障壁を乗り越えている。「片付ける時の問題は、何から手をつけていいか分からないというところ。一つずつ言ってくれれば、じゃあそれはやろうかとなって、結果的に片付く」と話す。そのほか、「手帳とアプリの両方でメモを取ること、頭の中のごちゃごちゃを書き出して客観的に眺めることも、日々の生存戦略として欠かせない」という。
診断を受けたのは20代半ば、社会人になってからだった。「結構本当につらい時期だったので、ある意味、ただの努力不足じゃなかったんだなという救いの面もあった。一方で、どうしたらいいのという迷いや不安もあった」と振り返る。医師として患者を支える立場でありながら、当事者として苦悩と向き合い続けているともひろさんは、「こうした経験が外来でのかかわりにもプラスに働いている」。
カジュアル化について最も問題視するのは、軽症例と重症例が混同されてしまう点だ。「軽い人がいるということは、重い人がいないということではない。そこが切り分けられていなくて、『みんなそうなんだ』となってしまっていることが一番の問題」と指摘する。また、「診断の基準についても誤解が広がっている」として、「SNSでADHDやASDの特性がずらっと並んでいて『これめっちゃ当てはまる』というものがあるが、大事なのは、当てはまるかどうかではなく、当てはまった上で困っているかどうか。そのもう一段階が重要だ」とした。
■「でも弁護士でしょ」と言われることが一番つらい

40代半ばでADHDの診断を受けた「なんもり法律事務所」の南和行弁護士は、「忘れ物や、時間と曜日がテレコになってえらいことになったりして、自分を責めてすごくしんどくなった。でもADHDなんかじゃないよねと思っていたが、お医者さんに行って検査をしたら、くっきりADHDの診断と言われた」と明かす。検査でIQ136という結果が出たことから、医師には「IQが高いから乗り越えてきた」と説明されたという。
南氏のパートナーはASDの診断を受けており、慢性的なうつ状態にあるという。役所の窓口で曖昧な説明に対して何度も疑問を指摘したところ、クレーマーとして別室に連れて行かれたこともあると明かし、「彼の場合は行く先々でそういうことが起きて、すごく落ち込んでしまう。ASDやLDの方って、なんであなたはできないのとずっと言われ続けてつらい思いをしている。実際に困難になっているところをすごく見てほしい」と訴えた。
南氏が最もつらいと感じるのは、「でも弁護士でしょ」という言葉だという。ともひろさんも同様の経験を持つ。「勉強はそれなりにできていた方だったので、余計に特性が努力不足に置き換えられやすい。勉強できるのに宿題を提出できないのはやる気がないだけでしょ、みたいになる。でも僕の中では完全に別枠で、勉強は自分のペースでできる。そこの理解がまだ進んでいない」。
■もやもやしたまま受け入れることが大事
ともひろさんは理解度のフェーズを「知らない→知ったつもり→複雑さを知る→その人の個別性を知る」という段階で整理しており、現在は多くの人が「名前は知っているが詳細はまだ」という段階にあると見ている。「特性はADHDひとつとっても不注意・多動性などがあり、しかも人によって違う。さらに環境によっても出方が全然違う。例えば片付けができないという特性は、一人暮らしの時はそれほど問題にならないが、家族と住むと相手の負担になる」と具体例を挙げ、複雑さへの理解が次の段階へ進むために不可欠だと話す。
当事者が自ら特性を開示することについては、「診断がついた前後の頃はむしろ隠そうとしていた。制度を整えても、言えない人たちは絶対にいる。周囲からアプローチをかけないといけないのは理想としてある」と語った。南氏も「問題が起こった原因が、ちょっとの不注意や努力不足ではなく、この人の特性に起因する、避けられなかった問題なんだと理解してもらえる部分が欲しい」と訴えた。
社会の理解度を上げるために何が必要か。ともひろさんは、「発達障害って個性だよね、障害だよねって言い切ることの難しさ。もやもやする感じを、皆さんが持つことが大事なのかと思う。分かった気になってしまうと、それ以上調べなくなる。まずは、もやもやしたまま受け入れるということが大事だということを、何より伝えていきたい」とした。
(『ABEMA Prime』より)