社会

ABEMA TIMES

2026年7月25日 11:00

「脳は使わなくなると元に戻らない」小中学校のAI授業を“年間30コマ新設”に専門家「考える力が弱くなってしまう」

「脳は使わなくなると元に戻らない」小中学校のAI授業を“年間30コマ新設”に専門家「考える力が弱くなってしまう」
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 文部科学省は中央教育審議会の特別部会で、小中学校の次期学習指導要領にAIなど情報・技術分野の授業を増やす案を示した。小学校では年間最大30〜35コマを新設し、中学校でもコマ数を増やすことが必要だとしている。

【映像】小中学生向け!直接の正解を出さないAI機能(実際の映像)

 ただし、全体の授業時間は増やさない方針のため、他の教科の授業時間が減ることとなり、慎重な意見も出ている。2028年度からの段階的な先行実施が検討されている。

 生成AIの急速な普及を背景に、子どものうちから情報を活用する力を育てる狙いがある一方で、子どもとAIの距離感を懸念する声も根強い。AIは子どもにとって早すぎるのか、それとも今こそ向き合うべきなのか。『ABEMA Prime』では子どもとAIの付き合い方について考えた。

■「30コマは生成AIをやるわけではない」情報活用能力の育成が本質

鈴谷大輔氏

 埼玉県の公立小学校教師でNPO法人・タイプティー代表理事の鈴谷大輔氏は、今回の指導要領改定案の趣旨について、「AI自体を学ぶことがすごくフォーカスされているが、実はそうではなくて、情報活用能力を育てるというところをすごく頑張ろうとしている」と説明する。

 情報活用能力には「情報を活用すること」「適切に使うこと」「情報の特性を理解すること」という3つのコンテンツがあり、それが全ての教科のベースになるという。「今のところ生成AIがすごくホットなキーワードなので、30コマ生成AIをやるんじゃないかという感じになっているが、実はそういうことではない」。

 文科省のこれまでの取り組みについては、「すごく妥当だと思う。一律に制限するわけでもなく、使いなさいと言っているわけでもなく、慎重さがすごく大事だということをガイドラインでも言っている。判断の最終基準は自分だということで、人間がちゃんと中心になって判断するというところもしっかり明記されている」と評価した。

 また、小学生の生成AI利用状況に関するデータにも触れ、「ベネッセの調査では、小学生が生成AIを知っている率は74.7%で、そのうち使ったことがあるのは8割を超えている。2023年は5割以下だったので、1.5倍に増えている」。

■「考える力が弱くなってしまう」

栗原聡氏

 一方で、AI研究者で慶應義塾大学教授の栗原聡氏は、「僕らは考える生き物で、考えるときにはやっぱり悩ましい。だけど、それをやるから脳を鍛えられる。ちょっと分からないから検索しちゃう、答えを聞いちゃうと、やっぱり考える力が弱くなってしまう」と警鐘を鳴らす。

 さらに、脳の発達という観点からも「5歳を過ぎると脳の結合は弱まっていく。脳は使わなくなると結合が切れてしまうと元には戻らない。特に幼少期は成長過程なので、ある一定レベルのものを学んでおかないといけない。今しゃべるためには一定数の語彙力も文法も必要で、分かっているから使っている。それをAIにしてもらってしまったら、何がおかしいかも分からなくなりかねない」との懸念を示した。

 現在のAI技術が急速に移り変わる点については、「今のAIの仕組みを知ったからといって、2年後にそれがメジャーという可能性はおそらくない。移り変わっていくものを、今のAIはこうだからといって学ぶのは本当にいいのか。もっと本質があるだろう」と指摘し、「中途半端に導入して変な形で弊害が出るのであれば、まだ慎重にした方がいい。しっかりどういうものかが分かった上で使っていった方がいいのではないか」と強調した。

■「理想と現実のギャップ」現場への浸透が最大の課題

 栗原氏は指導要領に書かれている内容自体の問題点よりも、それが現場に落ちてくるかどうかを懸念する。「書いてある要領は別に悪いことを言っていない。もともと問いを立てることとか言っているんだけれど、難しいのはその理想と現実だ。全国いろんな先生方がいて、学校の先生はそうでなくてもいろんな職場で多忙を極めている中で、本当にそのエッセンスを実現できているかというと、なかなかそうではない。学校の中で放置してしまっては目も当てられない」と語る。

 この点について、鈴谷氏は「30コマは全コマに対して3%程度だ。例えば国語と情報の領域が合体した複合的な教育、部首とへんを組み合わせて漢字を作るプログラムを作ろうといった実践もある。何かを削るというよりは、新たにうまくカリキュラムを作り直すことで、教科の学びも大事だし、それを支える情報活用能力も大事だから、そこをちゃんと切り出してやろうという考え方だ」と述べた。

 AIと子どもの関係について、栗原氏は「考える力を養えもするし、パワーアップしてくれる一方で奪う。やっぱり2つの面があることを理解することが一番重要だ」とし、「小学生に対する教育が花開くのは10年先だ。長い目で見ないといけない」。

 鈴谷氏は「家庭で生成AIに触れている子どもたちが非常に増えているのが現状だ。それを学校で何も取り扱わないのかというと、そっちの方が罪が大きくなってきているんじゃないか」とした。

(『ABEMA Prime』より)

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