熊本県で震度7を観測した地震が発生した。熊本県内で震度7を観測したのは、2016年の熊本地震で2度記録して以来、10年で3回目となる。九州最大級の大型商業施設・イオンモール熊本では爆発が発生。県内では30日までに420カ所の避難所に8698人が避難している。繰り返される地震に対し、行政はいま何をすべきか、地震に強い街をどう作るか。『ABEMA Prime』では地震予知の最前線とデジタル技術を活用した防災の在り方について考えた。
■「割れ残りが発生している恐れがある」地震予知の最前線

日本地震予知学会会長で東海大学教授の長尾年恭氏は、今回の地震が起きたメカニズムを次のように説明する。「大地震が起きると、その場所は歪みが解放されて安全だ。ところが、例えば1枚の大きなテーブルクロスで熊本のところだけ少し引っ張ると、両側にシワが寄る。そのシワが寄ったところが今回の八代にあたる。今回の地震で八代のシワは解消したが、今度は水俣の方にシワができた」。地震が起きた場所は安全になる一方、隣接する地域に新たな歪みが生じるという構造だ。
長尾氏はさらに、「日奈久断層帯の南の方に割れ残りが発生している恐れがある」と指摘する。今回の地震では全長80キロのうち約50キロが割れ、残り30キロが残っているとの見方を示し、昨年の段階からこの地域の危険性を指摘していたともいう。
地震の予測精度については、現状では「1000年に1回周期の内陸地震は1%程度の精度でしか言えない」としつつも、長尾氏が会長を務める日本地震予知学会では、1年以内という短期スパンでの予測技術の開発を進めているという。「30年という予測はほとんど『どこでも危ない』と言っているのと同じだ。せめて1年以内のスパンでかなり高い確度で危険を示せるようにしたい」と述べる。さらに、「大きな地震が起きる数十分前から始まっている兆候を捉えることができるようになりつつある」とし、直前予知の研究も進んでいると説明した。
■デジタル技術が変える被災地支援

被災地での情報収集・共有において、デジタル技術の活用が加速している。長尾氏は「道路がどこから通れるかは、今やカーナビゲーションのデータが集約されている。どの道が通れるかという情報をちゃんと見られるポータルサイトが必要だ。情報がバラバラで、それぞれ別のサイトを見に行かなければならない現状を、ITの力で解決していくことが重要だ」と語る。
ひろゆき氏が「GoogleのGPSデータを自治体が活用できる仕組みはできているのか」と問うと、長尾氏は「静岡県で避難所マップを作った際、自治体のマップではなくGoogleマップをベースにした。そうするとシームレスに使えた」と実例を挙げた。これに加え、「ドローンに赤外線センサーを積んで温度を計測すると、人がいる家は温かく、いない家は冷たい。それによって救助が必要な場所を特定できるようになりつつある」と、最新の救助技術を紹介した。
自治体の連携についても課題が指摘された。長尾氏は「県境で情報が途切れる問題がある。例えば東京でも多摩川を越えると神奈川になり、近くに避難所があっても行けないという事態が起きる。スターリンクやドローンも含め、ある程度の規模で複数の自治体が同じ装備を持ち、お互いが被災した際に助け合う広域連携が必要だ」と訴えた。
■日本の建物は世界最高クラスの耐震性能

地震に強い街作りという観点から、長尾氏は日本の建物の耐震性について世界的な水準を示す。「もしこのクラスの地震が中東の日干しレンガの地域やメキシコで来たら、ほとんどの建物が崩れる。日本は建物の耐震性において圧倒的に強い」と述べ、「2000年以降の基準を満たした家は、10年前の熊本地震でも8件しか壊れていない。そのうち7件は手抜き工事や活断層の上に建っていたなど原因が判明している。2000年基準を満たしていれば、震度7が1回来ても必ず持つという基準になっている」と強調する。
一方で都市部特有の課題もある。「老朽化した歩道橋が倒壊すると交通が遮断される。建物が無事でも行く道がなくなる。東京都も古い歩道橋の撤去を進めている」と指摘。また木造密集地域の火災リスクにも言及しつつ、「首都直下地震の被害総額は80兆円とも試算されるが、1兆円を耐震補強に投資すると80兆円の被害が減る。耐震補強が最も効率的な投資だ」と述べた。高層ビルについては「倒壊することはないが、停電すれば水が上げられなくなる。建物は大丈夫という以外は、あとは自分で生き延びていただくしかない」とも語った。
「地震学的には危険な場所がかなり分かってきている。しかしそれを発表できる法的体系も必要で、学者が勝手に言うだけでは行政も政府も動けない。日本の防災システム全体を見直す時期に来ている」と長尾氏は締めくくった。 (『ABEMA Prime』より)