厚生労働省の調査によると、65歳以上の単身世帯が933万世帯を超え、過去最多を更新した。約3世帯に1世帯が単身世帯となるなか、子どもには頼れない、介護施設にはまだ入りたくないという高齢者が、自由を保ちながら孤立しない住まいを求める動きが広がっている。『ABEMA Prime』では、増え続ける高齢単身者の住まいのあり方について考えた。
■「ずっと持ち家に住みたいけど不安、住み替えたい」高齢単身化が生む住まいのミスマッチ

追手門学院大学・葛西リサ教授は、高齢者の住まいへのニーズについてこう解説する。「日本はもう言わずと知れた持ち家社会で、圧倒的大多数が持ち家に住んでいる。子どもが(面倒を)見てくれる、家族に看取られながら死んでいくというライフストーリーがあったが、今は子どもは見てくれない、さらには子どもを産まない、家族を形成しない。持ち家社会と、そこに住んでいる我々がミスマッチを起こしている」。そのうえで「単身化が進む社会では賃貸需要がどんどん進んでいくが、高齢期になると賃貸住宅は過齢の不利がある。できれば緩やかにつながりながら自由が制限されないような住まいを求めているが、なかなかそういうものがないというのが現状」と述べる。
葛西氏はさらに、今後の深刻さについても言及した。「これから6人に1人が氷河期世代で、その人たちが高齢期に入っていくと、家族もない、貯金もない、低年金という人がどんどんと単身で高齢期に入っていく。国が持っている住宅や空き家もたくさんあるので、そういうものにケアをどうやって付合させて入居していただくかを考えないと、国は破綻するんじゃないかと思っている」と警鐘を鳴らす。
■56年間の一人暮らしから共同生活へ 91歳・小森さんの暮らし

高齢者グループリビング「おでんせ中の島」で暮らし、理事長も務める小森祥子さん(91)は、入居を決めた理由をこう語る。「自分のことを自分でやれる自由さ、猫と一緒に住まえること、お風呂やトイレが完全に自分の部屋にあるので、誰かが来るんじゃないかとか出なきゃいけないかという心配がない。リラックスできる」。56年間の一人暮らしを経て、入居するきっかけになったのはは79歳のとき。「3階建ての3階に住んでいてエレベーターがなく、買い物をして帰ってきたときにこれがいつまで続けられるかと心配があった。個人が守られて、なおかつ共同生活ができる、助け合いができるというところにとても魅力を感じた」と振り返る。
月額15万5000円の費用には夕食代と運営費が含まれる。各個室は約17畳でバス・トイレ・キッチンを完備し、食事の時間も自分のペースで決められるが、毎日夕食をともに食べることが唯一の共同生活ルールだ。同じ年代だからこそ体調の小さな変化にも気づき合えるという。
小森さんは、10年間一度も費用を値上げしなかったことにも触れ、「運営で非常に苦労する面も出てきた。雇っているスタッフたちの給与は最低限を守っていかなきゃいけない。でも皆さんから集めるお金は10年間同じだった」と明かす。11年目の今年7月、初めて運営費を5000円値上げすることになったという。大阪、京都、北海道からも運営方法を学びに来る視察者が相次いでいるとも述べた。
小森さんは元気の秘訣について「食は命なり。朝昼晩しっかり食べる、偏らせない。朝昼は自分で作って、夜だけはスタッフが作ってくださるので、みんなで一緒に食べる」と語った。入居者10人のうち9人が女性で、唯一の男性については「みんなで持ち上げながらやっている」と笑顔を見せた。
■孤独死予備軍は男性に多い コミュニティに溶け込みにくい高齢男性への対策

多世代共生型住居「ノビシロハウス」代表・鮎川沙代氏は、仕組みをこう説明する。「年齢制限を上にも下にもしていないという特徴があり、そのせいで高齢の方で一人暮らしを好む方が多く入ってきてくださっている。高齢者が入居した場合は、若い入居者が定期的に声をかけたり、月に1回お茶会を開いたりする役割を担う。全住戸の約2割をその役割を担う部屋とし、その部屋の若い入居者は家賃を半額にしている」。通常7万円の家賃が3万5000円になる仕組みだ。空室率はほぼゼロで、6年目を迎えた現在、2030年末に100棟を目指している。室内にはIoTセンサーも導入し、12時間動きがなければアラートが届く「デジタルとアナログを活用した」体制を整えている。
入居者の男女比について、鮎川氏は「若者は男女均等だが、高齢の入居者は女性が圧倒的に多く、男性は1〜2割」と述べる。現在92歳の男性入居者は、88歳のときに介護施設を「自立しているから」という理由で退去させられ、他に借りられる賃貸が見つからず入居したケースだ。当初2年間は声かけへの参加も拒んでいたが、定期借家契約のルールを根拠に「お茶会に参加しないと再契約できない」と背中を押したところ、今は楽しみにしてくれていると鮎川氏は説明する。「背中を押すことも大事だと気づかされた」と語った。
文筆家・佐々木俊尚氏は、高齢男性がコミュニティに溶け込みにくい問題を指摘する。「登山をしていると、高齢の女性はみんなグループでいるが、高齢の男性は必ず1人でいて挨拶してくれない人が多い。だんだん歳を取ると孤独になってくるのが男性で、そういうコミュニティ的な住まいをすると仲良くなれないという問題がある」。
解決策として「同じ趣味の人を集める」などのアプローチに加え、住まいの設計として「コレクティブハウス」の可能性を示す。「コモンリビング・コモンキッチンという共有空間があって、その周りの家がそれぞれバス・トイレ・キッチンを別に持つ形で、シェアハウスよりも距離を少し置ける。距離の取り方をうまく設計することが今後一番重要な問題で、その設計さえちゃんとやれば孤独なおじいさんでもうまく住める仕組みは作れるのではないか」と述べた。
葛西氏も男性の孤独死問題に言及する。「孤独死の比率が出ているが、男性が圧倒的大多数。8日以上見つからない(孤独死)のも、男性が圧倒的に多い。団地の中で居場所づくりをする時に女性はカフェに集まってくるが、男性の場合は集まってこないので、DIYの工房を作って集めたら黙々と作業していた、という話を聞いた。会話はしたくないけど、やることがあればちゃんとやる。ワイワイすることが目的じゃなくて、行きがいがあるということの方が重要なので、いろいろな場所を作るということが必要」と説明した。 (『ABEMA Prime』より)