社会

ABEMA TIMES

2026年7月22日 11:00

「事件を起こせば射殺されると」なぜ無差別殺人を計画“無敵の人”を生まない社会とは?加藤智大元死刑囚の知人「法律は人を救うけど排除もする。人が手を差し伸べるしかない」

「事件を起こせば射殺されると」なぜ無差別殺人を計画“無敵の人”を生まない社会とは?加藤智大元死刑囚の知人「法律は人を救うけど排除もする。人が手を差し伸べるしかない」
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 7月、富山県に住む53歳の男が無差別殺人を計画したとして、殺人予備の疑いで逮捕された。男は東京行きのバスを片道分だけ予約し、リュックサックの中にナイフを1本入れた状態だったという。供述では、物価高による生活苦で死にたいと思い、無差別殺人を起こせば射殺されるか死刑になると考えたとしており、容疑を認めている。

【映像】大友さん、無差別殺人を未然に防いた経緯

 逮捕のきっかけとなったのは、保護司の大友秀逸さんによる警察への通報だった。大友さんは、2008年に7人が死亡した秋葉原無差別殺傷事件を起こした加藤智大元死刑囚の仕事の同僚・友人であり、事件後に保護司となって顔出しで情報発信を続けてきた人物だ。今回、男は大友さんのSNSに突然メッセージを送りつけ、大友さんはそこからやり取りを重ねる中で危険性を察知し、通報を決断した。「無敵の人」を生み出さないためにはどうすればいいのか。『ABEMA Prime』では、大友さんらとともにこの問題を考えた。

■「片道切符で行きます」通報までの葛藤と決断

無敵の人とは

 大友さんへの最初のメッセージは7月1日、「最近生きるのにも疲れてきたんで、秋葉のように楽しくヤッてタヒでもイイかなとよく思うようになりました」という内容だった。大友さんは公開のタイムライン上でのやり取りを避けるためDMへ誘導し、その後8〜9回のやり取りを重ねた。

 転機となったのは、男が「片道切符で東京に行く」と告げてきた場面だ。大友さんが「それは犯罪をするということか」とストレートに尋ねると、「言及を差し控えさせていただきたい」という返答が来た。「今まで質問すると『やる』と言う人か、『逆に絶対やりませんから通報やめてください』という、0か100かの対応だったのが『差し控える』という初めてのリアクション」と大友さんは振り返る。さらに、男の過去の書き込みに近所の人物への危害を読み取れる内容があったことも重なり、「かなり高い確率で(事件を)起こしそうだ」と判断した。

 過去にも似たような連絡を受けて通報し、空振りに終わった経験が何度もあったという。「また空振るかなと思いながら、今回だけはいつもと違うという感覚があった」と語る大友さんは、土曜日の昼に地元の警察署へ電話を入れ、富山県警へつないでもらう形で通報。その後、男は実際にナイフを携えてバスに乗り込んでいたことが判明し、12日に逮捕された。

 通報の決断には葛藤もあった。大友さんは「警察がなかなか動いてくれなかったり、間に合わなかったりして本人が来てしまったら、その場で会ってどうしようかとずっとシミュレーションしながら生活を送っていた」と明かす。逮捕の一報を受けた際も、「罪状が思いつかなかった」と言う。男が「(犯罪を)止めてほしい」と思っていたかどうかもまだ分からないと話す。「会った時に『お前、余計なことしてくれた』なのか、『止めてくれてありがとう』なのか、また違う感情なのか。わからないから、まず会いたい」と述べた。

 また、通報したことで男の人生が変わってしまったという思いも抱えている。「通報した責任はある。君の人生は間違いなく変わった、変えてしまったという気持ちではいるけど、それはまだ一人よがりだから、早いとこ会いたい」と語った。

■「希望格差」と50代男性の孤立 社会的背景の分析

なぜ無敵の人が生まれる?

 家族社会学者で中央大学教授の山田昌弘氏は、こうした事件の背景に「希望格差」の問題があると指摘する。「昭和ごろまでの日本社会は、努力すれば報われる、家族を作ったり仕事で収入が上がったり仲間ができたりする社会だったが、平成以降は努力がなかなか報われない。いくら頑張っても正社員になれない、結婚できないという人が増え、それが固定化している。将来にわたって希望が持てない状況が絶望感を生み出している」と分析する。

 また、今回の容疑者のように男が大友さんに連絡を取ってきた点については、「誰かとつながりたいという希望の表れではないか。大友さんが(男を)個人として見てくれたことを、この人も感じたのではないか」と述べる。

 さらに、「今の50代男性の3分の1は、配偶者がいない状況にある。失われた30年のツケが今50代男性に現れている。仕事もうまくいっていない男性は、自分から積極的につながりを作れない構造が日本社会にできてしまっている。50代で孤立している人たちへのつながりをどうやって作るかを考えなければいけない時代になっている」と語った。

 元経産官僚の宇佐美典也氏は、制度的な問題として中年男性へのケアの欠如を指摘する。「日本社会は中年男性の孤独や貧困に鈍感すぎた。女性の貧困や孤独に対応する窓口は各地に設けられているが、男性が訪ねやすい場所は基本的にない。男性の孤独に何か手当てしようとすると、それは自己責任だという形でずっと手当てしてこなかった」と述べる。

 今回の男についても、「最近こういうことをやって死んでもいいかと思ってきた、という書き方をしているが、逆に言えばそれ以前は『そういうのはダメだ』という認識がはっきりあったわけで、それがどんどん追い詰められてきている。『助けてくれ』と言えないから、代わりに自暴自棄になるという宣言をした。そういう中で誰かに話を聞いてほしくて、大友さんがいてくれた」と見る。そして、「(秋葉原の)加藤氏のケースとかなり似ているが、あの時は止まることがなかった。今回止まったということは、社会として少し希望がある。こういう人は我々と理解し合えない人間ではなく、隣人であることをやめようとしているその瞬間を見つけたら、『ちょっと待とうよ』と言える人が周りにいることが大事だ」と訴えた。

 EXIT・兼近大樹は、「どこにも属せていない、コミュニティに入れていない人たちはSOSを出せない。SNSで大暴れしている人は予備軍の可能性もある。みんなレスバ(レスバトル)している場合じゃない。『こいつ、危険なことを言っているな』と思ったら、張り合っている場合じゃなくて、その人に寄り添ってあげなきゃいけない」と述べた。また、「犯罪に関しては、絶対に起きてからの対応になってしまっている。加害者になる前に誰かが関わってつながっていくことが大事で、今回の件はまさに予防だった。余裕のある人たちがもう少し支援に携わってくれないと予防も難しくなる」と語った。

 大友さん自身は、「行政も法律があるから法律の範囲で人を守るが、法律があるからそれ以上はやれないとも言う。法律が人を救うけど、法律が人を排除もする。おせっかいな自分みたいな人間が手を携えて『どうですか』とやるしかない。無差別殺人をなくしたいという信念で、形が変わっても続けていきたい」と語った。 (『ABEMA Prime』より)

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