北九州市の廃墟で2026年6月、20代の男女3人が肝試しで侵入し、白骨遺体を発見した。7月8日になって、遺体の身元がDNA鑑定によって、当時50〜60代の男性だとわかった。男性は全国を転々とし、1999年以降にこの空き家で生活。その十数年後に亡くなったとみられている。
厚生労働省の発表によると、身元がわかっていない遺体は全国で約2万人(2020年まで)。遺体の身元がわからず、未解決のままの事件も多い。
同じに見える頭蓋骨でも「全部表情が変わる」
2015年5月、東京駅でコインロッカーの中のスーツケースから、死後約1カ月が経った女性の遺体を発見。女性は年齢70歳から80歳くらい、身長140cmくらいとみられているが身元がわかっていない。警察は遺体の顔を「復顔(ふくがん)」と呼ばれる手法で再現し、情報を求めている。
「5月に発見されて死後1カ月であれば、完全白骨化ということはなく、ご遺体の顔はある程度認識できていたと推測する」そう語るのは、元京都府警 科学捜査研究所(科捜研)法医科長の矢山和宏氏だ。
矢山氏は科捜研時代、1000件以上の白骨を鑑定。死因や身元の特定などに従事してきた「骨のスペシャリスト」だ。
そんな矢山氏が科捜研時代、頭蓋骨から顔の復元を手がけた事件がある。1人は長髪の女性だ。2014年2月、京都府伏見区にある民家の床下で、ブルーシートにくるまれた2人の遺体を発見。そのうちの1人の身元は判明したものの、もう一人の女性(30〜40歳くらい、身長約145cm、長髪・茶髪)は依然、不明のままだ。
矢山氏は「身元を判明したい。ご遺体が無縁仏になるのか、ご家族のもとに帰すのか。そういったところでだいぶ違う」と語る。白骨化した遺体から、一体どのようにして顔を復元していくのだろうか。
「例えば鼻の骨1つでも、人それぞれ大きさや形状が若干違う。骨の上には顔の表情を作る筋肉が約30種類ついている。それによって、同じ頭蓋骨をみんな持っているが、全部表情が変わってくる」
それぞれの骨の特徴を確認し、本来張りめぐらされている筋肉をイメージ。筋肉や脂肪を、日本人の平均の厚さを基準に、粘土などを使って立体的に造形していく。頭蓋骨が語るセオリーに従って復元されたのが、先ほどの女性の顔だ。
さらに2004年2月、京都府福知山市の峠で布団にくるまれた男性の白骨遺体が発見された。殺害された可能性が高いこの白骨遺体から、矢山氏は復顔を手がけた。司法解剖の結果、遺体は50〜70歳代の男性(身長156〜168cm程)で、死後1年以上経過しているとみられ、歯には多くの治療の跡があった。
顔の特徴や体型についての判断
知られざる復顔の世界。そのリアルを、ドラマ「科捜研の女」の監修を務めた“科捜研の男”矢山氏が語る。「今生きている人の顔を見れば、その人の骨の形が僕には見える」。
矢山氏は、職業的に「人(の顔)を見たときには『統計的に目が離れている』『ハーフっぽい』など、国によって顔に特徴があるため、なんとなく(頭蓋骨の形が)分かる」のだそうだ。
やせている、太っているなどの体形は頭蓋骨からわかるのか。「頭蓋骨は“1個”ではなく、15種23個の骨からできている。基本的に皆同じ形状だが、大きさなどが異なる。例えば、生活習慣の中で硬いものを右ばかりで噛むと右の筋肉や骨が発達し、左右非対称になる。骨の形状によっては、約30の筋肉がつく中で、骨の形状に依存して丸顔か細面かが分かる。あとは脂肪の付き方などだ」。
顔立ちについては「丸顔の方が太って見える。筋肉の発達はほとんど変わらないが、アゴの上からアゴ先までの形状が、比較的外に飛び出ると、筋肉も外に飛び出る。逆にすっきりしていると、筋肉もすっきりしていくのでやせて見える。頭蓋骨の形状に依存してくる」と説明する。急激にやせても「顔自体は大きく変わらず、頬骨まわりの筋肉や脂肪量が変わる」のだそうだ。
頭蓋骨からの復顔のやり方は「骨の上につく筋肉の厚さには、日本人の平均がある。それに合わせて標準的な筋肉を付けて、服のサイズなど色々な情報から、太っているかやせているかを考えていく」。
「この人見たことあるな」を生むテクニック
復顔にあたっては「25〜30程度の顔面に対する人類学的表記点がある。鼻の付け根や目の内側、頬、鼻下、胸骨の上部、額、口まわりなど、高さの指標にあわせて、棒消しゴムみたいなのに、人類学的表記点の番号を付けていく」という。
「目の内側や外側は、骨で場所が決まっている。鼻先にも鼻下点という部分がある。鼻の穴が大きければ、鼻も大きくなり、細ければ細くなる。大きいのに、それよりも小さい鼻はあり得ない」
実際の作業の様子を見ながら説明する。「粘土のところに数字を書いた、長さが違う白い棒がある。これが人類学的表記点に置いた筋肉の高さ。これに合わせて三次元復顔法では、基本的に粘土で作っていく」「目の一重・二重、鼻の鞍鼻・わし鼻は分からないが、一般的に目は垂直型、鼻は普通の鼻のものを作る」と明かした。
さらに、目の大きさは「目の内側と外側を結んだ線によって『水平型か、つり目か、たれ目か』は分かる。そこから、『つり目であれば』という平均的な目の大きさがある」と紹介。
「(復顔は)誰でも分かるように、日本人の平均的なものを作っていくということ。目が二重な人もいるが、日本人は基本的に一重が多い。あえて二重を作ってしまうと分かりにくくなってしまうため、平均的な感じにすることで、『なんとなくこの人見たことあるな』と示すことが復顔法の基本だ」
髪の毛はどう再現しているのか。「(矢山氏が復顔を手掛けた)ご遺体は完全に白骨化というよりは一部ミイラ化して発見された。毛髪が付着されていたので顕微鏡でさらに分析して再現した」と述べた。
矢山氏が復顔を手掛けた身元不明遺体について、警察は情報を求めている。
女性遺体 京都府山科警察署 075-575-0110 男性遺体 京都府福知山警察署 0773-22-0110
(『ABEMA的ニュースショー』より)