夫婦間で起こる精神的暴力「モラルハラスメント」。
【映像】モラハラ前の夫が見せる笑顔…夫婦の“結婚写真”(実際の映像)
殴る蹴るといった身体的暴力とは異なり、言葉や態度によって相手を傷つけ、追い詰め、支配する行為だ。女性側が離婚調停を申し立てる理由でも、精神的虐待が10年以上にわたって上位を維持しており、人知れず苦しむケースも多い。2023年には改正DV防止法が成立し、精神的暴力も対象に加わった。
なぜ人はモラハラをしてしまうのか。『ABEMA Prime』では、かつてモラハラを繰り返していた夫とその被害を受けてきた妻に話を聞いた。
■「自分の中のマイルールがあって、家事は妻がするべきだと思っていた」

大阪在住の太田基次さんと瑠美さん夫婦。現在は仲睦まじく見えるが、かつては基次さんのモラハラにより、離婚寸前にまで追い詰められた経験を持つ。当時について、基次さんは、「家に帰った時にシンクに食器が残っていると、イライラしてしまっていた。シンクに投げたりとか、かなり腹立っていた」。また、掃除が行き届いていないとしつこく注意したり、着る予定だったワイシャツが洗濯されていないと激怒したりもしていたという。
その根底にあったのは、一方的に抱いたマイルールだった。「その頃、家事は妻がするものだと思っていた。『なんで俺がこんなことしないといけないの?』『これは妻の仕事でしょ』っていう認識なので、普通に被害者みたいな感じでいた」と語る。
瑠美さんは当時の心境を「いつ爆発するかわからない爆弾をずっと持っている感じ。これをあと何十年か続けるのかって思った時、無理かもって思って、離婚するしかないのかなってところまできた」と明かす。
それでも従い続けてしまったのは、「夫の言っている主張が100%間違いではない。私も至らない点はもちろんあるわけで、それをネチネチと長時間詰められると、夫が正しくて私が間違っているという図式にだんだん当てはめられていった感じだった」と説明した。
■「モラハラワールド」の中で被害者は自分の感情を見失う

モラハラ離婚の解決数は国内トップクラスの高井重憲弁護士は、こうした構造を「モラハラワールド」と表現する。「客観的に見るとおかしいことであっても、その夫婦間だけでの関係性が正しいものとして受け止められてしまう。それによって、奥さん側がなかなか逃げられなくなっていく関係性が、時間をかけて作られてしまう」と解説。
正当な指摘とモラハラの区別については、「夫婦は本来対等であるべきで、その中で家のルールを作っていくことが必要になる。お互いが納得した上であれば、どちらかのルールに従う形でも構わない。問題は、マイルールを一方的に押し付けることで対等な関係でなくなっていくことだ」。また、モラハラ加害者は「何も言っていないことにいきなりぶち切れる」傾向があり、指摘の基準点が相手に分からないことがポイントだとも指摘する。
基次さんがモラハラに至った背景について次のように自分自身を分析する。、「父から幼少期にDVを受けていて、男尊女卑の傾向が強い家庭で育った。自分自身に発達特性もあって、感情が切れやすいところがあった。そういうのが複合的に重なって、父と同じようなモラハラ的なことをしてしまっていた」。後にASDとADHDの混合型と診断され、「共感力の低さや気持ちを言葉にすることの苦手さが幼少期から続いていた」ことも明かした。
モラハラがいつから始まるのか。高井弁護士は、「婚約した瞬間に変わる人もいれば、入籍した瞬間に変わる人もいる。子どもができて奥さんが旦那に構わなくなることがきっかけになるケースも多い」と答える。見極めのポイントとしては、「それ常識だろう、という言い方を頻繁にする人は要注意。その思い込みを結婚後も全部押し付けられる可能性がある」。
■「自立した態度を見せ始めた時、焦り出して自分の問題と向き合わざるを得なくなった」
離婚寸前だったはずの2人が、なぜ今も一緒にいるのか。転機となったのは、瑠美さんがカウンセリングで「モラハラを受けている」と指摘されたことだ。その後、「夫が意味のわからないことを繰り返すのならば、それはそれで終わりだろうと思っていた。やり直す気持ちは前提としてあったけれど、最後に意思の疎通が取れるかどうかのチェックをしたかった」。
一方の基次さんは、モラハラを告げられた当初は「なんでそんなことを言われなきゃいけないのか」と腹が立った。それでも、瑠美さんが友人と会うようになったり、実家に帰ったりし始めるとと気持ちは変わっていった。。「自立した態度を見せ始めた時、焦り出して、自分の問題と向き合わないといけないという風に変わっていった」。
その後、基次さんは仕事を減らし、睡眠導入剤や治療薬を服用するなど複数のアプローチで変化に取り組んだ。「やっぱり自分自身を理解することが一番大きかった。自分のキレるパターンや感情の理解をしていくと、怒りはだいぶ抑えられるようになってきた」と話す。
瑠美さんは変化の過程を「モラハラがひどい時は一切聞いてくれない状態だったのが、だんだん顔をこわばらせながらも聞き入れるようになった。そこからだんだん一旦受け止めて、じゃあよくするためにどうしようかという話ができるようになっていった。本当に徐々に、という感じだ」と振り返る。
現在2人は、毎年年末に「結婚を継続するか」について話し合う、いわば「年次更新」の儀式を行っているという。瑠美さんは「とにかく細かいことでも話をして、前向きにどうやって仲良くするかを前提に話し合いをしようという姿勢が大事だと思う」。基次さんは「何かあったらすぐ謝る」ことが大切だと述べ、関係修復への取り組みが続いていることを示した。
高井氏は、関係修復ができるケースはごく稀だと強調しつつ、今回の事例について「奥さん側が最後の決断をするギリギリのところで踏みとどまった。2人で何とか調整できるような関係性が徐々にできてきた結果、バランスを保てるようになったのだと思う」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)