7月28日、最大震度7を観測した「令和8年熊本地震」。被災地では地震活動と熱中症への警戒を強いられている。甚大な被害が相次ぐ中で謎が深まっているのがイオンモール熊本での爆発事故だ。ガス爆発の可能性が高いとされているが、現場には、震度5相当でガスの供給を止める自動遮断器が取り付けられていた。大規模な爆発事故はなぜ起きたのか、『BS朝日 日曜スクープ』は、自動ガス遮断器の構造を踏まえつつ、分析する。
1)地震災害で異例の大規模爆発 配管“破損”でガス漏れか
7月28日午後4時27分に地震が発生。イオンモール熊本ではおよそ30分で避難を終了させたが、何人かのテナント従業員らがその後、建物に戻った。そして、地震からおよそ80分後の午後5時50分に大規模爆発が発生。7人が命を落とした。専門家らは、震災での被害としては「これまではないこと」と口をそろえる。
私の経験の中では過去にない。阪神淡路大震災でも、都市ガスが漏れて大規模な火災の延焼の要因の1つにはなった。能登半島地震でも、プロパンが相当使われていた地域だったため、プロパンガスが漏れて市街地大火に至った。誘因にはなったが、このような大爆発は初めてのことだ。
過去には、地震後に電気がつながった際にショートして起こる、通電火災は起きている。また、地下街などでかつて大きなガス爆発が起きたことはある。しかし、地震後に大規模なガス爆発が起きたことはこれまでに例がない。
イオンモール熊本では、建物の外に最大9367キロ貯蔵可能なLP(液化石油)ガスのタンクがある。LPガスは、そこから地下パイプで建物内に送られ、さらに2階奥のフードコートなどに配管がつながっていた。今年3月と6月には定期点検も行っていたという。全国の施設でも一斉点検を進める。
最も損傷の大きな2階の中央部分はガス器具がなく、ガスの配管が通っていた場所。ガス配管から漏れたと考えるのが妥当だ。漏れたガスが床の上に溜まってきて、それが流れていったところに何らかの火種があって、着火し、爆発したのではないか。
通常、建築物の壁や床、天井には構造上、20〜30センチの隙間がある。いわゆる「天井裏」や「床下」と言われる部分だ。壁の間にも同様の隙間があり、そういった隙間にガスが回り込んだ可能性がある。ガス管自体は耐震性を高めているが、今回は配管のどこかに想定外の力がかかってガスが漏れ出たのではないか。密閉された隙間の空間にガスが漏れ出ていた可能性がある。
2)自動ガス遮断器は設置されていたにもかかわらず、なぜ?深まる謎
LPガスが原因で爆発した場合、大きな疑問が浮上する。それは、イオンモール熊本のLPガスのタンクに設置されていた、自動でガス供給を遮断するシステムの存在だ。
一般的な自動ガス遮断器では、震度5相当の揺れを感知すると、自動で遮断弁が閉じてガスの流れを止める構造になっている。地震で感震センサー内の重りが落ち、作動する仕組みだ。停電下でも物理的に作動する、シンプルで壊れにくい構造が特徴だ。イオン側は、こうした遮断器がフードコートの飲食店だけでなく、ガス供給のタンクにも設置していると説明しており、震災時に作動していたかについてこれから究明していくとしている。
番組では、自動ガス遮断器の作動に関して、業界団体を取材した(7月31日)。日本LPガス供給機器工業会の担当者は、「映像を見る限り、遮断弁のタイプは震度を感じて遮断する感震遮断で、震度5程度の地震が起きれば、タンクのところで自動遮断されるはず。停電でも作動する。このシステムが正常に動いていたとすれば、遮断弁があの規模の地震で作動しないとは考えられない」と指摘。イオンモール熊本のある嘉島町は震度6強だった。
それでは仮に、ガス遮断器が作動していたとすると、爆発の原因として、どのようなことが考えられるのか。工業会の担当者は「映像を見る限りガスヒートポンプ(ガスエンジンでの空調)なので、エアコンにつながっている配管内のガスが爆発した可能性はある。しかし、配管内のガスだけであそこまでの爆発が起きたとは確定できない。現状、設備が分からないので何ともいえないし、ガス爆発だと断定されているわけでもない」と述べた。
自動ガス遮断器が設置されていたにもかかわらず、なぜ大規模爆発が起きたのか、謎は深まっている。
今回は震度6強の揺れなので、通常であれば遮断装置が作動しているはずだ。ただ、仮にLPガス爆発であったとすれば、遮断器が作動して、配管の中にあったガスだけでこれだけ大きな爆発が起きるのかどうか、疑問がある。ひとつの可能性として、何らかの要因で遮断器が作動しなかったことも考えられる。
ガス検知器は、フードコートのような飲食店には設置義務があるが、それ以外のところには基本的には設置されていないと思う。
通常、ガスの配管は一戸建ての住宅でも、20〜30メートルぐらいはある。これだけ店舗数も多い大規模な施設となると、全体のガス管の長さは、300〜400メートルある可能性がある。それが網の目のように広がっている。そうなってくると、ガスのパイプの太さを仮に2センチ程度だとしても、遮断後もガス管内に残留するガスは総量で10立法メートル分ぐらいある計算になる。もし、地震後に配管のどこかに亀裂が入り、残留していたガスが壁の隙間や床下、天井面などの閉鎖空間に漏れ出て行ったと仮定すると、残留ガスにより爆発濃度に達した可能性も少しながら残る。
3)全国に32の「Sランク」活断層…各家庭でできる対策は
政府の地震調査委員会は、今回の地震の多くが10年前の熊本での地震の震源となった 「日奈久(ひなぐ)断層帯」の一部に沿って発生しているとしている。そして、日奈久断層帯では割れ残っている部分があり、将来的にそれらの地域で大きな地震が起きる可能性は十分ありうると警鐘を鳴らしている。
しかも、日本で確認されている主要な活断層で「危険度が高い」とされるSランクは、日奈久断層を含め、全国で32にのぼる。各家庭でできる地震対策のポイントは…。
建物の耐震補強には時間もお金もかかるが、家具の配置1つを見直すだけでも、地震の際の被害を防ぐことができる。例えば、寝ている時にタンスが体の上に倒れてこないような配置にする。実は、建物は大丈夫だったが、家具や落下物による被害を受けるケースが意外と多い。布団やベッドの位置、寝る場所を少し変えるだけでも違う。今すぐに、できる対応を始めることが大切だ。
日本で生活していれば、どこで大規模地震が起きてもおかしくないので、今回を契機に、今できる備えを始めてもらいたい。家具類の転倒・落下・移動の防止対策はすぐできる。備蓄の見直しもすぐできる。水や食料はもちろんのこと、トイレの備蓄もぜひ行ってほしい。
気象庁の震度等級に「震度7」が導入された1949年以降、これまで震度7を観測した大地震が7〜8月に発生した例はなかった。猛暑下での被災者の安全確保が切実な課題として浮上している。避難のため車中泊をしていた70代の女性が、熱中症の疑いで死亡していたことも判明している。
まずは、この暑さなので、水、トイレの確保、避難所の空調設備の整備等について、政府は早急に対応し、これ以上地震関連死が出ないよう全力を挙げてほしい。行政の縦割りを排して、できることから直ちに取り掛かることが重要だ。
日本は、避難先にも想定されている教育関連施設の冷房化、空調の整備が遅れている。イオンモールのような商業施設も避難先になる。防災庁は全国的な基準を作り、季節ごとのマニュアルを整備しないといけない。
(「BS朝日 日曜スクープ」2026年8月2日放送より)
<出演者プロフィール>
坂口隆夫(元東京消防庁 麻布消防署長。防災・防災管理に関する危機管理業務に精通。『市民防災研究所』理事。消防行政に40年従事)
森山高至(建築エコノミスト/一級建築士。建築物の地震・防災対策に精通。著書『予算ゼロから始める「わが家の守り方」』(双葉社))
末延吉正(元テレビ朝日政治部長/ジャーナリスト。東海大学平和戦略国際研究所客員教授。永田町や霞が関に独自の多彩な情報網を持つ。湾岸戦争などで各国を取材し、国際問題にも精通)






