厳しい暑さが続く被災地では、現在も大規模な断水が続いています。
なぜ水道の耐震化が進まないのか、その理由について見ていきます。
■熊本被災地 続く断水 長期化懸念も 過去には復旧に数カ月
地震発生から1週間が経った今も、熊本では断水が続いています。
猛暑での断水について被災地の声です。
「電気は通ったから大丈夫だが、 やはり断水が一番困っている。1日に何回も給水に来ているが、トイレなどに使う水が足りない」
「子どもたちの水分補給用の水や 片付け作業で汗をかいた服を洗えず困っている」ということです。
熊本県内の断水の状況です。
宇城市、氷川町、甲佐町、八代市、4つの自治体の約4万4000戸で現在も断水が続いています。
特に八代市と氷川町では、復旧のメドが立っていない状況です。
なぜ復旧のメドが立たないのでしょうか。
本来はダムや貯水池の水が導水管を通って浄水場に送られ、浄水場できれいな水となって、一度配水池に蓄えられた後、需要に応じて各家庭へと行き渡ります。
ただ、八代市の一部や氷川町の水道を管理する八代生活環境事務組合によると、今回の地震で、氷川ダムの水を浄水場に送る導水管が浄水場の手前で破損し、浄水場に水が届かなくなったといいます。
さらに浄水場から先の配管についても被害が出ている可能性がありますが、破損状況の確認中であったり、そもそも確認ができていないという状況だということです。
「現在、導水管の仮設工事は完了したが、徐々に水を通しながら漏水箇所の確認・修繕を行うため、完全復旧までは相当の期間を要する見込み」だということです。
断水被害を受けて、国交省は8月1日から、被害が甚大な自治体の復旧支援を行うために、水道技術者を被災自治体に派遣しています。
これまでも、大きな地震の度に断水の長期化が課題となっています。
1995年1月に起きた阪神・淡路大震災では、発生後に、約130万戸が断水し、復旧までに約3カ月かかりました。
2011年3月の東日本大震災では、発生後に、約256万7000戸が断水。
津波被害があった地区などを除くと、復旧までに約5カ月かかりました。
2016年の熊本地震では、発生後に、約44万6000戸が断水。
復旧までに約3カ月半かかりました。
2024年の能登半島地震では、発生後に、約13万6000戸が断水。
復旧までに約5カ月かかっています。
■水道管 低い耐震化率 コスト懸念で先送り?全国的な課題に
水道管の耐震化が全国的な課題となっています。
各都道府県の水道管の耐震管率です。
耐震管率とは、病院などの重要施設につながる水道管がどのくらい耐震の水道管に変わっているかを示す割合で、全国の平均は32%。
今回地震のあった熊本県は全国平均より低い29%となっています。
断水が続いている市町村の耐震管率です。
八代市は29%、宇城市の松橋地区、小川地区は3%、甲佐町は0%、氷川町は15%となっています。
一方、熊本市は62%と高くなっています。
市は10年前の熊本地震をきっかけに耐震化を進めました。
その結果、今回の地震で最大約2万戸以上が断水しましたが、1週間ですべての断水が解消しました。
「費用の試算など耐震化に向けて一歩踏み出した段階で地震が起きてしまった。今の状況だと耐震化の計画は今後どうなるかは分からない」といいます。
熊本で耐震化が進んでいなかった事情です。
近畿大学教授で、水道事業に詳しい浦上拓也さんは地震の4日前、7月24日、熊本県庁の上下水道担当者と意見交換をしていました。
「2016年の地震以前、熊本県は地震に対する危機感が希薄だったため、耐震化への取り組みがほとんどされていなかった」と耐震化が遅れていた理由を話していたということです。
「私自身、熊本出身で、暮らしていた当時は“地震の来ない地域”という思い込みがあった。全国の水道事業者でもこうした考えは多く、負担などが増えることから耐震化への投資が先送りされている」と指摘します。
水道管の耐震化が進んでいないのは熊本県だけではありません。
日本では、全国で約74万キロメートルの水道管が地中に埋まっています。
これは地球から月まで往復できる距離に相当します。
水道施設の耐震化率です。
川などの水源から水をくみ上げる『取水施設』が約52%。
くみ上げた水を浄水施設まで送る『導水管』が約24%。
浄水施設が約47%。
綺麗にした水を送る『送水管』が約32%。
綺麗にした水を貯めておく『配水池』が約68%。
病院や避難所、防災拠点など重要施設に水を送る水道管が約32%、
と水道施設全体もあまり耐震化が進んでいないのが現状です。
■赤字の水道事業 増加 進む老朽化 人口減で値上げも
水道事業が抱える問題について見ていきます。
日本の水道事業では、水道にかかるコストは利用者からの水道料金でまかない、独立採算制が原則となっています。
消毒などの処理費用、水を送るポンプの電気代、水道管の維持・管理費などこれらのコストを利用料金でまかなわなくてはいけません。
赤字の水道事業が増加しています。
料金収入でコストをまかなえない水道事業は全体の65.6%に及んでいます。
まかなえない部分は補助金などの税金で穴埋めされますが、それでも足りない赤字の水道事業は23.2%と過去10年間で最高の水準となっています。
断水が続く八代市水道局の場合です。
2025年の営業収入は約5億2800万円、営業費用は約4億7700万円で、営業利益は約5000万円で黒字となっています。
「近年の物価高の影響で利益は年々減っている。耐震化の費用捻出が難しいのも耐震化が進まない理由の一つ」と話しています。
耐震化の費用です。
水道管の耐震化には、地震が起きても外れたり折れたりしにくい『ダグタイル管』への交換が必要です。
このダグタイル管への交換費用は、(太さによって値段が大きく変わりますが)1キロメートル交換するのに、管の太さによって5800万円から6億3100万円かかるといいます。
老朽化の課題もあります。
水道管は現在約21万キロメートル、全体の約26.2%が耐用年数40年を超え老朽化しています。
近畿大学教授の浦上さんによると、これらすべてを直す場合、少なくとも20兆円以上の費用と150年以上の期間が必要になってきます。
人口減少で、水道料金が値上がりしています。
山口県下関市では人口減少などによる料金収入の減少などを理由に、2026年4月から水道料金を改定しました。
平均で20%の値上げとなっていて、2027年2月の検針分から適用されるということです。
「苦渋の決断だが、将来にわたり安全安心な水を守るためご理解いただきたい」と話しています。
■水道守るため『経営一本化』『民間委託』『廃止』の動きも
水道が抱える問題への対策です。
経営を一本化する取り組みです。
茨城県では市町村単位での取り組みに限界を感じ、水道事業の運営主体を県に一本化する方針です。
この効率化によって2070年度までで1000億円以上の効果を見込んでいるといいます。
この一本化には県内外21市町村が参加の見通しだということです。
水道事業を民間に委託する動きもあります。
京都府の城陽市では、2026年4月から上下水道事業の大部分を民間企業に委託しています。
委託企業はJR西日本など5社で構成され、10年間業務を委託、契約金は38億円になるということです。
「全国でも先進的な取り組み。市民の皆様に、よりよいサービスを提供できれば」と話しています。
水道管を廃止する動きもあります。
宮崎市の持田地区では週4回、給水車で配水施設から住宅3軒分の生活用水をタンクへ運搬しています。
宮崎市の試算によると、水道管の新設より運搬の方が20年で1億9000万円の費用を抑えることができるといいます。
(「羽鳥慎一モーニングショー」2026年8月4日放送分より)
















