年齢とともに多くの人が直面する「更年期障害」。その経済損失は3兆円にも及ぶとされ、男女問わず深刻な影響となっている。
一般的に40歳代から55歳頃までの時期、ホルモンバランスが揺らぎ様々な症状が現れることから、「ゆらぎ世代」とも呼ばれている。体の痛みや倦怠感にとどまらず、気持ちの落ち込みや不眠、さらには職を離れざるを得ないケースもある。しかし、その辛さは周囲に理解されにくく、本人でさえも「年齢のせい」「気の持ちよう」と正面から向き合わずにいつまでも改善しないことも少なくない。
『ABEMA Prime』では更年期障害との向き合い方と、職場・社会の支え方について考えた。
■「3つが重なって、思い当たることがない。婦人科に行こうと思った」

そば店を営む青柳寧子さん(52)は、今年3月頃から激しい頭痛や肩の痛みなどに悩まされている。「店で働いていた時に急に吐き気がしてきた。お客様にビールを注ごうと栓を開けた途端、ものすごいむかつきに襲われた。それからしばらくして、今度は未経験の頭痛もした。帰ってきたらお腹まで痛くなってきて、どの薬を飲んだらいいんだろうと思い、その時は頭痛薬を飲んだ」。
翌日には「通常の痛みとはちょっと違う」と感じたが、日曜日で店も忙しく受診できず、その次の月曜日にようやく婦人科を訪れたという。「吐き気、頭痛、腹痛の3つが重なって、かつあまり思い当たることがない。行くんだったら婦人科かなと思って相談した」。医師からは「重くない更年期症状ではないか」と診断され、漢方薬を飲み始めた結果、「頭痛とむかつきはすぐになくなった」と語る。
精神的な症状についても、「ざっくり言うと気持ちの落ち込み。ふとした瞬間にすごい虚無感というか、何もかもが虚しいという気持ちに襲われた」といい、「体は疲れているのに毎晩何度も目が覚め、良質な睡眠を取れない状態が続いた」ことも明かした。
■診断まで10年「診断難民」だった男性更年期の現実

よりさん(55歳)は40歳頃からめまい、動悸、発汗といった症状が現れ始め、その都度さまざまな病院を受診したが、男性更年期にたどり着くことなく「しばらく様子を見ましょう」という言葉を繰り返された。「私は診断難民と呼んでいる。診断がつかずにいろんな病院をめぐってきた状況が10年続いた」と振り返る。
めまいについては脳の病気、動悸については心臓疾患を疑い、通院を続けたが「異常なしがずっと続いた」。そして、「まさか男性更年期とは思わなかった。と述べる。
症状のピークについては「寝ても座っても何をしていても苦しい。このままだと、もしかしたらっていうところまで正直追い込まれた」と語り、当時担当していた部門の責任者の職も「自分から白旗を挙げて降りた」と明かした。「今までずっとがむしゃらに頑張って積み上げてきたキャリアだったので、ここで終わりかと正直思った。ただ、体力的にもう限界で、命の危険を感じる状況だったので、仕事よりも自分の体・命という方に視点が向いていた」。
現在は治療を開始し症状が落ち着いているという。「不調とどううまく付き合っていくかというところに目が向きがちだが、治療や生活習慣の見直しでホルモンバランスを整えていくやり方でうまく付き合っていこうと思っている」。
また、更年期を経て働き方や生き方が大きく変わったことも話す。「更年期にならなければずっとがむしゃらに会社一本でやってきたんだろうなという思いがある。更年期を境にマインドセットが変わり、生き方や働き方を見直せた。意味では好意的に受け止められる部分もある」と述べた。
■「まずは早めに医療機関に来てほしい」専門医が語る治療と予防

更年期医療を専門とする産婦人科医・おいたえりこ氏は、更年期障害のメカニズムについて「男性も女性も、共通して性ホルモンが低下することで起こる。この性ホルモンが出る大きな目的は種の存続のためで、特に女性は妊娠・出産という役割を遂行するために20代・30代でしっかり機能し、40代後半から徐々に女性ホルモンが減って閉経を迎える。男性にそういうイベントはないが、年齢に伴って性ホルモンを作る細胞が減少することで徐々に低下していく」と解説する。
また、更年期に大きなストレスが重なりやすい点についても言及し、「ご両親の死や介護、お子さんが思春期で傷つく言葉を浴びせられたり、退職の危機に陥ったりといった社会的なストレスが一気にかかる時期。そこからグッと症状が出始めるということはよくある」と続けた。
治療については「ホルモン補充というホルモンの波を緩やかにするための治療が男性にも女性にもできる。漢方も非常に有効だし、生活習慣のアドバイスもできる。ただ、来てもらわないとアドバイスできない」と語り、早期受診を強く促す。受診先については、男性は主に「泌尿器科」が一つの選択肢になるとしつつ、「更年期っぽい」と受付で伝えれば問診に応じてもらえる医療機関もあると説明する。
予防や症状緩和に向けた日常的な取り組みとしては、運動や食事の見直しを挙げる。「筋トレはすごくいい。ホルモンの低下速度を緩やかにする効果もある。新しいコミュニティに入ってみるとか、新しいことに挑戦してみるとかも対策になる。ただ、鬱っぽくなって塞ぎ込んでしまう方は、家族や友人が気づいて病院に連れてきてくれることが大事」だと述べた。
青柳さんは、更年期を経て、「『本当に自分がやりたいことは何なんだろう』と考えるきっかけをもらった。あちこち痛くなって不機嫌になるお年寄りの気持ちが分かるようになって、共感力が育まれた。更年期は命まで取られないし、ホルモンが安定してくれば終わりが来る。それを楽しみに待っている」と前向きに話した。
(『ABEMA Prime』より)