本格的な夏を迎えるこれからの時期は、水難事故のニュースが多くなる季節でもある。日本赤十字社の赤十字水上安全法講師でライフセーバーの内田直人氏に、水辺の事故を防ぐ心構えや命を守る方法を聞いた。
警察庁によると、令和7年には全国で1599人が水難事故に遭い、うち760人が死亡・行方不明になっている。こうした事故の多くはプールではなく海や河川などの自然水域で起きており、利用者の情報不足や「自分だけは大丈夫」という自己過信が背景にある。事故防止には地域の気象情報やハザードマップ、潮の満ち引きなどを事前にネット等で調べておくことが不可欠で、天候悪化の予報がある場合は無理をせず計画を中止する勇気も必要だ。
川遊びで危険な場所

川遊びでは、足のつく浅瀬や普段誰もが行く場所でも事故が頻発しているという。流れの中で脱げたサンダルを追いかけて深みにはまるケースも多いため注意したい。また、小さな滝のようになっている「堰堤(えんてい)」の下には白い泡のような流れが生じており、一度巻き込まれると、その場から脱出できなくなるため絶対に近づいてはならない。中州も上流の大雨で急激に増水し孤立する恐れがあるため、放流のサイレンなどが鳴ったら即座に陸地へ避難すべきだ。
一方、海での大きな脅威は、浜から沖へ強い流れが発生する「離岸流(リップカレント)」だという。もし沖へ流されていると気づいたら、流れに逆らわず岸と平行に横方向へ泳いでルートを脱出するのが正しい対処法だ。また、陸から海へ吹く「オフショア」の風にも警戒が必要で、浮き輪などが風で流されても無理に追いかけず、常に岸に近いエリアで遊ぶ意識が大切だ。
「背浮き」とは?

万が一、水の中に転落した際に命を守る武器がライフジャケットだ。着用時の生存率は89%に達するのに対し、非着用時は49%にまで激減する。内田氏は有効性を発揮させるには、体格に合ったサイズを選び、ファスナーを上まで閉め、全てのベルトを隙間なくタイトに締めて体に密着させることが生死を分けると強調した。もし着用していない状態で水に落ちた場合は、「背浮き」と呼ばれる仰向けの姿勢をとる。怖くてもリラックスし、両手両足を大の字に広げてゆっくりと呼吸を繰り返す。このとき、着ている服や運動靴は空気が溜まって天然の浮力となるため、決して脱いではならない。
目の前で誰かが溺れているのを発見したとき、内田氏は「絶対に自ら泳いで助けに行ってはならない」と強く警鐘を鳴らす。救助に向かった人が巻き添えになる二次災害を防ぐためだ。まずは躊躇なく通報を行うことが先決で、海なら海上保安庁の「118番」、川や沼・湖なら消防の「119番」へ連絡する。そして救助隊を待つ間、陸の安全な場所からペットボトルやクーラーボックスなど、周囲にある浮きそうなものを投げ入れ、浮き具代わりに使ってもらう、水に入らない陸地からの救助に徹するべきである。楽しいレジャーを安全に過ごすためにも、基本ルールと正しい知識を改めて確認してほしいと内田氏は締めくくった。
(ABEMA/ニュース企画)